異世界召喚女子×人間嫌いの魔王

くりくりさん

文字の大きさ
12 / 17

12 アイリの謝罪

しおりを挟む
「で、アイリはなぜ我を訪ねてきたのだ?」

 冷めたお茶を一気に喉へ流し込んだ後、ルークはそう聞いてきた。

「うっ……、それは」

 謝りに来た、んだけど。

 散々泣き喚いたこのタイミングで、私が謝るのって変な感じがする。

 だって、ルークの謝罪の仕方に比べれば、私なんかゴメンで済ますつもりだったし。
 軽すぎるにも程があるってもんでしょ。
 何でルークが先に謝っちゃうかなぁ。
 私は、心の中で八つ当たりした。

「ほう。それは、の続きはなんだ?」

 私の慌てた雰囲気を感じ取って、ルークがニヤニヤと、からかうような笑みを見せる。

 やっぱりエリウスと主従なだけあるわ。
 魔族って、みんなこんなにS属性なの?

「発言を許す。さあ、言ってみるがいい」

 今までずっと発言してたから! 
 こんな場面で魔王さましないでよ!

 さあさあ、とうるさいくらいにつっつかれて、私はやけくそになって言った。

「ごめんなさい! 
 昨日、酷い言葉を言ってしまって。
 生意気な態度とっちゃったし、凄く反省してます」

 ルークがしてくれたように私も頭も下げる。
 やり慣れないから、上手じゃないけど。
 本当に悪いと思ってるんだよ、って気持ちだけは伝わるように丁寧に。

 顔を上げると、ルークは無表情になっていた。

「…………」

 謎の沈黙が落ちる。

 えっ、待って。さっきまであんなにからかってきたのに、どうして無表情になっちゃうの?

 からかいついでに、もっとさらっと流してくれると思ったのに。
 簡単に謝ったくらいじゃ許せないほど、私のこと怒ってる?

「……やっぱり、怒ってる、よね。

 だってルークの言ってること正しかったんだし。きっと訳の分からないこと言う女だって、呆れちゃったよね。
 
 もしかして今日、私に謝ったら、召還魔法を習得するまで、会うつもりなかった?
 嫌われてるって分かってたけど、それでも私はルークに会って一言謝りたかったの。

 それと、ここにいられるようにしてくれてありがと。
 ここを追い出されたら、私どうしていいか分からなかった。感謝してます」

 私が言い終わると、また沈黙が訪れた。

 言いたいことは全部言ったよ!
 この沈黙の中、言い切れた自分を褒めてやりたい。

 さあ、後は焼くなり煮るなりどうにでもなれ、よ。

 いや、実際そんな態度取られたらヘコむけどね……。

 ルークは黙っていたけど、そのうちはぁっと特大のため息を吐き出した。

 何よ。何を言うつもり?
 身構える私に、ルークは無表情のまま言った。

「なぜアイリが謝る。
 先ほどの我の謝罪が無駄になるではないか」

「無駄になんてならないよ」

 単にこっちもゴメンねって謝っただけだし。

「いいや、アイリは分かっておらぬ。

 それに我がアイリを嫌っていると、なぜ決めつけるのだ」

「だってそれは……」

 人から聞いた話を勝手に喋っちゃっていいのかな。
 でも、話さないと、なぜ私がルークに嫌われてると思ったかの説明がつかないし。

「副官のエリウスから聞いたから。
 …………お父さんを人間に殺されたって」

「エリウスの奴、余計なことを言いおって」

 ちっと舌打ちする魔王さま。
 なんか変に怒ってません?

「そうだな。確かに我は人間が嫌いだ」

 覚悟してたのに、実際に面と言われるとグサッとくる。

「魔王を名乗る以上、人間どもがどのような方法で我の首を取ろうと文句を言うつもりはない。

 それでも、その手段は目に余る。
 一番酷いときなど、勇者が命乞いをしながら、許した瞬間に騙し討ちをしてきたこともあった。

 そんなことをされ続ければ、誰でも人間は嫌いだと言うだろう。
 父王を殺されたときは、本気で人間をこの世から消滅させてやろうと思ったがな。

 王を継いで戦争を続けられるのは、我しかいなかったから諦めた」
 
 こういう時、ルークは淡々と語る癖がついてるみたいだ。
 皮肉に笑う姿に、胸が締め付けられる。

「……人間が嫌いになるの、分かる気がする」

 嫌いにならないで、とは言えない。
 だって、私だって家族の身に何かあったら、きっとその犯人を憎むと思うし。

 私という個人を見て欲しいけど、人間という事実はひっくり返すことができないからしょうがない。

 落ち込む私に、ルークは違うと首を横に振った。

「だが、アイリと出会って、人間らしくない言動を見る度に、嫌い以外の感情を感じる。

 それが何かは、我自身にもよく分からんのだが。

 少なくとも、これっきりアイリと会いたくないとは思わん」

「ルーク……」

 嫌われてないって分かって、私は嬉しくなる。

 ルークは無表情だった顔に、ようやく表情を取り戻す。
 でも、またあのニヤニヤだった!

