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第二話
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二年前、俺は王都にある貴族学校に通っていた。
貴族学校には同時期に、腹違いの兄弟な第一王子と第二王子が通っていた。
俺は第二王子と同級生だったが、向こうは王族、俺は下級貴族ということであまり交流はなかった。
ひとつ上の学年には平民の母を持つ第一王子・フレイがいた。
何の因果か俺は二学年合同で行われるハイキング実習でフレイとペアになった。
ハイキング実習は下級生が上級生からハイキングの基礎を学び、自然の中で行われる貴族の遊びを学習するイベントだ。
俺は初めて王族とまともに会話をすることになり、当日はガチガチになって会場にむかった。
しかし、フレイはそんな俺の肩を抱き、笑顔で「緊張するな。今日は一緒に頑張ろうな」と言った。
さっそく俺とフレイは簡易ブランコを設営することになった。
二人で木材片手に作業していると、どこからともなく第二王子がやってきた。
「兄様は土にひざまずく姿がお似合いだね」
「君も作業を手伝ったらどうだ」
「やだなぁ、正妻の息子である僕がそんな泥臭い仕事するわけないじゃないか。平民の息子とは違うんだ」
嫌味たっぷりな第二王子はフレイの隣に目をやった。
「なんだこの見たことのない男は」
「彼は私のペアとなった子だ」
「ふーん。お前、こんな仕事は兄様にまかせて僕のもとに来いよ」
第二王子は俺の腕を掴んで、無理やり立ち上がらせた。
俺はすぐに彼の腕を振り払う。
「やめてください。俺はここでフレイ先輩を手伝います」
「貴様、この僕に逆らうつもりか」
逆上した第二王子は手を振りかぶり、俺の頬に思いっきり平手打ちした。
俺はふっ飛ばされて地面に転がった。
するとフレイは立ち上がり、俺と第二王子の間に入った。
「彼に手を挙げるな。人手が必要なら私が行く」
「お前なんか誰が連れて行くか! この汚れた血め!」
第二王子はきびすを返し、どこかへ去っていく。
それを見送って、フレイは尻餅をついている俺の元へ駆け寄ってきた。
「大丈夫か」
「大したことありません。先輩こそ大丈夫ですか」
「なんのことだ」
「あいつ、先輩にひどいこと言っていたじゃないですか。先輩の血は汚れてなんか居ないのに」
俺の言葉にフレイは一瞬息をのんだ。
しかしすぐに首を横に振った。
「気にするな。あんなことは言われ慣れている」
「言われ慣れてることでも、傷つくときは傷つくものですよ」
フレイは俺の頬を撫でて、少し腫れたそこに口づけた。
「そうかもしれないな。だが今は君の手当が先だ。医務室へ行こう」
その出来事をきっかけにして、俺とフレイの距離はぐんと近づいた。
貴族学校には同時期に、腹違いの兄弟な第一王子と第二王子が通っていた。
俺は第二王子と同級生だったが、向こうは王族、俺は下級貴族ということであまり交流はなかった。
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