スキル:浮遊都市 がチートすぎて使えない。

赤木 咲夜

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導入編

第8話 ギルド結成

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「お兄ちゃん、なにその荷物。」
「そっちだってなんだよその長い包み。」
俺と妹はお互いに増えた荷物を見る。

「使えるかわからないお試し武器。」
「お兄ちゃんからの連絡が途切れた真斗さんのお使い。」

あー、完全に忘れていた。
「お兄ちゃん、今度から忘れないようにしようね。でもどっちにしろ、今回お兄ちゃんでは買えなかったよ。この西洋剣、金貨15枚するし。」

そんなものを俺に買わせる気だったのか。というかどれだけお金持ってんだよ妹。
「一応言うけど、大阪に帰ったら返してもらう予定だよ。私の次の装備の積み立てだし。」
あ、そうですか。

父の顔がエェェェってなっている。
父と話していたサムさんも似た顔だ。

「それよりも聞いてよ。アンジェリーナお姉さま凄いんだよ。ゆりちゃんくらい強いんだよ。」
それ父の前で行っていいのか。

「それで見て、ギルド作ったの。とっても気があってね。メンバーはアンジェリーナお姉さまと私、あとお兄ちゃん。
後でだけど、ゆりちゃんと、真斗さんと、真斗さんの従兄弟が入る予定だよ。
ゆりちゃんと真斗さんは連絡済み。真斗さんの従兄弟は真斗さんからの紹介。ギルマスはアンジェリーナさん。お母さんも誘ったけど、会社との兼ね合いがわからないから入らないって。
もうギルドホームも小さいけど借りたよ。2型E仕様であまり広くないけど。」

相変わらず、一度決めると仕事が早い。

「そういえば、アンジェリーナさんは?」
話題の人物がいないことに気付き訪ねる。

「それなら、友人に会いに行くっていって何処かに行ったよ。15分くらいで帰ってくるって。そろそろ戻ってくるとおもう。」

そういっているうちにお姉さまが帰ってきた。

「お待たせ。ギルド作ったこと報告してきたわ。そしたらちょっとしたサプライズされて。」
そういって個人カードでギルド章を見せるお姉さま。
ギルド章は左上1/4に最果て鍛治ギルドの旗印、そして桜の花びら1枚と流れ星、その「☆彡」の「彡」の部分のうち真ん中の部分が刃物で切ったように「メ」の形。下地は側が白で上にかけてだんだんと濃い水色になっている。

「左上の月と太陽のマークが最果て鍛治ギルドの旗になっちゃった。」
ちょっと嬉しいような申し訳ないような微妙な顔のお姉さま。

「つまり、ギルド旗が変わったってこと?」
「そう言うこと。」
妹の軽い疑問に肯定するアンジェリーナさん。
「いいんじゃない?なんかかっこいいし。」
きっと別の意味もあるんだろう。
だが深くは考えない妹。

「とりあえず、アンジェリーナさんの用事は終わったんだよね。よし、早速我が家ギルドホームに行こう!!」

誰かアンジェリーナさんに詳しい話を聞いてあげて。

----

妹の案内で俺たちはギルドホームに入る。ギルドホーム入り口に、さっきと同じ旗印が描かれている。アンジェリーナさんはギルドホームに入って何かをいじり、ドアの旗を消した。

「ここが私たちのギルドホームよ。入って左側は女性用仮眠室兼更衣室、右側が男性用仮眠室兼更衣室。トイレとシャワー室はそれぞれ2つずつ更衣室にあるわ。」

そう言って更衣室を男女共に見せるアンジェリーナさん。
「今は誰でも入れてしまうけど、後で性別でロックするから。ちなみに視界ガードついているから扉を開けても除けないよ。」
と最後の方で俺を見る一言余計なアンジェリーナさん。

俺は興味なさげに笑うフリをする。

「奥に行くと、オープンキッチンとギルドホール。それほど大きくはないけど。20人くらいは収容できるかな。あと、ギルマス室はキッチン横扉。この奥には私の私室もあるわ。このギルドホームの管理をする条件で住むことになってるから。私室は開けれないけど、ギルマス室は見れるから後で見て。一応客が来ることを考えて部屋の隅に衝立とソファ。そしてキッチンの向かいに広めのトイレがあるわ。こっちは男女兼用。お客様を更衣室に連れて行けないからね。ギルド端末はメインがギルマス室、サブ機が更衣室に計2台、私の私室に1台あるわ。他人にギルドの情報を見せるのはご法度。覚えといてね。」

