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August
6日目
次の日の夜。
夏祭りの会場に向かうと想像以上に人が多かった。
中学時代の人間に会うと覚悟していたがここまで多いと気付かないかもしれない。先日のこともあるのでその面では少し助かる。
周りは浴衣の人ばかりでもう既にうんざりしているが、楽しそうな愛梨を見てまあいいかなんて言い聞かせながら歩いていると突然後ろから女性に声を掛けられた。
「あの、良かったら一緒に回りませんか?」
勿論、会長が。ちなみにこれで3回目である。
ここまで顔が良いとこんな田舎の祭りでも逆ナンされるらしい。
「愛梨、さっきのやつ」
「らじゃ!」
こっそり耳打ちすれば愛梨が会長に手を回した。俺はその様子を少し遠くで眺める。
「パパー!あいり、わたあめ食べたい」
「パッ、…!?」
驚いて言葉が発せない女の子達。
まあそうなるよな。高校生くらいのイケメンがパパとか呼ばれてんだもん。
こうすると100パーセントの確率で食い下がってくれるから楽だった。愛梨を連れてきて良かったなと心の底から思う。
「ありがと、助かった」
「…愛梨と手でも繋いでいればでもしてれば逆ナン減ると思いますよ」
まだ喧嘩の名残で少しぎこちないまま。
綿菓子を買って食事スペースのベンチに座ると急に愛梨が大きな声で叫んだ。
「あー!陽子おばちゃんだ!」
「あら愛梨~!偶然ねえ」
母とどこか似た顔の人物が微笑み、こちらに向かう。
会ったのは年末年始以来。久々に会ったからかお互い暫く瞬きを繰り返して見つめた。
「湊、こっちに帰ってきてたのねえ」
「うん。久しぶりだね、陽子おばさん」
「正月以来かしら。また少し大きくなった?」
母のお姉さん、俺から見たら叔母にあたる陽子おばさんは口に手を当てて、ニコニコと笑った。そしてすぐに隣の人物が気になったようでちらりと無言で視線を向けてくる。
「ああ、この人は学校の先輩で…」
「すいません、挨拶遅れました。支倉凌です。湊くんとは同じ学校の先輩で…」
完全外面モードの会長がそれはもう周りの人が見惚れるような笑顔で挨拶。それをみた陽子おばさんは「まー!随分と綺麗な子!」と帰省初日に会長を見た母さんと同じような反応をした。さすが姉妹。
「今日、ひなちゃん来てる?」
「来てるわよ~。今の洋介と回ってるから連絡してみるわね」
「ほんと!?」
洋介と呼ばれた人物は陽子おばさんの息子で、ひなちゃんは洋介兄さんの娘。
愛梨とは歳が近く、話によると随分と仲が良いらしいが洋介兄さんたち自体が少し離れた場所に住んでいるため
会える回数が少ない。そのせいか愛梨は俺たちそっちのけでテンションが上がっていた。
「良かったら愛梨ちゃんは私たちが面倒見るわよ。怜子の家に送り届ければいいのよね?」
「あ、うん…」
「せっかくのお祭りなんだから楽しんできなさい」
「みなと!パパ!またね~!」
夏祭り行こうって誘ったのは愛梨なのに。
子供は無情だ。
あっさりと手を振られて少し寂しい気持ちで振り返す。どうやら洋介兄さんと連絡が取れたようで、「パパってなぁに?」と聞きながら人混みに消えていく姿を眺めるしかなかった。
急に暇になった俺たちの間に沈黙が続く。
「…どうします?帰りますか?」
「んー…」
折角来たので楽しんでも良かったが、一応人ごみ嫌いそうな会長に気を利かせたつもりで訊ねる。すると会長が珍しく少し考え込んだように唸った。
「折角だし回ろうよ」
「…人混み嫌いなのに大丈夫なんですか?」
予想外な返答に驚きを隠せない。
愛梨が行きたいと言うから渋々来ているものだと思っていたのに。
「こういう祭り来たことないからいい機会かなと思って」
「なるほど…」
そうか。金持ちのボンボンにこういう庶民の祭りに行く機会なんてないのか。
