ガラスの海を逞しく泳ぐ女たち

しらかわからし

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第1-2話 美夏は親友の緑子に相談

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 その後は緑子の頬が心なしか紅潮しているように見えて膝を擦り合わせてモジモジした彼女らしくない恥ずかしそうな仕草をしながら口火を切った。「私の話しをしてもいいかな?」

「うん」と美夏。

「実はさ、夫は単身赴任中なんだけど、若いカレが出来て……」と緑子。

「それって不倫じゃないの?」と美夏は驚いた。

「うん。まぁ、そんな所かな。だって以前も話したけど、主人とはずっとレスだったから」と緑子。

「若いってどのくらいなの?」と美夏は羨ましそうに聞いた。

「一回り」と緑子は嬉しそうに答えた。

「えぇ! それって二十三?」と驚きを隠せずに美夏の声は裏返った。

「二十六歳で、調理師さん」と緑子。

「どこで知り合ったの?」と美夏。

「出張料理人って知っているでしょ? 今流行りの」と緑子。

「うん。一週間分のお惣菜やパーティー料理を作り置きしてくれるシェフでしょ?」と美夏。

「そう。私は美夏の様に忙しい仕事をしている訳ではないけど、夫の母の具合が悪いから実家に行き来していたのね。実家が本社から遠いし飼い犬もいるし植物もあるから家に戻って来て出勤していたの。もう疲れちゃって夕飯のお買物や作る時間がどうしても取れなかったから夫に相談したら、『出張料理人って今、流行っているじゃない?』って言われて頼む事になって、本当はそのカレではなくて女性の責任者が来るはずだったんだけど、手違いがあってカレが来たの」と緑子が説明した。

「その後のお義母様は?」と心配そうに美夏が質問した。

「うん、お陰様で」と緑子。

「なら、良かったわね」と美夏。

「うん、ありがとう」と緑子。

「それにしてもそのカレと……そんな関係になるとは……?」と美夏は信じられない様子だった。

「そうなの。一週間分の夕食を作ってもらって帰ってもらったんだけど、兎に角、美味しくて、その後の一週間分も作って貰ったら、サービスですって言って二週間分を作り置きしてくれて、そのサービスの一週間分は冷凍保存してくれて電子レンジに入れて温めるだけで食べられるようにしてくれていたから、その後の一週間分をお願いした時にカレの休日に我が家でデートしたの。その後は押し倒されて、ご想像にお任せするわ」と緑子は嬉しそうに話した。

「いいな。私もずっと空き家だから、そんな若いカレが出来たら楽しいのに」と美夏。

「空き家って言ったって、婚約者がいるじゃない?」と緑子。

「でもアイツはナルシストだから自分勝手で、連絡不行き届きで中々逢えないから」と美夏。

「美夏はそんな男性の浮いた話しはないものね。だから出世したんだしね」と緑子。

「実はさ……とても信頼している、上司がいて……。上司と言っても今じゃ役員ね。仕事に対する考え方や今の仕事で私をとても評価してくれて、その人から色々とアドバイスをもらっていて、でも変な関係ではないのよ。ただその人と課の会議の後に課内に残って二人で話していた時の姿を見た、例の係長や部下たちが勝手に想像して、その後の嫌がらせやマウントが少なくなっていった事は確かなの」と美夏。

「良かったじゃない」と緑子。

「そう言った意味では私の恩人かもね?」と美夏。

「美夏、その上司って、もしかして執行役員の佐々木さんかな?」と緑子。

「うん、そう……」と美夏。

「プライベートな事だから、詳しくは聞かないけど、既婚者よね?」と緑子。

「そうだけど……」と美夏。

「私が聞く限りでは余り良い情報は入って来ないけど?」と緑子。

「そうなの……? でも私は全くのプラトニックだから」と美夏は明るく言った。

「実はうちの課の例の課長の事で課内、いや部内に彼女が女の武器を利用して出世していると吹聴した課員がいたの」と美夏。

「そんな事があったんだ」と緑子。

「結局、その佐々木さんが、彼女の直属の上司の部長に注意して、厳格な対処をしなさい! と指示した事で、ハラスメントやマウント行為を先導した私たちの一期下の男性係長は始末書を書かされて左遷までされたのよ。他の部下たちは口頭だったけど物凄く厳しい注意を受けてハラスメントやマウンティング問題は収束したの。そう言えば同じ課よね? 緑子は注意されたの?」と美夏。

「私は他人の悪口とか嫌いだし、他人が出世しようがしまいが我関せずだから、課内で私だけは注意されなかったわ」と緑子。

「流石だよね、緑子ねえはさ」と美夏。

「何よ、同い年なのにその言い方は?」と緑子。

「だって、元ヤンのレディースの総長だっけ?リーダーだもの。極道の妻たちではそんな呼ばれ方されていたじゃない? これからも頼りにしているわよ。姉さん!」と美夏は笑った。

「課内ではその課長に聞こえないように『課長に何かしたら、バックに佐々木さんが居るから倍返しで何をされるか分からないから!』と実しやかに囁かれるようになっているの。だから佐々木さんは本当にヤバイから美夏はくれぐれも気を付けてよね!?」と緑子は心配して言った。

「その山下課長と佐々木さんの噂を聞いたのかな。うちの課員たちが」と美夏。

「そうかもしれないわよ。だからハラスメントやマウントをされなくなったのかもね?」と緑子。

「今更だけど、会社って怖いわよね?」と美夏。

「だから美夏はその点が無防備なんだから、本当に気を付けてよ!」と緑子。

「そういう緑子だって、人の事、言える?」と言って笑った美夏だった。

「まっ、そうだけど、私は夫にナイショにしていれば済む話だから、それに今回はお義母さんのお世話もして主人からお礼まで言われたしネ!」と舌をペロッと出して明るく言った緑子だった。

 つづく
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