デュエット・コード

蘿蔔

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プロローグ

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スポットライトの熱は常に体内の熱と混ざり合う。
慢性の倦怠感が視界の端をざらつかせた。これは抑制剤の副作用――誰もがそう思っているし、すばるが自身にそう思わせていた。

楽曲は『ノクターン・コード』。ゴシックE-Popの激しいビートに合わせて、統は完璧な笑顔を浮かべた。メサイアは救世主だ。このステージに立つ限り、Ωの身体が抱えるすべての弱さ、すべての苦痛を、歓声の中に葬り去らなければならない。

だが今日、その自制心が揺らいでいた。

歌い終えた瞬間、著しい疲労感と共に肺を締め付けるような息苦しさが統を襲った。過剰な薬の代償だ。ステージ上で崩れ落ちるわけにはいかない。統は本能的にユニットのトップαである月城 遼つきしろ りょうの方向へ、視線と身体を向けた。

遼はその時、統のことなど見ていないかのように、観客席に深く視線と笑顔を投げかけていた。にもかかわらず、彼の立つ場所からだけ周囲の空気が一瞬で静謐せいひつに変わるのを感じる。彼の放つαフェロモンは舞台の熱を突き破り、統の皮膚の奥へ静かに侵入してきた。

それは、愛でも引力でもない。

「集中力を高めるための、強力なαのフェロモンだ」


統は自分にそう言い聞かせた。遼のフェロモンは、単に全αの中で最も濃く、最も強烈だから、自分のΩの身体が強制的に反応しているだけだ。この感覚は運命の番の繋がりなんかではない。ただの、才能の差だ。


息苦しさが遠のき、集中力がわずかに回復した。統は再び完璧なセンターの顔に戻る。


「お疲れ、すばるくん。最高だった」


隣に並んだリーダーの櫂さんが、そっと声をかけてくる。その視線は心配と信頼に満ちている。

だが、統の身体が求めている安息を知っているのはその視線の先で冷たい光を宿した瞳でこちらを一瞥した遼だけだった。

歓声が響く裏側で、彼らの秘密は今日も静かに舞台上で繰り返されていた。



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