清い心が魔力になる世界で邪な心を持った魔術師

ももっけ

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邪竜の血②

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 目が覚めると、エルスは怪しい魔術陣が描かれた部屋の中で横たわっていた。
 手足は縄で縛られており動けないが、気を失う前に噛まされた布は外されていた。
  
「ここは……?」
「おはようエルス。いい朝だね」

 後ろから声をかけられ振り返ると、そこにはチカが似たような格好で横に寝転んでいた。

「しかし、どうして君まで捕らえられているんだろう。こんな展開なかったはず……」

 チカは一人でぶつぶつ呟いている。
  それをエルスは不気味そうに見て、なにか脱出に使えそうなものはないか辺りを見渡した。
  都合よくナイフが落ちているなんてことはない。
  わけもわからず縛り上げられて、いったい何をされるのかと不安だった。
  しばらくすると部屋の扉が開いて誰かが入ってきた。
 エルスはその男の顔を見て驚いた。
  彼はかつて、ログレース家で執事として働いていた男だったからだ。
 キーシャという名のその男は、夜な夜なログレース家の家財を荒らしてどこかに売っていた。
  それが父上にバレて即解雇されたのだ。

「キーシャ、なぜあんたがこんなところにいる」
「お久しぶりです坊っちゃん。ログレース家を追放されてからもう何年経つのでしょう……」

 長い金髪に青い瞳を持ち、丸メガネをかけた紳士な男が礼をした。

「神子様がいることですし、改めて自己紹介をしましょうか。私の名はキーシャ。邪竜教のいち信奉者です。そして、神子様を殺す者でもあります」
「神子様を殺す……?」

 事態を把握できず、エルスは頭に疑問符を浮かべた。

「おや、坊っちゃんは彼の正体を知らないのですね。このチカという少年は、女神が異世界から使わせた神子様なのです。そして、神子様の使命は聖剣シルドヘッドの力を開放し邪竜を倒すこと。我々のような、邪竜を復活させ世界を女神の支配下から開放せんとする邪竜教徒たちにとっては最も厄介な存在」
「こいつが神子様だと!?」

 エルスは吸い込まれるような真っ黒の瞳を持つ少年を見た。

「よく調べてるみたいだな。さすが邪竜教徒」

 チカはのんきにキーシャを褒めている。
  
「邪竜復活の度に姿を表す神子の力を封じることは、邪竜教徒にとっての最優先事項でした。しかし我々はある実験に成功した。邪竜の血を引く坊っちゃんの体液が、魔力を消し去る力を持つことを突き止めたのです」
「なっ……!」

 エルスは頭が真っ白になった。
  邪竜の血を引く……?
  誰が……、まさか僕が……?

「うわぁ、なんか敵のIQ上がってないか? セノ大丈夫かな……」

 相変わらずチカはよくわからないことを呟いている。
  キーシャはポケットからナイフを取り出すと、エルスに近づいてきた。

「彼に血を飲ませましょう。そして神子様の力を封じるのです」
「なんでそんなことをしなくちゃいけないんだ! だいたい僕が邪竜のはずがない!」
「坊っちゃんは疑問に思ったことは無いのですか。なぜ名門ログレース家に生まれながら、自分だけが魔術を使えないのかと。ログレース家はかつて聖剣の勇者と共に邪竜を打ち倒した魔術師の末裔です。追い詰められた邪竜は最後の力で彼らに呪いをかけた。いつか次なる邪竜が彼らの血族に現れるようにと。そして生まれた次なる邪竜があなたなのです」
「そんなでたらめ誰が信じられるか!」
「信じられないというのなら、実際に彼が魔力を失う姿を見ればいい」

 キーシャはエルスの腕にナイフを押し付け、彼の肌を傷つけようとした。
  その時、部屋の扉が勢いよくふっ飛ばされた。

「チカ! まだ生きてるか!」

 扉を蹴破って入ってきたのは、見事な装飾の大剣を構えたセノだった。
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定期的にタグも整理します。
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見つけ次第削除いたします。 自己判断で消しますので、悪しからず。

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