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第1章 父の死と王国の影:喪失の中で芽吹く決意
1-4話 葬儀と動き出す日常:白い服と看護師のまなざし
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病院に着いたのは、午前六時前だった。
父はすでに息を引き取っていた。
それにもかかわらず、母は遺体を見て「容態が持ち直したようだね」と呟いた。
前日に医師や看護師から説明を受けていたはずなのに、まるで理解していない。
グレッグは、言葉にならない苛立ちを覚えた。
病院側からは、すぐに葬儀屋へ連絡するよう促された。
だがグレッグには、葬儀の経験がなかった。
祖父母は物心つく前に他界しており、親戚もほとんどいない。
頼れるはずの叔父も、相変わらず「我関せず」の姿勢だった。
病院から渡された葬儀屋の一覧と案内状を手に、大手業者に早馬を出した。
しかし、料金体系は不明瞭で、遺体の保管・葬儀・斎場の手配がそれぞれ別の担当になるという煩雑さがあった。
結局、実家の隣町にある個人経営の葬儀屋に決めた。
価格を明確に提示してくれたこと、そして主人が一人で最初から最後まで面倒を見てくれるという点が決め手だった。
隣町を選んだのは、母が「近所は嫌だ」と言ったからだった。
葬儀屋はすぐに駆けつけてくれた。
グレッグは、いつ連絡が来るかも分からず、急に忙しくなることを思い、葬儀屋の負担を案じていた。
棺桶が父の遺体の横に置かれ、看護師と葬儀屋、そしてグレッグの三人で遺体を納めた。
看護師はまだ若い女性だった。
父の身体を丁寧に扱うその姿に、グレッグは驚いた。
顔を見上げると、凛とした美しさがそこにあった。
彼女は預かっていた荷物を返してくれた。
グレッグは伝票と照らし合わせて確認し、サインをした。
だが、その荷物をその後目にすることはなかった。
看護師は玄関まで見送りに来てくれた。
グレッグが、父のために買った品を病棟に寄付したいと申し出ると、快く受け取ってくれた。
しかしその後、彼女はグレッグたちを追いかけてきて、身だしなみ用品を手渡しながらこう言った。
「これは高価なものですから、お使いになってください」
その姿に、グレッグは思った。
葬儀屋も看護師も、疲れを顔に出さず淡々と動いている。
自分も、ああならなければいけないのだと。
翌日の葬儀は、午前十時からだったと記憶している。
グレッグは日記をつけており、資料として時系列のメモも書いていた。
しかし、その日の日記もメモも、空白のままだった。
葬儀屋が「朝早すぎるのも何ですからね」と言って、空いている時間の中で遅い方を選んでくれたのだった。
実家に行ったままの格好だったため、グレッグは真っ白な被りの服――葬儀には不適切な装いで参列することになった。
その白は、喪の色ではなく、過去の名残だった。
つづく
父はすでに息を引き取っていた。
それにもかかわらず、母は遺体を見て「容態が持ち直したようだね」と呟いた。
前日に医師や看護師から説明を受けていたはずなのに、まるで理解していない。
グレッグは、言葉にならない苛立ちを覚えた。
病院側からは、すぐに葬儀屋へ連絡するよう促された。
だがグレッグには、葬儀の経験がなかった。
祖父母は物心つく前に他界しており、親戚もほとんどいない。
頼れるはずの叔父も、相変わらず「我関せず」の姿勢だった。
病院から渡された葬儀屋の一覧と案内状を手に、大手業者に早馬を出した。
しかし、料金体系は不明瞭で、遺体の保管・葬儀・斎場の手配がそれぞれ別の担当になるという煩雑さがあった。
結局、実家の隣町にある個人経営の葬儀屋に決めた。
価格を明確に提示してくれたこと、そして主人が一人で最初から最後まで面倒を見てくれるという点が決め手だった。
隣町を選んだのは、母が「近所は嫌だ」と言ったからだった。
葬儀屋はすぐに駆けつけてくれた。
グレッグは、いつ連絡が来るかも分からず、急に忙しくなることを思い、葬儀屋の負担を案じていた。
棺桶が父の遺体の横に置かれ、看護師と葬儀屋、そしてグレッグの三人で遺体を納めた。
看護師はまだ若い女性だった。
父の身体を丁寧に扱うその姿に、グレッグは驚いた。
顔を見上げると、凛とした美しさがそこにあった。
彼女は預かっていた荷物を返してくれた。
グレッグは伝票と照らし合わせて確認し、サインをした。
だが、その荷物をその後目にすることはなかった。
看護師は玄関まで見送りに来てくれた。
グレッグが、父のために買った品を病棟に寄付したいと申し出ると、快く受け取ってくれた。
しかしその後、彼女はグレッグたちを追いかけてきて、身だしなみ用品を手渡しながらこう言った。
「これは高価なものですから、お使いになってください」
その姿に、グレッグは思った。
葬儀屋も看護師も、疲れを顔に出さず淡々と動いている。
自分も、ああならなければいけないのだと。
翌日の葬儀は、午前十時からだったと記憶している。
グレッグは日記をつけており、資料として時系列のメモも書いていた。
しかし、その日の日記もメモも、空白のままだった。
葬儀屋が「朝早すぎるのも何ですからね」と言って、空いている時間の中で遅い方を選んでくれたのだった。
実家に行ったままの格好だったため、グレッグは真っ白な被りの服――葬儀には不適切な装いで参列することになった。
その白は、喪の色ではなく、過去の名残だった。
つづく
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