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第2章 世界知覚
22 チュートリアルは必要ですか? ーYes of course!
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それは美しい剣だった。
素材のことなどマナトには分からなかったが、華美には見えない上品な細工がしてあった。
ロングソードの部類に入るだろう。長い刃先は、陽光をキラキラ反射している。
普段のマナトなら、きっと持ち上げられても振り回すことなんて絶対に出来ない、ずっしりとした重さだった。
マナトはそれを振ってみた。まるでプラスチック製のバットのように軽く扱えた。
ステータスの恩恵はこんなところでも働いているようだ。
「よし」
軽いので片手持ちにしても大丈夫そうだ。
マナトは右手に剣を持って、ジャイアントスラッグの攻撃の後を狙って振り下ろした。
「!」
当たった感触はなかった。けれど、ジャイアントスラッグは見事に頭から真っ二つに切り裂かれていた。
よくわからない臓器が地面にばら撒かれて、ピクリとも動かなくなる。
「~~っ、ホント無理!」
都会育ちで、肉といえば切り身レベルのマナトには、ナメクジも臓器も刺激が強すぎる。
RPGゲームで、倒した敵が光になって消えたり、存在しなかったかのように死体がなかったのは、こういう配慮の為と思われる。
単に移動の邪魔だった、というだけかもしれないが。
生臭いにおいまでしてきて、吐きそうになった。
「方角はともかく、とにかく移動だ」
ジャイアントスラッグの死体から目を逸らし、じりっと後退する。
その足に、また何かがぶつかった。
嫌な予感。
恐る恐る振り返ると、足元にまたジャイアントスラッグが——そしてその先には、何体何十体ものジャイアントスラッグがこちらに向かってズルズルと近づいてくる悪夢の光景が広がっていた。
マナトは唐突に理解した。
なぜ、突然ジャイアントスラッグが現れたように見えたかの理由を。
草原の至るところにある、こんもりとした土に見えていたのが、全てジャイアントスラッグだったのだ。
そりゃ兎も真っ青になるだろう。
倒すのは楽勝だ。
だが、それをやりきって残されるのは、ジャイアントスラッグの体液を全身に浴びた自分と、臓器がぶちまけられたグロテスクな草原と、悶絶するほどの臭さだろう。
考えるだけで寒気がする。
「魔法を使おう」
マナトのスキルの中に[神々の黄昏]があったはずだ。炎の魔法だから、焼き尽くしてしまえばこの問題は一気に解決できる。
無詠唱というアビリティも持っているので、呪文を知らなくても発動できるはずだ。
「アニメとかで魔法放つってこんな感じだよな。二十五にもなって恥ずかしいけど……——[神々の黄昏]!」
剣を持っていない左手を足元のジャイアントスラッグに向けて、魔法を放つイメージを頭に浮かべる。
何も起きない。
相変わらず、ジャイアントスラッグがバンバン脚にぶつかってくるだけだ。
しばらくそのまま固まったあと、自分のやってることが恥ずかしくなって、顔を赤くした。
「もう! どうすれば発動するんだよ。……?」
自分の影が突然濃くなった。周囲が明るくなったのを不審に思って顔を上げると、目前に隕石かと思うほど巨大な火の玉が迫っていた。
「おいおいおいおい、ちょっと待て~~~~~っ!」
足元のジャイアントスラッグを狙ったから、落下予測地点はもちろんマナトの上だ。
慌てて逃げ出し数十メートル離れたところで、今さっきまでマナトがいた地面に[神々の黄昏]が炸裂した。
耳をつんざく爆発音。肌がチリチリするような強烈な熱風に身体を転がされる。
その身体の上に、塵や小石が降り注いだ。
爆風が落ち着いて、耳鳴りに顔を顰めながら、そろりと身体を起こすと、マナトは茫然とした。
草原ではなく、池になっていた。
地面の下をちょうど地下水脈が走っていたようだ。
ジャイアントスラッグたちは、直撃した奴はもちろん、それ以外の奴も熱風で消し飛んで全滅していた。
グロテスクな姿を見なくて済んでよかったが、最強というのも良し悪しだと一つ学んだ。
数人の不良を懲らしめるのに、核爆弾を打ち込むようなものだ。
オーバーキルすぎて、使い勝手が悪い。
「…………自分の魔法で死ぬとこだった」
マナトは自分がやらかした失敗に、乾いた笑いを浮かべ——速攻逃げ出した。
唯一良かったのは、ここが街中でなかったことだろうか。街中だったら、どれだけ犠牲を出してたか知れない。