流れるように部屋の説明をするアンジェリーナさん。

「照明などは個人カードで調整できるから。進入禁止設定だけど、ギルドホームにはギルドメンバーと一緒でなければ入れない。更衣室はそれぞれの性別のギルドメンバーのみ。私の私室は私と一緒に入った女性のみ。ギルマス室はギルドメンバーのみだけど、私と一緒なら部外者でも入れるわ。これはギルドメンバー登録のためね。」

セキュリティ高いな。

「ここからはギルドメンバーだけの説明だから、さくらとチャンだけついてきて。」

そう言って俺たち2人をギルマス室に入れるアンジェリーナさん。

「ギルドルールはギルドメンバーの秘密を漏らさないこと。OK?」

俺はうなずく。
「同意できるならこのギルド端末にカードをかざして。」
俺は言われた通りにカードをかざす。
半透明個人カードにギルド紋章が映る。

「ではちょっと込んだ話を。このギルドで『これは部外秘』と言うとその内容は外部の人に一切言えなくなるの。これは強制でその内容だけがギルド以外の人間に聞こえなくなる。そしてその部外秘の内容はギルドを脱退すると記憶から消し去られる。そしてこの『これは部外秘』と言う文言だけど「と言う」をつけるとその話の内容は指定されない。けど最後に『これは部外秘』と言うと指定される。つまりキャンセルするときは「と言う」をつければいいし、秘密にしたかったら、最後に文言を言えばいいわ。こんなふうに『これは部外秘』」

疑問がいっぱいの俺。妹も同じだ。

「試しにさっきの秘密を外で待っているみんなに話してきて。みんなには聞こえないはずだから。」

俺たち兄妹は外にいる父母とサムに今の秘密を言う。
「あの、2人が言っている事がわからない。途中声が出てないよ。」

なるほど。秘密はギルドメンバーだけが聞こえるが、ほかの人には聞こえない。

俺は「ごめん、慌ててただけ。よく考えたら何にもないや」と言ってギルマス室に戻る。

「凄いでしょ。これがギルドの契約縛り。だから安心して秘密を言える。ただし、行動で秘密が漏れる事があるから注意ね。これはある意味致し方ないけど。」

なるほど。

「わたしにはあまり言いたくないスキルがあるの。それは妹ちゃんの様子から、チャンくんもそうでしょ?」
「はい。」
素直に言ってしまった。

「やっぱりあるんだ。ポーションケースの中身を見せないように取るのがとても上手だからポーション関係だよね。きっと妹ちゃんあのポーションの取り方ものすごい練習したと思う。」

「バラしちゃダメ。恥ずかしいから。それにそれだけでそこまでわかるんだね。」
恥ずかしそうな妹、そしてアンジェリーナさんの洞察に驚く俺。

「この秘密ルールはわたしにも適用されるから、安心して話していいよ。連携に必要な情報はしっかりと共有したいから。」

「と言っても、私の秘密から言うべきね。」

そう言って一息入れるお姉さま。

「私のスキルは転移スキル。能力は訪れた場所にあらかじめポイントを設置、その場所に瞬時に飛べる。今ポイントしている場所はこのギルマス室、そして浮遊都市ダンジョン近くの物陰よ。他にもあるけどそれは連携と関係なので言わないわ。ダンジョンに入ると設置ポイントに飛べなくなるわ。そのかわり視界の好きな場所に転移できる。そして集中する必要があるけど、物をモンスターの体内に転移させたりもできるわ。『これは部外秘』」

「なるほど、一気に言わないとダメなんですね。」
俺が仕組みを確認する。
「そう、システムが認識できるようにね。最初はっきりさせないと失敗するから。」

「私は秘密のスキルなんてないからパス。」
そうだよね、妹。秘密を作るタイプではないよね。

俺は一呼吸して言い出す。
「俺の能力はポーションを作る能力。ダンジョン通貨かポイントを使って低級ポーション、中級ポーション作る事ができる。その他にも作れるポーションはあるけどそれはユニークポイントも消費しないと作れない。ユニークポイントを使って作れるポーションは高級ポーション、全快ポーション。『これは部外秘』」

「なるほど、さくらちゃんが隠すわけね。ポーション作成能力、私の転移スキルよりもある意味チートスキルね。」
この反応だと、本当のことを言わないで正解だな。

「ちょっとお兄ちゃん、ダンジョン通貨でも作れるって聞いてないよ。」
少し膨れる妹
「妹にも秘密にしていたのね。まだまだ秘密にしていることがありそうね。」
「言えないですよー。」
今のは俺の失言だ。妹は気付いていないが、アンジェリーナさんは気づいたようだ。