会長の理由を聞いてすんなり納得した俺はとりあえず花火が上がるまで適当に屋台が沢山ある方向に足を向ける。
「あ、魔法少女ピュアピュア」
暫く人混みを掻い潜っていると目に付いたのは人気アニメの変身セット。
CMでこれが欲しい!と愛梨が強請っている姿を思い出して思わず立ち止まった。
「そういうの好きなんだ」
「違いますよ。これ、愛梨が欲しがってたから」
わざとそんなことを聞く会長を軽くあしらって、景品を眺める。
新作のゲームソフトなんかもあるんだ。普通に欲しい。
景品のラインナップに感心していると隣にいたはずの会長はいつの間にか射的屋のおじさんにお金を払っていて、射的のやり方を教えて貰っていた。
「射的って結構難しいですよ」
「確かに難しそう」
とか言いつつ、会長の事だから一発目から当てたりして。
そう思ったが残念ながら一発目は外れ。といってもかする程度の距離で多分次あたり弾は当たるだろう。倒れるかは別だが。
予想通り次打った時は目当ての景品に弾は当たった。
だがやはり倒れるところまではいかない。当たってもなかなか倒れないんだよな、こういうの。
「…もう少し右上か」
銃を握り直す会長を見て、俺は改めて射的の難しさを再確認する。
今度から射的はやらないようにしよう、なんて瞬きした瞬間、コトリと音を立てて目当ての商品は倒れてた。
たまたま見ていた周りの観衆がおおっと声をあげる。俺も空いた口が塞がらない。
「…よく倒しましたね」
「物理の勉強が効いた」
なるほど。言ってしまえばこれも物理。
そこからコツを掴んだのかあとの2発も景品は倒れ、最後には射的屋のおじさんは苦笑い。
「兄ちゃん、射的上手だねえ…」
「ありがとうございます」
いつの間にかギャラリーも増え、会長の倒す姿を見て自分も出来るような気がしたのか人達がどんどん射的のおじさんにお金を払っている。結果的に大繁盛だな、これ。
景品の入った袋を受け取り、そそくさと射的屋を後にすると、屋台通りはただでさえ多かった人がさらに増えていてた。
夏祭りの会場に向かうと想像以上に人が多かった。
中学時代の人間に会うと覚悟していたがここまで多いと気付かないかもしれない。先日のこともあるのでその面では少し助かる。
周りは浴衣の人ばかりでもう既にうんざりしているが、楽しそうな愛梨を見てまあいいかなんて言い聞かせながら歩いていると突然後ろから女性に声を掛けられた。
「あの、良かったら一緒に回りませんか?」
勿論、会長が。ちなみにこれで3回目である。
ここまで顔が良いとこんな田舎の祭りでも逆ナンされるらしい。
「愛梨、さっきのやつ」
「らじゃ!」
こっそり耳打ちすれば愛梨が会長に手を回した。俺はその様子を少し遠くで眺める。
「パパー!あいり、わたあめ食べたい」
「パッ、…!?」
驚いて言葉が発せない女の子達。
まあそうなるよな。高校生くらいのイケメンがパパとか呼ばれてんだもん。
こうすると100パーセントの確率で食い下がってくれるから楽だった。愛梨を連れてきて良かったなと心の底から思う。
「ありがと、助かった」
「…愛梨と手でも繋いでいればでもしてれば逆ナン減ると思いますよ」
まだ喧嘩の名残で少しぎこちないまま。
綿菓子を買って食事スペースのベンチに座ると急に愛梨が大きな声で叫んだ。
「あー!陽子おばちゃんだ!」
「あら愛梨~!偶然ねえ」
母とどこか似た顔の人物が微笑み、こちらに向かう。
会ったのは年末年始以来。久々に会ったからかお互い暫く瞬きを繰り返して見つめた。
「湊、こっちに帰ってきてたのねえ」
「うん。久しぶりだね、陽子おばさん」
「正月以来かしら。また少し大きくなった?」
母のお姉さん、俺から見たら叔母にあたる陽子おばさんは口に手を当てて、ニコニコと笑った。そしてすぐに隣の人物が気になったようでちらりと無言で視線を向けてくる。
「ああ、この人は学校の先輩で…」
「すいません、挨拶遅れました。支倉凌です。湊くんとは同じ学校の先輩で…」