のちに、一瞬で誕生したその池は『神の奇跡』と呼ばれたとか呼ばれなかったとか。
素材のことなどマナトには分からなかったが、華美には見えない上品な細工がしてあった。
ロングソードの部類に入るだろう。長い刃先は、陽光をキラキラ反射している。
普段のマナトなら、きっと持ち上げられても振り回すことなんて絶対に出来ない、ずっしりとした重さだった。
マナトはそれを振ってみた。まるでプラスチック製のバットのように軽く扱えた。
ステータスの恩恵はこんなところでも働いているようだ。
「よし」
軽いので片手持ちにしても大丈夫そうだ。
マナトは右手に剣を持って、ジャイアントスラッグの攻撃の後を狙って振り下ろした。
「!」
当たった感触はなかった。けれど、ジャイアントスラッグは見事に頭から真っ二つに切り裂かれていた。
よくわからない臓器が地面にばら撒かれて、ピクリとも動かなくなる。
「~~っ、ホント無理!」
都会育ちで、肉といえば切り身レベルのマナトには、ナメクジも臓器も刺激が強すぎる。
RPGゲームで、倒した敵が光になって消えたり、存在しなかったかのように死体がなかったのは、こういう配慮の為と思われる。
単に移動の邪魔だった、というだけかもしれないが。
生臭いにおいまでしてきて、吐きそうになった。
「方角はともかく、とにかく移動だ」
ジャイアントスラッグの死体から目を逸らし、じりっと後退する。
その足に、また何かがぶつかった。
嫌な予感。
恐る恐る振り返ると、足元にまたジャイアントスラッグが——そしてその先には、何体何十体ものジャイアントスラッグがこちらに向かってズルズルと近づいてくる悪夢の光景が広がっていた。
マナトは唐突に理解した。
なぜ、突然ジャイアントスラッグが現れたように見えたかの理由を。
草原の至るところにある、こんもりとした土に見えていたのが、全てジャイアントスラッグだったのだ。
そりゃ兎も真っ青になるだろう。
倒すのは楽勝だ。
だが、それをやりきって残されるのは、ジャイアントスラッグの体液を全身に浴びた自分と、臓器がぶちまけられたグロテスクな草原と、悶絶するほどの臭さだろう。
考えるだけで寒気がする。
「魔法を使おう」
マナトのスキルの中に[神々の黄昏]があったはずだ。炎の魔法だから、焼き尽くしてしまえばこの問題は一気に解決できる。
無詠唱というアビリティも持っているので、呪文を知らなくても発動できるはずだ。
「アニメとかで魔法放つってこんな感じだよな。二十五にもなって恥ずかしいけど……——[神々の黄昏]!」
剣を持っていない左手を足元のジャイアントスラッグに向けて、魔法を放つイメージを頭に浮かべる。
何も起きない。
相変わらず、ジャイアントスラッグがバンバン脚にぶつかってくるだけだ。
しばらくそのまま固まったあと、自分のやってることが恥ずかしくなって、顔を赤くした。
「もう! どうすれば発動するんだよ。……?」
自分の影が突然濃くなった。周囲が明るくなったのを不審に思って顔を上げると、目前に隕石かと思うほど巨大な火の玉が迫っていた。
「おいおいおいおい、ちょっと待て~~~~~っ!」
足元のジャイアントスラッグを狙ったから、落下予測地点はもちろんマナトの上だ。
慌てて逃げ出し数十メートル離れたところで、今さっきまでマナトがいた地面に[神々の黄昏]が炸裂した。
耳をつんざく爆発音。肌がチリチリするような強烈な熱風に身体を転がされる。
その身体の上に、塵や小石が降り注いだ。
爆風が落ち着いて、耳鳴りに顔を顰めながら、そろりと身体を起こすと、マナトは茫然とした。
草原ではなく、池になっていた。
地面の下をちょうど地下水脈が走っていたようだ。
ジャイアントスラッグたちは、直撃した奴はもちろん、それ以外の奴も熱風で消し飛んで全滅していた。
グロテスクな姿を見なくて済んでよかったが、最強というのも良し悪しだと一つ学んだ。
数人の不良を懲らしめるのに、核爆弾を打ち込むようなものだ。
オーバーキルすぎて、使い勝手が悪い。
「…………自分の魔法で死ぬとこだった」
マナトは自分がやらかした失敗に、乾いた笑いを浮かべ——速攻逃げ出した。
唯一良かったのは、ここが街中でなかったことだろうか。街中だったら、どれだけ犠牲を出してたか知れない。
のちに、一瞬で誕生したその池は『神の奇跡』と呼ばれたとか呼ばれなかったとか。
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