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第5章:島の祝福と権力の影
第1話 後編:役所と旧友、そして東京店での再会
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東京に着いた二人は文京区役所へ向かった。和永は窓口で転出届を提出し、職員に尋ねた。
「婚姻届もいただけますか?」
職員は笑顔で一枚の用紙を差し出した。
「こちらが全国共通の婚姻届です。寒鷺村役場に提出してくださいね」
麻衣子はその用紙を両手で受け取り、しばらく見つめていた。
「これで本当に夫婦になるんですね」
和永は頷き、静かに答えた。
「島に戻ってから、正式にだよ」
その後、二人は昭雄の耳鼻科クリニックを訪ねた。待合室には昭雄と妻の櫻子が待っていた。
「社長、元気だった?」と昭雄。
「うん、何とか生きていたよ」和永は笑いながら答えた。
麻衣子は丁寧に挨拶した。
「はじめまして、愛原麻衣子です」
「はじめまして、中村昭雄です。こちらは妻の櫻子です。堅苦しい挨拶は抜きにしましょう」
櫻子は麻衣子に微笑みかけた。
「寒鷺村学生寮の寮母として勤務するんですよね?」
「はい、そのつもりです」麻衣子は頷いた。
昭雄は感心したように言った。
「偉いですよ。最近の人でそうやってボランティア精神を持っている人は少ないですからね」
和永は少し照れながらも語った。
「前の嫁さんとの夢だったんだけど、不思議なことに麻衣子の夢もあの島で暮らすことだった。俺たちはやっぱり赤い糸で結ばれていたんだと実感しているんだよ」
「正に奇跡だよ」と昭雄は頷いた。
別れ際、櫻子は「落ち着いた頃に私たちも遊びに行きますから」と言い、麻衣子は「はい、お待ちしております」と笑顔で答えた。
その足で二人は東京店に寄った。翔平が出迎えた。
「社長! お帰りなさい!」
「翔平、お前が社長だろ? 元気だったか?」
「はい、お陰様で」
和永は麻衣子を紹介した。
「俺の嫁さんの麻衣子だ」
翔平は驚いたように笑った。
「以前に西山理事長といらしたことがありましたよね? 物凄い美人さんで後光が差していて目立っていたので見とれてしまいました」
麻衣子は照れながら「またまた、お口がお上手なこと」と笑った。
翔平は真剣な顔で言った。
「会員のお客様方が会長を心配しておられたので、またいらっしゃったら近況をお知らせしても良いですか?」
「お願いするよ。そうそう、国立がんセンターの大山院長と螺良歯科医院の院長には特に宜しくお伝えてして下さい」と和永。
「承知いたしました」
さらに和永は尋ねた。
「幸枝は元気にしているのかな?」
「はい。昨日も来て一緒に夕食を共にしました」
「だったら幸枝にも宜しく伝えてよ」
「はい、わかりました」
二人は店を後にした。車中で麻衣子は和永に寄り添い、囁いた。
「これで私と貴方は正真正銘の夫婦なのね? 本当に嬉しいです! 今後ともどうぞ宜しくお願いします!」
「うん、俺も末永く宜しくな! こんな爺さんだけどさ」
東京のマンションに立ち寄り、麻衣子は驚いた。
「ここが貴方のマンションなの?」
「うん、そうだよ」
「凄いマンションよね」
「そうか?」
麻衣子は少し不安げに尋ねた。
「ところで幸枝さんって?」
和永は軽く笑って答えた。
「前の嫁の親友だよ。俺よりも一回り上で、俺の親友の元嫁だったんだ」
「その人と貴方は男女の関係はおありですか?」
「うん。ある」と言った。
「それは承知しました。私が覗った時に嘘は言わないで下さい」と麻衣子は全く表情を変えずに言った。
その瞳には怒りも嫉妬もなく、ただ静かな覚悟が宿っていた。
和永は何て心が広い女性なんだと思っていた。
だが麻衣子は心が広いのではなく、彼女自身も過ちを犯してきたからこそ、夫になった彼に対して責めることができない――それが真実だった。
その後の麻衣子は微笑み、二人は民宿のオヤジたちへの手土産を買った。
