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第7章:罪の記憶と影の囁き
第3話 前編:林海留学の子供たちの影
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和永と麻衣子は毎朝、鹿野の家に行き、朝食と昼食の弁当を届け、和永は鹿野から村政について学んでいた。
そして昼休みには夕食の弁当と鹿野の妻から頼まれた日用品や食品を買い持って行き、鹿野から和永は村政について学んでいた。
そしていつも疑問に思っていた事があった。
島の地元の子供たちは、和永や麻衣子に会うと、向こうから笑顔で「おはようございます!」や「こんにちは!」と挨拶してくれる。素直で明るいその姿に二人はいつも心が和んだ。
ところが、林海留学の子供たちの多くは違った。彼らは挨拶をせず、暗い顔で逃げるように立ち去ってう。その様子はいつも二人の胸に引っかかっていた。
ある日、民宿のオヤジにその疑問をぶつけてみた。
「今回の村長選挙は参ったよな?」とオヤジはまず政治の話を嘆いた。
「公約的には鹿野先生の方が断然良かったのに残念でしたね」と和永。
「だよな、誰見だって鹿野しぇんしぇだったよな?」とオヤジは肩を落とした。
和永は切り出した。
「オヤジさん、一つ訊いても良いですか? 島の地元の子供たちは笑顔で挨拶してくれるのに、林海留学の子供たちは暗い顔で逃げていくのはなぜですか?」
オヤジは深いため息をつきながら答えた。
「そりゃぁ、地元の子は本当の親さ愛情豊がに育てられているが、林海留学の子供たちの殆どの親は彼らを邪魔者扱いにして、この離島に送り込んでぐっからなんだよ」
「それはどういうことですか?」と和永。
オヤジは村の教育委員会の実態を語った。林海留学の子供たちを管理しているのは教育委員会であり、責任者は教育長だ。しかし教育長は一年も持たずに交代し、村役場の役人が代理を務めて半年ほどでまた交代。本土から募集して来た教育長も村長に虐められて辞めていく。その繰り返しだった。
「だから林海留学の方針がコロコロ変わってしまうんだ。子供たちだって落ち着かないべ? 星野校長もそう言ってたよ」とオヤジ。
和永は納得した。地元の子供たちは笑顔が輝いているのに、林海留学の子供たちの目は濁り、避けるように逃げていく。
その姿に、和永は東京店で出会った常連の家で飼育していた錦鯉を思い出した。常連客から呼び出されて「飼わないか?」と言われたが彼は高価な物には全く興味がなかったが、飼育方法だけは学んだ。
魚は水が合わないと挙動不審になり元気を失うが、水が合えば餌をねだり人に懐く。子供たちの姿はまさにそれと同じだと思えた。
さらにオヤジは委託料の仕組みを語った。食費などを含め月額九万円。実の親は一人目で五万円、二人目は二万五千円を負担し、村と県から六万五千円の補助金が入る。年間で一人当たり百万円近い金が村に入る。
「村は、んまぇべ?」とオヤジ。
「確かにそうですね」と和永は頷いた。
給食費も問題だった。実親から月三千五百円徴収しているが、給食は週二回しかない。残り三日は地元の親や寮の管理人が作るか弁当。
土日は当然親や管理人が昼食を作る。週二回、月八回の給食費を徴収して余った金はどうなるのか――想像に難くない。
「なるほど」と和永。
さらにPTA会費や教材費、医療費、学用品費、衣料費、遊具費、通信費、旅行費、特別活動費なども実親負担。
寮の管理人によれば、子供たちが親に電話するのも寮の携帯電話を使うため、時間を問わず掛けてきて大変だという。
「電話代が凄いことになるんじゃないですか?」と和永。
「ほだな細げえ事は気にすねんだよ。村長は自分の腹だげ痛まなければそれでいいんだ。この期に及んで自分の給料だけ上げだんだってよ。他の職員は据え置きなのにさ」とオヤジは苦笑した。
