25年間の闘いー奪われた恋、奪い返す命ー

しらかわからし

文字の大きさ
64 / 130
第3章 過ぎゆく温もり:王の側室となった彼女へ

5-1話 グレッグによる動物薬の研究・開発と薬専門店である薬局の開業

しおりを挟む
グレッグの薬局には、大きな土瓶、碾き臼、百味箪笥、薬研、鹿の角——そして動物由来の薬材見本が並んでいた。
通りを歩く人々は、その店を初めて目にしたとき、「あれらは何をするものなのか?」と驚きながらも、興味津々だった。
この時代、街中には薬局という存在がなかった。

グレッグが開発した薬や入浴剤は、これまで三人の女性の家や従業員によって販売されていた。
そんな中、彼は国中で初めて薬の専門店——薬局を開業したのだった。

当時の街には、服屋、食料品店、パン屋、酒屋、食堂、ダンスホールなど、一般的な店しかなかった。
薬局という存在は、誰にとっても初めての体験だった。

「どうやって服むのだろう?」「どんな病気に効くのだろう?」と、戸惑いながらも興味を持つ客が多かった。
ある日、客の一人が「薬局とはどんな店なのか?」と尋ねてきた。

グレッグは、健康を支える薬や体調を整える製品、化粧品などを扱っていることを丁寧に説明した。
それ以降、客は自分の症状を伝え、グレッグがそれに合った薬を処方して渡すようになった。

当時の医者の多くは、金儲けのために開業しており、病気を根本的に治すことを避ける傾向があった。
しかしグレッグは、本当に効果のある薬を研究・開発していたため、店は瞬く間に評判となり、大繁盛していった。

さらに彼は、従業員の給料や家賃、家族が健やかに暮らせるだけの利益しか取らなかった。
その誠実な姿勢により、客から恨まれることもなく、従業員からも感謝される商売を貫いていた。
この頃には、同業者はほとんど存在せず、グレッグの薬局は事実上の独占状態だった。

やがて医者たちも薬局を始めるようになったが、効果のある薬を提供できず、患者は再びグレッグの店を訪れて病を癒していった。

しばらくすると、医者の中にはグレッグの薬局を真似て、高価な薬材を飾り立て、裕福な客だけを相手にする薬局も現れ始めた。

一方、グレッグの店では、支払いが難しい人々には代金を求めず、草むしりなどの手伝いで薬を受け取れるようにした。
また、自分の畑で採れた野菜との交換も認めていた。
そのような噂が国中に広まり、遠方からも貧しい人々が集まるようになった。

そこでグレッグは考えた。彼らのために住まいを用意し、料理が得意な女性たちに一日二食の食事を作らせ、屑屋の仕事を与えた。

さらに、優秀な人材には各地の薬局の責任者を任せ、ピーアやニコルを総責任者として管理させた。
他の業者も増えていったが、実際には薬の研究をしておらず、グレッグの薬を買って容器を変えて販売しているだけだった。
そのため価格はさらに高騰し、裕福な層しか購入できなくなっていた。

グレッグは、そうした薬局が目立つようになったことに気づいた。
店の前を通るだけで、どのような店かが見えてくる。高価な薬材を飾り、大げさな旗を掲げ、まるで専門病院のような外観の薬局もあった。

しかし、グレッグには信念があった。
店を飾り立てるよりも、誠実に仕事に取り組む姿勢こそが店の姿に現れると考えていた。
そのため、必要以上に見栄えを良くすることはせず、店には常に長蛇の列ができていた。
高価な原料は、研究の結果必要と判断した場合のみ使用し、ただ高価だからという理由で看板商品にすることはなかった。

グレッグの願いはただ一つ——国中の病に苦しむ人々を少しでも救いたいという思いだった。

つづく
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

旧校舎の地下室

守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

愛しているなら拘束してほしい

守 秀斗
恋愛
会社員の美夜本理奈子(24才)。ある日、仕事が終わって会社の玄関まで行くと大雨が降っている。びしょ濡れになるのが嫌なので、地下の狭い通路を使って、隣の駅ビルまで行くことにした。すると、途中の部屋でいかがわしい行為をしている二人の男女を見てしまうのだが……。

ちょっと大人な物語はこちらです

神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な短編物語集です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

彼の言いなりになってしまう私

守 秀斗
恋愛
マンションで同棲している山野井恭子(26才)と辻村弘(26才)。でも、最近、恭子は弘がやたら過激な行為をしてくると感じているのだが……。

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

処理中です...