「桜の下の禁じられたメロディ」

第5章: 卒業への軌跡 - それぞれの道へ

話22：一人の夜

椎名は奏が何かを隠していることに気づいていた。奏の不安な様子や言葉の端々から、何かが起きていることを察知していたが、自分一人では何もできないという無力感に押し潰される。

「私って、ただの女子高生なんだな…」

椎名は奏を助けることができず、ただ卒業式を待つしかできないことに苛立ちと無念さを感じた。

椎名は奏が通っていたアート教室に足を運んだ。何かの手がかりがあるのではないかと期待していたが、アート教室の先生からは奏に関する情報は得られなかった。

「奏が何かを隠していると感じるけれど、私には手がかりがないんだ…」

椎名は頼れる大人も少なく、あてもなく自宅に戻った。帰宅すると、香奈からの一件のメッセージが入っていた。「なんかわかった？」という一言だったが、椎名は返信をしなかった。今の自分には何もできることが見つからなかったからだ。

夜は静かに時間が流れていく。椎名は一人で座り、奏のことを考える。彼女が女性として、唯一愛した相手であり、今も心の中に残る存在だった。

「奏が何かを隠している…でも何を隠しているのか、私にはわからない。」

心は不安と焦燥に満ちていた。椎名は自分がただの女子高生であることを痛感し、手がかりを見つけることができない無力感に打ちひしがれる。

椎名は一晩中、奏を思いながらベッドに横たわっていた。彼女の心は不安と寂しさに満ち、自分を慰める言葉も見つからなかった。

「奏…どこにいるの？なぜ…なぜ私に連絡をくれないの？」

椎名は涙を流しながら、奏の姿を思い浮かべ、その存在を強く求める。

奏を思えば思うほど、椎名は自分を慰め始める。彼女の手は自身の肌をなぞり、心地よい感触を求めていた。しかし、その快楽は一時的なものであり、奏との距離がますます遠く感じられることで、さらなる寂しさが彼女の心を襲った。

「奏…どうして私を置いて行ったの？私たちは何も悪くないのに…なぜこんなに苦しまなければならないの？」

椎名の声は静かに部屋に響き渡り、彼女の孤独と苦悩が一層深まっていく。