25年間の闘いー奪われた恋、奪い返す命ー

しらかわからし

文字の大きさ
81 / 130
第3章 過ぎゆく温もり:王の側室となった彼女へ

8-3話 出会いの夜:心が触れた瞬間

しおりを挟む
ダンスホールの灯りが揺れる中、グレッグとハンナは三曲続けて踊った。
互いの距離が縮まり、視線が重なるたびに、言葉よりも深い感情が交差していた。
ハンナの頬はほんのり赤く染まり、グレッグの胸には静かな高鳴りがあった。

「これから、静かな場所へ行きませんか?」
グレッグの言葉に、ハンナは少し照れながらも「はい」と答えた。

二人は馬車に乗り、街の喧騒から離れた宿へ向かった。
窓の外には、秋の夜風が街路樹を揺らし、遠くに灯る街の明かりが静かに瞬いていた。
部屋に入ると、ハンナは風呂の準備をし、グレッグは彼女の背中を見つめながら、静かに微笑んだ。
その姿には、日常の中で見せる凛とした雰囲気とは違う、柔らかな気配が漂っていた。

湯上がりの時間、二人は肩を並べて座りながら、互いの過去を語り合った。
ハンナは、母に育てられた日々や、父の記憶がないことを静かに話した。
グレッグは、屑屋として働いていた頃のこと、薬局を始めたきっかけ、そして失った人々のことを語った。

「まさか、今日こんな風になるとは思っていませんでした」
ハンナの言葉に、グレッグは「君が笑ってくれた瞬間に、何かが始まる気がした」と答えた。
彼女は少し拗ねたような顔をして、「もう……」と呟いた。

ベッドに並んで横になりながら、グレッグはハンナの手を握った。
「君と過ごす時間が、こんなに穏やかだなんて思わなかった」
ハンナは目を閉じて、静かに頷いた。

「最低でも月に二回は会えるから、その時にまた話しましょう」
彼女の言葉には、期待と少しの不安が混ざっていた。
グレッグは「約束するよ」と答え、彼女を馬車で自宅近くまで送り届けた。

夜の街を走る馬車の中で、グレッグはふと空を見上げた。
星が静かに瞬いていた。
それは、出会いの夜が、確かに心に残るものだったことを教えてくれていた。

つづく

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

旧校舎の地下室

守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

ちょっと大人な物語はこちらです

神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な短編物語集です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?

離婚すると夫に告げる

tartan321
恋愛
タイトル通りです

彼の言いなりになってしまう私

守 秀斗
恋愛
マンションで同棲している山野井恭子(26才)と辻村弘(26才)。でも、最近、恭子は弘がやたら過激な行為をしてくると感じているのだが……。

処理中です...