「こんな感じで連携で使う秘密は共有する。これもギルドルールよ。」
おお、つめるなアンジェリーナさん。でもこれ以上は連携どころではないから言えません。

アンジェリーナさんも秘密があるので、これ以上は言えないのだろう。
「さて、ひとつ相談。ギルド資金だけど、共有資産を作っておきたいの。このギルドの目的はパーティを組んでダンジョンに行くこと。だからダンジョン攻略で使う装備品や消耗品はギルド費で買いたいの。ダンジョン攻略で手に入れたものはギルドのものそれを取引して、ギルド資金に。そしてギルドへの貢献でダンジョン通貨でギルドメンバーに支払う。この提案のる?」

「「いいと思います。」」
お姉さまはにこやかだ。

「実は今のを見越して倉庫を既に作ってるの。」
そう言って私室とは反対側の扉を開く。

中はだだっ広い部屋で、金属の棚、フックがあり、部屋が冷蔵庫みたいに冷やされている。そして床がタイル、排水溝付き。

「ここで解体もできるようになってるわ。見えないけど、ダストボックスもあるのよ。」

なんと、こんな部屋を用意していたとは。

「資金についてルールを作りたいの。そこでこう言うのはどう?
ギルドメンバーがダンジョンで得たダンジョン通貨は強制的にギルド資金へ。素材、アイテムは全て整理されてギルド倉庫に強制的に格納される。」

なるほど。強制的にをつける事でその契約を強制実行するのか。

よくわからないと言う顔の妹。

「この内容にすると、ダンジョンから出た瞬間に荷物から解放される。という仕組みよ。欠点は例えば道中でポーションを手に入れた場合にせっかくポーションバックに入れたのに出た瞬間消えることね。」

「なるほど、便利になるんだね。」
考えることを拒否した妹。

「そのルールだと、ダンジョン内でギルドメンバーの所有物になった瞬間消えないか?」
俺はアンジェリーナに質問する。

「ダンジョンって持って歩ける量に限界があって。あ、これはシステム的にではなくて人間の体力筋力的にね。それを超えると判断したら、そのアイテムを諦めるしかないのよ。それにダンジョンで死ぬと全ロストするから、ダンジョンから出るまでは決定できないのよ。それにダンジョン内適用でこんなふうにルールの裏を掻くようなことをすると世界に修正が入るのよ。私は一回だけ世界に修正されたことがあるわ。だからある程度幅を持ったルールの方がいいのよ。」

なんかとんでもないことを知った気がする。

「わかりました。ではそのルールにしましょう。」
「賛成ー。」と大きな声でいう妹。

「このようにギルドルール裏をつく方法『これは部外秘』」
お姉さま抜かりない。

「便利ですね、その文言。」
と俺
「でしょ」
とお姉さま

「ところでダンジョン探索興味ない俺の入る意味。」と俺のツッコミには「私の都合。」と妹に返された。

「できたら今の裏を突く方法はこれから入るメンバーにもなるべく言わないで。この秘密を知っただけではこの方法は使えないけど、あまりいい事ではないから。」
俺と妹はうなずいた。

「ギルドの資金に関してはギルドの半数、ギルド倉庫内の素材の現金化は私の独断でいい?あと、ギルドルール追加削除はここにいる3人の同意でいいよね。こういうのは初めに決めておくと揉めないから。」
「大丈夫です。」と俺
「オッケー。」と妹。

「さて最後に、ギルド名を決めたいと思います。」
決めてなかったのかよ。

「私は“アンジェリーナギルド”がいいと思います。ギルマスの名前のギルドあるし。」
妹がいきなり爆弾を打っ込む。

「絶対いやよ。何かあるたびに私の名前が呼ばれるのよ。しかもこのギルド、最果て鍛治ギルドの傘下なのよ。絶対いや。」

やっぱり傘下になったんですね。

「じゃー、浮遊都市ギルド。」
適当な妹。

「浮遊都市ギルドは既にあるわよ。とっても小さなギルドだけどね。」
お姉さまのツッコミがキレてくる。

あると思ったけど、本当にあるとは。

「さくらギルド。」
「私は構わないけど、本当にいいの?」
「いや。」
ネタがなくなりつつある妹。

「めんどくさいから、さくらんぼとか、ゴリラとか、そういう名前にしたら?それか傘下ギルドの名前を借りて、最果て鍛治に因んで最果てパーティギルドとか。」

固まる2人。
「確かに最果ての名前をもらうのはありね。いいんじゃない。少し安易すぎてダサいけど、ある意味丁度いいわ。」
毒舌入ってませんか?アンジェリーナさん。
「それがいい。」と妹。

「それとも“最果てお姉さま”のほうがいい?」
俺の提案に
「なんか生遅れた気分になるから却下。」
というアンジェリーナさん。

「一応言っとくけど、私18歳よ。」
「「えー!!」」

こうしてギルドの名前は“最果てパーティ”ギルドになった。

ちなみに残された父母サムの3人はギルドホールでお茶会をしていました。
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