お炬の1日

渡邊 悠

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お炬の1日

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 はあ、暖かい。
 人類史上、最強の怠惰アイテムである炬燵に足から首まで埋まって寝そべっている。ホカホカと暖かい空気を中に閉じ込め、さらにお布団までセットにするというのは、本当にノーベル平和賞を送ってもいい気がする。炬燵のなかで争うことなどまず起こらないからだ。
 ぬくぬくとくるまり、スマホを充電しながらゲームをする。必殺コンボである。ここにお菓子があれは、確実に炬燵から出ないだろう。唯一欠けたファクターであるお菓子が三メートル先にあるのだが、それを取る気力すら失ってしまうのが、お炬コンボの酷いところだ。埋もれてから十分、早くも眠気が襲ってきている。時々、スマホを落としそうになっていた。目をごしごしとこすり仰向けになって抵抗する。手を上げてゲームをしていれば寝ないだろう。
 ガン。
「いだっ」
 ささやかな抵抗は、顔の上に落下してきたスマホにより、呆気なく無駄であったことが証明された。くそう、炬燵に抗うにはどうすれば……。あ、別に抗わなくていいのか。課題は期限まで時間あるし、ご飯は食べたばかりだし。そうね、寝てしまえば万事解決、平穏無事。スマホを投げ出しお休みモードに入る。ぬくぬくお炬ばんざーい。そうして眠りに落ちるのだった。
 それから、どれくらい時間がたったのだろう?窓の外が暗くなっていて夜になったのは分かる。雨戸を閉めるために炬燵から出ると、
「寒っ、さっさと閉めて戻ろ」
 ネズミのようにそそくさと雨戸を閉めて回り、再度炬燵へダイブ。はあ、このまま出なくて良いなら世の中最高。寒い外の世界とはさよ~なら~。なんて甘いことは通用しなかったな。お腹がグルルと鳴る。人間、生きてるだけでお腹が空くのは反則だと思う。
 ため息をついて夕食の支度。適当にバランス取れてればいいか。ちゃちゃっと準備してご飯を持って炬燵へ。テレビのリモコンとお箸をとってスタンバイ。バラエティーを見ながら食事は最高だな。一人暮らしの潤いだよ、うん。
 ゲラゲラと食べながら笑って夕食完了。お行儀が悪い? 一人暮らしでわざわざそんな事気にしな~い。ぐだぐだと、寝るまで炬燵にはまりお布団へ。大事な何かを忘れている気がするけど……。あ、しまったぁー! 今日、友達と遊ぶ約束してた。休日だから完全に炬燵モードだったよ……。ちゃんと謝っておこう。今さら炬燵のぬくぬくが憎くなるけど、今さらよね。まぁ、いいか。こうして休日が一日過ぎるのだった。
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