25年間の闘いー奪われた恋、奪い返す命ー

しらかわからし

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第3章 過ぎゆく温もり:王の側室となった彼女へ

6-2話 宿の灯:約束の続き

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劇場を後にした二人は、食堂で温かな食事を共にし、懐かしさと少しの照れを交えながら語り合った。
ミリヤムは、舞台の裏話や芸能界での苦労を語り、グレッグは薬局のことや仲間たちとの日々を話した。
それは、離れていた時間を少しずつ埋めていくような、穏やかな会話だった。

食後、ミリヤムの宿へ向かう馬車の中で、グレッグは彼女の横顔を見つめながら、過ぎ去った年月の重みを感じていた。
彼女の瞳には、舞台の光とは違う、静かな強さが宿っていた。
宿は古びた建物の最上階、角部屋だった。
小さな流しと化粧台、窓が二つある質素な部屋。
けれど、ミリヤムが「ここが私の居場所なの」と微笑むと、そこは不思議と温かく感じられた。

「ジュースある?」とグレッグが尋ねると、彼女は「あるわよ」と言って、静かにグラスに注いでくれた。
二人は並んで椅子に座り、グラスを傾けながら、過去の記憶を辿るように話し始めた。
「昔の約束、覚えてる?」とミリヤムが言った。
グレッグは一瞬、言葉に詰まった。
「え……何だっけ?」
彼女は少し寂しそうな目で見つめながら、静かに言った。

「私がベルリンに出てきたら、彼女にしてくれるって言ったじゃない。だから、今夜はそばにいてほしいの」
その言葉に、グレッグは胸が締めつけられるような思いがした。
彼女はずっとその約束を信じて、誰にも心を許さずにいたのだ。
芸能界の厳しさ、孤独、そして誰にも言えない葛藤——それらを抱えながら、彼女は今日まで歩いてきた。

「最初に心を許すなら、あなたしかいないと思ってた」
その言葉に、グレッグは静かに頷いた。

彼女の信頼に応えたい——それは、過去の約束ではなく、今の彼自身の願いだった。
ミリヤムがベッドを整え、ランプの灯りが部屋を柔らかく照らす。
その光の中で、二人は静かに寄り添い、言葉よりも長い沈黙の中で、互いの存在を確かめ合った。
それは、初恋の続きではなく、人生の新しい章の始まりだった。

つづく
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