異世界召喚女子×人間嫌いの魔王

くりくりさん

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「あれ?」

 さっきまでお風呂に浸かっていたはずなのに、気がつくと私はなぜか立っていた。

 あぁ、これって夢なんだ。

 お風呂につかって寝ちゃったようだ。またお母さんに溺れたらどうするのって怒られちゃう。

 起きなくちゃ。
 でも、夢ってどうやったら覚めるんだろう?

 悩んでいると、ズサッと謎の音がした。

 音のしたほうを見ると、眼鏡の男の人が壁にくっつくようにして、こちらを見ていた。

 えっ?
 何? これも夢?

 私は自分の体を見下ろした。
 …………うん。生まれたままの姿でした。

「きゃぁぁぁぁぁっ!」

 私は勢いよくその場にしゃがみ込んだ。

 夢でも何でも関係ないよ。
 裸見られた! 裸見られた!しかも男の人に!

 お父さんどうしよう。もう私お嫁にいけない。
 恥ずかしいよぅ。

 夢なら早く覚めてー!
 
「お、おい! やめろ!」

 きゃーきゃー言ってる私に、彼が壁から離れて近づいてこようとする。

「近寄らないで!」

 ぴたっと彼が足を止める。

 何がなんだか分からないけど、裸の自分に、男の人は近づいて欲しくなかった。

「って、なぜ我が人間に遠慮しなければならないんだ」

 彼はそう言うと、私に近づいてきた。

「変態! 痴漢! 誰か助けてーーふぐっ!」

 彼に手で口を塞がれる。
 インテリみたいな体をしてるのに、手が大きい。

 じゃなくって!
 もう駄目だー! きっとこのまま犯されちゃうんだ。
 それとも殺されて埋められる?

 どっちにしてもヤダー!
 よくあるニュースの一人になっちゃうの?

「騒ぐな。今、事情を説明してやるから、その口を閉じろ。分かったな?」

 眼鏡から覗く金色の眼が怖い。ってちょっと待って。

 き、きんいろ? カラコン?
 カラコンにしては、黒目の部分が細長いような……

 私が黙ったのを確認すると、口から手が離された。
 それから、バサッと頭の上に何かが降ってきた。

「わっ!」

 目の前が真っ暗になる。
 慌てて頭の上からそれを降ろして見ると、男性もののコートだった。

「これって……」

 彼を見る。いつの間にか、上着を脱いでいた。

「人間の裸などどうでもいいが、お前が気にしているようなのでな。貸してやる」

 むかっ。どうせ私の体は貧弱ですよ。
 見せたくて見せてるんじゃないんだから、人のコンプレックス逆撫でするなー!

「お前じゃない。私にはちゃんと、桜田愛莉って名前があるの」

 お前呼ばわりに言い返しながらも、きちんと上着をはおる私。
 だって、裸で言ったって様にならないもん。

「なぜ、我が人間の名など呼ばねばならん?
 次々に湧いては死んでいく羽虫の名を覚えたところで無意味だ」

 と、彼はしかめっ面で言った。

 ちょっとちょっと、本気で言ってるっぽいんですけど!

 これ、危ない人だ。
 アニメか何かのキャラクターになりきってる?
 私、こういうのに疎いから、分からないんだよね。 

 こういうとき、普通の子なら避けるか無視する。
 そうやって素直に引けば、利口に生きられるのにって思う。
 でも生まれ持った性格だから仕方ない。
 むかつくものはむかつくんだよ。

「あのね、あなたがどう思おうと勝手だけど、それって私に失礼じゃないですか?
 それとも、ずっと私のことをお前って呼ぶの? そっちの方が無意味でしょ」

「ほう……、人間のくせに生意気な。今すぐ消滅させてほしいのか?」

「はいはい。なりきるのはいいから。名前で呼ぶの呼ばないの、どっち?」

 私が強気で押すと、彼はふぅ、とため息を漏らした。

「なんて呼べばいいのだ?」

 よし勝った! 内心でガッツポーズする。

「愛莉でいいよ。あなたの名前は?」

「アイリ、か。
 
 我が名など名乗るまでもなく、その意識に刷り込まれているだろう。不思議なことを聞く娘だ」

「ごめん、私そういうの詳しくないんだ。なんのキャラクター?」

「キャラクターとは何だ?」

「キャラクターくらい知ってるでしょ。もしかして、そういう設定なの?」

 ありえる。
 彼の見た目、中世の西洋の貴族っぽい服装だし。
 よく見たら、建物もそれっぽいし。

 一体、どうやって作ってるのだろう。服だけでも相当なお金を注ぎ込んじゃってそうなのに、建物までって。
 親が金持ちの坊ちゃんとか?

 早く帰りたいのに。面倒くさいなぁ。

「キャラクター、設定……、聞き慣れん言葉だ。本当に我の名を知らぬと言うのか?」

「うん、ごめんね。教えてくれたらちゃんと調べとくよ」

「自分から名乗るなど数十年ぶりか。光栄に思うがいい。我が名はルーク・ベルル=ベルスフォード。十一代目魔王である」

「はっ?」

 もったいぶって言った名前と肩書きは、私が想像していた範疇を越えちゃってました。

 魔王って。この人痛すぎるわぁ。
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