完全外面モードの会長がそれはもう周りの人が見惚れるような笑顔で挨拶。それをみた陽子おばさんは「まー!随分と綺麗な子!」と帰省初日に会長を見た母さんと同じような反応をした。さすが姉妹。
「今日、ひなちゃん来てる?」
「来てるわよ~。今の洋介と回ってるから連絡してみるわね」
「ほんと!?」
洋介と呼ばれた人物は陽子おばさんの息子で、ひなちゃんは洋介兄さんの娘。
愛梨とは歳が近く、話によると随分と仲が良いらしいが洋介兄さんたち自体が少し離れた場所に住んでいるため
会える回数が少ない。そのせいか愛梨は俺たちそっちのけでテンションが上がっていた。
「良かったら愛梨ちゃんは私たちが面倒見るわよ。怜子の家に送り届ければいいのよね?」
「あ、うん…」
「せっかくのお祭りなんだから楽しんできなさい」
「みなと!パパ!またね~!」
夏祭り行こうって誘ったのは愛梨なのに。
子供は無情だ。
あっさりと手を振られて少し寂しい気持ちで振り返す。どうやら洋介兄さんと連絡が取れたようで、「パパってなぁに?」と聞きながら人混みに消えていく姿を眺めるしかなかった。
急に暇になった俺たちの間に沈黙が続く。
「…どうします?帰りますか?」
「んー…」
折角来たので楽しんでも良かったが、一応人ごみ嫌いそうな会長に気を利かせたつもりで訊ねる。すると会長が珍しく少し考え込んだように唸った。
「折角だし回ろうよ」
「…人混み嫌いなのに大丈夫なんですか?」
予想外な返答に驚きを隠せない。
愛梨が行きたいと言うから渋々来ているものだと思っていたのに。
「こういう祭り来たことないからいい機会かなと思って」
「なるほど…」
そうか。金持ちのボンボンにこういう庶民の祭りに行く機会なんてないのか。
会長の理由を聞いてすんなり納得した俺はとりあえず花火が上がるまで適当に屋台が沢山ある方向に足を向ける。
「あ、魔法少女ピュアピュア」
暫く人混みを掻い潜っていると目に付いたのは人気アニメの変身セット。
CMでこれが欲しい!と愛梨が強請っている姿を思い出して思わず立ち止まった。
「そういうの好きなんだ」
「違いますよ。これ、愛梨が欲しがってたから」
わざとそんなことを聞く会長を軽くあしらって、景品を眺める。
新作のゲームソフトなんかもあるんだ。普通に欲しい。
景品のラインナップに感心していると隣にいたはずの会長はいつの間にか射的屋のおじさんにお金を払っていて、射的のやり方を教えて貰っていた。
「射的って結構難しいですよ」
「確かに難しそう」
とか言いつつ、会長の事だから一発目から当てたりして。
そう思ったが残念ながら一発目は外れ。といってもかする程度の距離で多分次あたり弾は当たるだろう。倒れるかは別だが。
予想通り次打った時は目当ての景品に弾は当たった。
だがやはり倒れるところまではいかない。当たってもなかなか倒れないんだよな、こういうの。
「…もう少し右上か」
銃を握り直す会長を見て、俺は改めて射的の難しさを再確認する。
今度から射的はやらないようにしよう、なんて瞬きした瞬間、コトリと音を立てて目当ての商品は倒れてた。
たまたま見ていた周りの観衆がおおっと声をあげる。俺も空いた口が塞がらない。
「…よく倒しましたね」
「物理の勉強が効いた」
なるほど。言ってしまえばこれも物理。
そこからコツを掴んだのかあとの2発も景品は倒れ、最後には射的屋のおじさんは苦笑い。
「兄ちゃん、射的上手だねえ…」
「ありがとうございます」
いつの間にかギャラリーも増え、会長の倒す姿を見て自分も出来るような気がしたのか人達がどんどん射的のおじさんにお金を払っている。結果的に大繁盛だな、これ。
景品の入った袋を受け取り、そそくさと射的屋を後にすると、屋台通りはただでさえ多かった人がさらに増えていてた。
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