25年間の闘いー奪われた恋、奪い返す命ー

しらかわからし

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第1章 父の死と王国の影:喪失の中で芽吹く決意

1-5話 役場の混乱と母の足取り:書類と歩みのすれ違い

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その日は、グレッグの精神科への通院日だった。  
実家に戻るなり、病院へ向かった。

主治医は言った。  
「お父さんとの関係が君にとって負担だったのは確かだね。これで君の人生が好転するかもしれないよ」

その言葉を胸に、グレッグはスラム街の自宅へ戻り、着替えを取りに立ち寄った。  
そして再び、実家へ向かった。

そこからは、まさに混乱の連続だった。

日記を読み返しても、役場を駆けずり回ったことしか書かれていない。  
記憶に残っているのも、役場へ行ったことだけだった。

葬儀屋からは「早めに手続きしてください」と言われていた。  
「必要な書類が多いので、役場でよく確認してから来てくださいネ」とも。

だが、役場のどこへ行けばいいのか分からず、窓口で尋ねると「代理人でも手続きできます」と言われた。  
それでも母は「自分で行く」と言って聞かなかった。

出発の時間になっても、母はなかなか準備を終えず、ようやく出てきたかと思えば「歩いて行く」と言い出した。

役場は隣町にある。  
馬車なら十分ほどで着くが、歩けば1時間以上かかる。

叔父は足腰が弱っていて、歩く速度は時速一キロにも満たない。  
母は時速二キロほどだが、叔父を待たずに先を行ってしまう。

三人の中で最も遅い叔父の尻を叩くようにして、グレッグは母を追った。

道を知っているはずの母は、道に迷うことが増え、同じ道を行ったり戻ったりしていた。  
グレッグは叔父から目が離せず、地図を調べる余裕もなかった。

それでも何とか、約束の時間ぴったりに役場へ到着した。

書類を書いて、呼ばれるのを待つ。  
窓口で手続きをしたのはグレッグ一人だったが、母は「こんな面倒なことはもう嫌だ!」と駄々をこねた。

母の住民帳が足りず、最寄りの支所へ取りに行くことになった。  
母は「これでいい」と言って身分証を持っておらず、その場で委任状を書かせて、グレッグが母の住民台帳から住民帳を発行してもらった。

役場が閉まる前に、母よりも早く戻ることができた。

委任状があれば職員が代行してくれると言われたが、手続きが煩雑になる。  
実家と支所を往復するのも、役場と支所を往復するのも距離は変わらない。

何よりも、一日でも早く手続きを終えたかった。  
そのため、グレッグは「今日中に再申請に来ます」と言ってしまった。

役場には叔父が待っているはずだったので、母を迎えに行かせようと思ったが、叔父の姿はなかった。

グレッグは受付に書類を提出し、母と待ち合わせている馬車乗り場へ向かった。  
だが、そこにも母の姿はなかった。

仕方なく、支所までの道をもう一度戻り、母を探しに行った。

ようやく叔父を見つけると、酒屋でビールを飲んでいたという。

三人がようやく合流したとき、グレッグはすでにヘトヘトだった。

朝から食事はおろか、水の一杯すら口にしていなかった。  
馬車乗り場の前にあるパン屋でパンを買おうとしたところ、母に「贅沢だ!」と怒鳴られた。

その言葉が、疲労の底に静かに沈んでいった。

つづく

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