和永は初めて村の政治に口を出した。
「変過ぎですね。やっぱり鹿野先生に代わってもらわないと」
「んだ」
――つづく。
そして昼休みには夕食の弁当と鹿野の妻から頼まれた日用品や食品を買い持って行き、鹿野から和永は村政について学んでいた。
そしていつも疑問に思っていた事があった。
島の地元の子供たちは、和永や麻衣子に会うと、向こうから笑顔で「おはようございます!」や「こんにちは!」と挨拶してくれる。素直で明るいその姿に二人はいつも心が和んだ。
ところが、林海留学の子供たちの多くは違った。彼らは挨拶をせず、暗い顔で逃げるように立ち去ってう。その様子はいつも二人の胸に引っかかっていた。
ある日、民宿のオヤジにその疑問をぶつけてみた。
「今回の村長選挙は参ったよな?」とオヤジはまず政治の話を嘆いた。
「公約的には鹿野先生の方が断然良かったのに残念でしたね」と和永。
「だよな、誰見だって鹿野しぇんしぇだったよな?」とオヤジは肩を落とした。
和永は切り出した。
「オヤジさん、一つ訊いても良いですか? 島の地元の子供たちは笑顔で挨拶してくれるのに、林海留学の子供たちは暗い顔で逃げていくのはなぜですか?」
オヤジは深いため息をつきながら答えた。
「そりゃぁ、地元の子は本当の親さ愛情豊がに育てられているが、林海留学の子供たちの殆どの親は彼らを邪魔者扱いにして、この離島に送り込んでぐっからなんだよ」
「それはどういうことですか?」と和永。
オヤジは村の教育委員会の実態を語った。林海留学の子供たちを管理しているのは教育委員会であり、責任者は教育長だ。しかし教育長は一年も持たずに交代し、村役場の役人が代理を務めて半年ほどでまた交代。本土から募集して来た教育長も村長に虐められて辞めていく。その繰り返しだった。
「だから林海留学の方針がコロコロ変わってしまうんだ。子供たちだって落ち着かないべ? 星野校長もそう言ってたよ」とオヤジ。
和永は納得した。地元の子供たちは笑顔が輝いているのに、林海留学の子供たちの目は濁り、避けるように逃げていく。
その姿に、和永は東京店で出会った常連の家で飼育していた錦鯉を思い出した。常連客から呼び出されて「飼わないか?」と言われたが彼は高価な物には全く興味がなかったが、飼育方法だけは学んだ。
魚は水が合わないと挙動不審になり元気を失うが、水が合えば餌をねだり人に懐く。子供たちの姿はまさにそれと同じだと思えた。
さらにオヤジは委託料の仕組みを語った。食費などを含め月額九万円。実の親は一人目で五万円、二人目は二万五千円を負担し、村と県から六万五千円の補助金が入る。年間で一人当たり百万円近い金が村に入る。
「村は、んまぇべ?」とオヤジ。
「確かにそうですね」と和永は頷いた。
給食費も問題だった。実親から月三千五百円徴収しているが、給食は週二回しかない。残り三日は地元の親や寮の管理人が作るか弁当。
土日は当然親や管理人が昼食を作る。週二回、月八回の給食費を徴収して余った金はどうなるのか――想像に難くない。
「なるほど」と和永。
さらにPTA会費や教材費、医療費、学用品費、衣料費、遊具費、通信費、旅行費、特別活動費なども実親負担。
寮の管理人によれば、子供たちが親に電話するのも寮の携帯電話を使うため、時間を問わず掛けてきて大変だという。
「電話代が凄いことになるんじゃないですか?」と和永。
「ほだな細げえ事は気にすねんだよ。村長は自分の腹だげ痛まなければそれでいいんだ。この期に及んで自分の給料だけ上げだんだってよ。他の職員は据え置きなのにさ」とオヤジは苦笑した。
和永は初めて村の政治に口を出した。
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「んだ」
――つづく。
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