「だが、どうしてもアイリが謝罪したいというのなら、寛大な心でそれを受け入れてやるのも、魔王の技量。

 ふむ、そうだな……」

 ちょっと考えて、何か思いついたようにニヤッと笑う。

 ヤな予感。

「毎朝、我と食事を共にせよ。
 これは、魔王としての命令である」

 ご丁寧に、私が拒否できないように、命令なんて言葉を使ってきた。

 固まる私に、一人で満足するルーク。

 毎日会いたいなんて、一言も言ってない!
 
 ただ、会って謝りたかっただけなのに、どうしてこうなったちゃったの?!
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

異世界ビルメン~清掃スキルで召喚された俺、役立たずと蔑まれ投獄されたが、実は光の女神の使徒でした~

松永 恭
ファンタジー
三十三歳のビルメン、白石恭真(しらいし きょうま)。 異世界に召喚されたが、与えられたスキルは「清掃」。 「役立たず」と蔑まれ、牢獄に放り込まれる。 だがモップひと振りで汚れも瘴気も消す“浄化スキル”は規格外。 牢獄を光で満たした結果、強制釈放されることに。 やがて彼は知らされる。 その力は偶然ではなく、光の女神に選ばれし“使徒”の証だと――。 金髪エルフやクセ者たちと繰り広げる、 戦闘より掃除が多い異世界ライフ。 ──これは、汚れと戦いながら世界を救う、 笑えて、ときにシリアスなおじさん清掃員の奮闘記である。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

神様の手違いで、おまけの転生?!お詫びにチートと無口な騎士団長もらっちゃいました?!

カヨワイさつき
恋愛
最初は、日本人で受験の日に何かにぶつかり死亡。次は、何かの討伐中に、死亡。次に目覚めたら、見知らぬ聖女のそばに、ポツンとおまけの召喚?あまりにも、不細工な為にその場から追い出されてしまった。 前世の記憶はあるものの、どれをとっても短命、不幸な出来事ばかりだった。 全てはドジで少し変なナルシストの神様の手違いだっ。おまけの転生?お詫びにチートと無口で不器用な騎士団長もらっちゃいました。今度こそ、幸せになるかもしれません?!

猫なので、もう働きません。

具なっしー
恋愛
不老不死が実現した日本。600歳まで社畜として働き続けた私、佐々木ひまり。 やっと安楽死できると思ったら――普通に苦しいし、目が覚めたら猫になっていた!? しかもここは女性が極端に少ない世界。 イケオジ貴族に拾われ、猫幼女として溺愛される日々が始まる。 「もう頑張らない」って決めたのに、また頑張っちゃう私……。 これは、社畜上がりの猫幼女が“だらだらしながら溺愛される”物語。 ※表紙はAI画像です

想定外の異世界トリップ。希望先とは違いますが…

宵森みなと
恋愛
異世界へと導かれた美咲は、運命に翻弄されながらも、力強く自分の道を歩き始める。 いつか、異世界にと想像していた世界とはジャンル違いで、美咲にとっては苦手なファンタジー系。 しかも、女性が少なく、結婚相手は5人以上と恋愛初心者にはハードな世界。 だが、偶然のようでいて、どこか必然のような出会いから、ともに過ごす日々のなかで芽生える絆と、ゆっくりと積み重ねられていく感情。 不器用に愛し、愛する人に理解されず、傷ついた時、女神の神殿で見つけた、もう一つの居場所。 差し出された優しさと、新たな想いに触れながら、 彼女は“自分のための人生”を選び初める。 これは、一人の女性が異世界で出逢い、傷つき、そして強くなって“本当の愛”を重ねていく物語です。

転生してモブだったから安心してたら最恐王太子に溺愛されました。

琥珀
恋愛
ある日突然小説の世界に転生した事に気づいた主人公、スレイ。 ただのモブだと安心しきって人生を満喫しようとしたら…最恐の王太子が離してくれません!! スレイの兄は重度のシスコンで、スレイに執着するルルドは兄の友人でもあり、王太子でもある。 ヒロインを取り合う筈の物語が何故かモブの私がヒロインポジに!? 氷の様に無表情で周囲に怖がられている王太子ルルドと親しくなってきた時、小説の物語の中である事件が起こる事を思い出す。ルルドの為に必死にフラグを折りに行く主人公スレイ。 このお話は目立ちたくないモブがヒロインになるまでの物語ーーーー。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

処理中です...