サレ夫が愛した女性たちの追憶

しらかわからし

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第4章

8話-4 帰京と引っ越し

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私はステーションホテル二号館には宿泊せずに帰京した。

社長に私は電話し一旦、帰京する旨を伝え、お世話になっている近隣にも挨拶をしなくてはいけなかったので帰京したかったからだ。

帰京して自宅に帰り、自分の軽ワゴンに載せられるだけの荷物を入れて、後はマンションを掃除し区役所に行き転出届けを出した。

ついでに新居の近所に配る挨拶の粗品を買いその後、みずほ銀行と証券会社に行き住所変更をしようとしたら、住民票を持って行かなくてはいけなかったので、また次にしようと思ったが面倒なのでそのままにして郵便局に行き転送届だけを出した。

この引っ越し作業が何とか午前中で終わり、社長に寮の住所を聞いていて鍵ももらっていたので向かった。

夜になってしまったので玄関先は真っ暗だった。

懐中電灯を持って玄関に入り電気を点けると一人で住むには広過ぎるような家だった。

荷物の出し入れは近所に迷惑になるので車に丸めて積んできたシェラフだけで寝る事にした。

明日、一日で荷物を整理して市役所に行き転入届を提出するつもりだった。

 ※

私の社員寮として与えられたこの家は、後に分かったことですだが社長の妾の大塚妙子氏の旧宅に住む事になった。

朝、起きると二階で今時は珍しい鼠が走り回っているようなゴソゴソガサガサとした音が聞こえたので上がってみた。

二階には三間ありゴミの山で足の踏み場もないほど凄い事になっていました。

社長が経営する他のホテルなどの総支配人の家とは聞いていて、先日までその女性の三人の息子が住んでいたことも聞かされていた。

二階の屋根裏にはゴミや使い古しの石油ストーブや家具などがそのままの状態で置かれていて、飲んだ空き缶や食べた缶詰の残骸が足元に散らばっていて山のようになっていた。

缶詰の中には残したままの干からびた魚や蟹などが残っているのもあった。

そのゴミの中に鼠が居てゴソゴソと動いていたのだ。

引っ越しをした明くる日から掃除をする気にはならなかったので、とりあえず休み時間に掃除することにした。

庭に出てみると、また凄い事になっていて、庭を見て途方に暮れていると隣の奥様から声を掛けられた。

どう見ても五十歳には行っていない四十歳代後半の気品のあるご婦人だった。

「隣に引っ越して来た人ですか?」

「はい、そうです、後程ご挨拶に伺わせて頂きます。宜しくお願い致します」

「この間、ホテルの社長さんが来ていて、『今度、ここに住む人は東京の帝王ホテルの料理長だった人だ』とおっしゃったので、今度はキレイに生活してくれるんじゃないかと近所の人たちと話していたんですよ」と言った。

途方に暮れていた姿を見た隣の奥様が、「引っ越して直ぐにこの話しをされたら、困りますよね。追々で良いですからキレイにしていただけると助かりますわ」

「え……、俺がするの?」と私は落ち込んだ。

更に続けて奥様は、「困っていたんですよ、大塚さんは全く掃除や片付けをしないご家族だったので鼠は来るは、ゴキブリは出るわで、特に裏の山形さんのお宅が一番迷惑されていたと思いますよ」と。

「いや……私も昨夜遅くに着いたので、この惨状を知りませんでした」としか言えなかったた。

そんなこんな事を話していると、工務店の職人が来て作業をし出した。

「ここに住む人ですか?」

「はい、そうです」

「ここは湿気が凄いから気を付けた方が良いですよ」

「そうなんですか」

「昔はこの一帯が沼だったので床下から湿気が上がってきて恐らくですけど今回、畳も全取り換えするのですが直ぐにカビが生えると思いますよ」

「そうなんですか……」と言うしかなかった。

「いやいやいや、とんだ所に就職させられた」と思って私は落ち込んだ。(これだったら一間のアパートの一室の方が有難い)と思っていた。

つづく
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