都会の夜景が窓に映り、二人は新婚気分を満喫するために、和永のマンションで一日過ごすことにした。
――つづく。
「婚姻届もいただけますか?」
職員は笑顔で一枚の用紙を差し出した。
「こちらが全国共通の婚姻届です。寒鷺村役場に提出してくださいね」
麻衣子はその用紙を両手で受け取り、しばらく見つめていた。
「これで本当に夫婦になるんですね」
和永は頷き、静かに答えた。
「島に戻ってから、正式にだよ」
その後、二人は昭雄の耳鼻科クリニックを訪ねた。待合室には昭雄と妻の櫻子が待っていた。
「社長、元気だった?」と昭雄。
「うん、何とか生きていたよ」和永は笑いながら答えた。
麻衣子は丁寧に挨拶した。
「はじめまして、愛原麻衣子です」
「はじめまして、中村昭雄です。こちらは妻の櫻子です。堅苦しい挨拶は抜きにしましょう」
櫻子は麻衣子に微笑みかけた。
「寒鷺村学生寮の寮母として勤務するんですよね?」
「はい、そのつもりです」麻衣子は頷いた。
昭雄は感心したように言った。
「偉いですよ。最近の人でそうやってボランティア精神を持っている人は少ないですからね」
和永は少し照れながらも語った。
「前の嫁さんとの夢だったんだけど、不思議なことに麻衣子の夢もあの島で暮らすことだった。俺たちはやっぱり赤い糸で結ばれていたんだと実感しているんだよ」
「正に奇跡だよ」と昭雄は頷いた。
別れ際、櫻子は「落ち着いた頃に私たちも遊びに行きますから」と言い、麻衣子は「はい、お待ちしております」と笑顔で答えた。
その足で二人は東京店に寄った。翔平が出迎えた。
「社長! お帰りなさい!」
「翔平、お前が社長だろ? 元気だったか?」
「はい、お陰様で」
和永は麻衣子を紹介した。
「俺の嫁さんの麻衣子だ」
翔平は驚いたように笑った。
「以前に西山理事長といらしたことがありましたよね? 物凄い美人さんで後光が差していて目立っていたので見とれてしまいました」
麻衣子は照れながら「またまた、お口がお上手なこと」と笑った。
翔平は真剣な顔で言った。
「会員のお客様方が会長を心配しておられたので、またいらっしゃったら近況をお知らせしても良いですか?」
「お願いするよ。そうそう、国立がんセンターの大山院長と螺良歯科医院の院長には特に宜しくお伝えてして下さい」と和永。
「承知いたしました」
さらに和永は尋ねた。
「幸枝は元気にしているのかな?」
「はい。昨日も来て一緒に夕食を共にしました」
「だったら幸枝にも宜しく伝えてよ」
「はい、わかりました」
二人は店を後にした。車中で麻衣子は和永に寄り添い、囁いた。
「これで私と貴方は正真正銘の夫婦なのね? 本当に嬉しいです! 今後ともどうぞ宜しくお願いします!」
「うん、俺も末永く宜しくな! こんな爺さんだけどさ」
東京のマンションに立ち寄り、麻衣子は驚いた。
「ここが貴方のマンションなの?」
「うん、そうだよ」
「凄いマンションよね」
「そうか?」
麻衣子は少し不安げに尋ねた。
「ところで幸枝さんって?」
和永は軽く笑って答えた。
「前の嫁の親友だよ。俺よりも一回り上で、俺の親友の元嫁だったんだ」
「その人と貴方は男女の関係はおありですか?」
「うん。ある」と言った。
「それは承知しました。私が覗った時に嘘は言わないで下さい」と麻衣子は全く表情を変えずに言った。
その瞳には怒りも嫉妬もなく、ただ静かな覚悟が宿っていた。
和永は何て心が広い女性なんだと思っていた。
だが麻衣子は心が広いのではなく、彼女自身も過ちを犯してきたからこそ、夫になった彼に対して責めることができない――それが真実だった。
その後の麻衣子は微笑み、二人は民宿のオヤジたちへの手土産を買った。
都会の夜景が窓に映り、二人は新婚気分を満喫するために、和永のマンションで一日過ごすことにした。
――つづく。
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