25年間の闘いー奪われた恋、奪い返す命ー

しらかわからし

文字の大きさ
76 / 130
第3章 過ぎゆく温もり:王の側室となった彼女へ

7-1話 酒場の店長フィーネ30歳とグレッグの出会い

しおりを挟む
秋の終わり、街の空気が少し冷たくなり始めた頃。
グレッグは、薬局と屑屋に続く新たな事業として、酒場の経営を始めることを決めていた。
人々が集い、語らい、憩う場所——それは、彼の理想とする「街の灯」のひとつだった。
彼は、何軒もの店を見て回りながら、ようやく心に響く酒場を見つけた。

店の雰囲気、客層、料理の香り——すべてが穏やかで、どこか懐かしさを感じさせた。
そこの主人と話がまとまり、契約を終えたグレッグは、カウンターで酒を飲んでいた。

すると、一人の女性が彼の姿に気づき、「同席してもいいですか?」と声をかけてきた。
この頃のグレッグは、町の中で広く知られる存在になっていた。

「グレッグさん、はじめまして。この店の主任をさせていただいています、フィーネと申します。よろしくお願いします」
「私はグレッグです。こちらこそ、よろしくお願いします」

「薬局と屑屋を経営されているご主人様ですよね?」
「はい、そうです」
「この店の主人から、グレッグさんのことはよく伺っています」

「君を見ていると、よくもまあ、一日中働いてガッツがあるよね。いつも感心して見ていたから」
「そんなところを見てくださっていたんですか?」
「君みたいに仕事に情熱を持っている人は、なかなかいないからね」
「両親が病気がちなので、私が働かないと生活ができないんです」
「そういうことだったんだね」

「実はこのお店を私が買うことになったんだけど、フィーネさん、店長をやってもらえないかな?」
「私のような者でもよろしいのですか?」
「もちろん。君のように美しくて仕事熱心な人に、ぜひ店長をお願いしたいと思っていたんだ。給料は今の倍を出そうと思っているけど、どうかな?」

「ぜひ、やらせてください!」
長い黒髪をきちんとまとめ、背筋を伸ばして歩くフィーネの姿は、凛としていてとても印象的だった。

グレッグは店を買ったことで、今後は自分がこの店の主人となる。
後日、これまで働いていた従業員たちと親睦を深めるため、酒を酌み交わす機会を設けた。

料理人は五人、ホールスタッフは男女合わせて十人。
部屋に入ると、フィーネがグレッグを見つけて隣に座った。
グレッグは皆に挨拶をし、その後は雑談を交えながら和やかな時間を過ごした。

「一緒にお酒を飲むのは初めてだよね?」
「はい、あまり得意ではないんですが、今日は少しだけいただきます」
「好きなものを飲んでね」
「じゃあ、ビールをいただきます」

グラスを持ってきたフィーネに、グレッグが注いで渡した。
「フィーネさんが店長をやってくれて、本当に助かったよ。ありがとう」
「いえ、恐縮です。両親も『良い主人に恵まれてよかったね』と言ってくれています」
「そう言ってもらえると嬉しいね」

フィーネは二十二歳で大学を卒業し、三年間銀行に勤めた後、将来店を持ちたいという夢のためにこの酒場に入社。
修業のつもりで働き始めてから、すでに五年が経っていた。つまり、彼女は三十歳だった。

(よく、年上の女性と出会うものだ)と、グレッグは心の中で思っていた。

彼は、フィーネとの出会いが、これからの人生に新たな彩りをもたらす予感を感じていた。

つづく
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

旧校舎の地下室

守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ちょっと大人な物語はこちらです

神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な短編物語集です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?

離婚すると夫に告げる

tartan321
恋愛
タイトル通りです

彼の言いなりになってしまう私

守 秀斗
恋愛
マンションで同棲している山野井恭子(26才)と辻村弘(26才)。でも、最近、恭子は弘がやたら過激な行為をしてくると感じているのだが……。

処理中です...