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10話
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そんなある日、遼は統をデートに誘った。統はそれを「フェロモンケアの延長線上の気まぐれな遊びの誘い」と勘違いしながらも出かける。
遼が連れ出したのは、統の大好きなアトラクションがたくさんあるテーマパークだった。統は、いつ振りかのアクティブな場所にあちこちを見て目を輝かせていた。
「統、このジェットコースター統がずっと乗りたがってたやつじゃなかったか? ファストパスあるけど乗る?」
「乗る!!!!!」
久々のテーマパークで統は素直に興奮し、遼の前でだけ見せる無邪気な笑顔を見せて喜んだ。遼もまた、統の心からの楽しそうな様子を見て、終始上機嫌だった。その時間は、まるで二人が誓約書など存在しない、本当の恋人同士であるかのような、甘美な時間だった。
日が傾き、テーマパークを人は都心から一時間ほど離れた海岸沿いの、静かな海のレストランへと向かう。車を走らせてる最中も、統はあのアトラクション楽しかった、とかあの店のスイーツ美味しかったなんて思い出話に花を咲かせていた。
そうして夕日も落ち辺り暗くなった頃、レストランに着いた。
思っていた食事の場所と真反対の場所へ着いてしまって統は思わず「俺こんな高いところ払えるかな…」とこぼしたのが聞こえたのか、遼は。
「今日は俺が払うから大丈夫。ここは予約が取りにくいんだ。今日は、思い切り楽しもうな」
遼は上機嫌で微笑む。そんな遼の様子に「ん?」となりながらも周囲の目を気にしなくていいからか、統はこのプライベート空間を久しぶりに心から楽しんだ。窓からは穏やかな海が見え、統の緊張を和ませる。食事中、遼は統が普段メディアでは見せない、音楽に対する真剣な考えや、幼い頃の夢について熱心に聞いてきた。それは、ただの遊びではなく、統という人間全体を受け入れようとする真摯な態度だった。
食事を終えた後、遼は統を助手席に乗せ、海岸線を走る。空に浮かぶ丸い月が波打ち際に広がるたびに、統の心臓は締め付けられるようにドキドキした。遼が今日見せてくれた配慮とその優しさにもう遊びや義務感のレベルではないと、いつからか気づき始めていた。
(これはきっと、友達同士の遊びなんかじゃない…。でも遼が俺に対してそんなことあり得るのか…?)
高鳴る胸と共に思考を巡らせて落ち着かせているとやがて車は鎌倉と江ノ島が見渡せる七里ヶ浜の静かな高台の展望スペースに停車した。
あたりは既に闇に包まれ、遠くに灯る漁火と、海岸線を走る車のライトが宝石のように輝いていた。潮の香りが、二人の間の張り詰めた空気を揺らす。
遼は車を降り統の側へ回った。海を背にした遼の金色の瞳が、夜景よりも強く統を捉える。
「統」
その声は、以前の時のような冷たさは既になく、むしろ緊張してるのか、熱く震えていた。遼は、誓約書に縛られた関係を打ち破るように、統の手を強く握りしめた。
「まずは今日は俺と遊んでくれてありがとう。」
そう言って深く空気を吸う遼。
そして意を決したようにこちらへ一歩踏み出す。
「俺は、この『契約』が始まった時からお前に対して申し訳ない気持ちでいっぱいだった。統の今後のキャリアを揺るがせるような行為をしていると思っていたからだ。でも、お前とこんなにも親密な関係を続けている内にこの関係を、もう『契約』で終わらせたくない自分に気づいたんだ。」
遼の金色の瞳がこちらを捉える。運命の番であるαが出すその瞳に俺は、この歪な関係になった原因を察した。潮風が吹いて冷たい筈の空気も今は涼やかな風となっていた。
俺たちの間にはきっといろんな障壁があったと思う。それがキャリアだったり、バースだったり。
でも目の前の人間を見るとどうだろうか、これが「運命の番」に振り回されてる者の行動何だろうか?心の中の自分に問い続ける。あの言葉をまだ聞ける準備はまだ出来てない。
だけどそんな俺を置いて遼は切り出す。
「俺は、自分の知らないうちに統のことを一人の男として、ずっとずっと好きだった。そのきっかけが「運命の番」による引き寄せではあるかもしれない。でも俺は俺の全てを統に懸けたい。この先、統の前に阻むものが現れたときに隣で支えるのが俺となり、統が愛す者が俺であり続けるように統のことを死ぬまでたった一人の番として愛してる。どうか、俺の本当の恋人になってほしい」
遼は統が遼のことを義務感で付き合っていると錯覚していることに気づいていた。だから今回のデートを設けた。誰にも渡されぬよう、そして意に反する番の被害に会わぬように。
そしてその告白を着ていた統の頭は真っ白になった。愛されたい。こんなにも真剣な愛を拒絶できるはずがない。だが、脳裏には過去にαに裏切られた記憶が蘇る。
(もう一度信じてみてもいいのだろうか…。)
統は遼の愛を信じたいが、長年のαへの不信感から、その場ではすぐ返事はせず、震える声で言った。
「…考えさせてくれ。今すぐは、答えられない」
遼は悲しげに目を伏せたが、すぐに目を開けふんわりと微笑む。統の決断を尊重し、今何かを言うことは特になかった。帰りの車内では、お互い言葉を発することはなかったが決してその時間は今まで経験した重苦しい空気ではなかった。
統は家に帰り、一人で遼の告白と、自身の長年のトラウマについて、考えを改める時間を過ごした。
遼が連れ出したのは、統の大好きなアトラクションがたくさんあるテーマパークだった。統は、いつ振りかのアクティブな場所にあちこちを見て目を輝かせていた。
「統、このジェットコースター統がずっと乗りたがってたやつじゃなかったか? ファストパスあるけど乗る?」
「乗る!!!!!」
久々のテーマパークで統は素直に興奮し、遼の前でだけ見せる無邪気な笑顔を見せて喜んだ。遼もまた、統の心からの楽しそうな様子を見て、終始上機嫌だった。その時間は、まるで二人が誓約書など存在しない、本当の恋人同士であるかのような、甘美な時間だった。
日が傾き、テーマパークを人は都心から一時間ほど離れた海岸沿いの、静かな海のレストランへと向かう。車を走らせてる最中も、統はあのアトラクション楽しかった、とかあの店のスイーツ美味しかったなんて思い出話に花を咲かせていた。
そうして夕日も落ち辺り暗くなった頃、レストランに着いた。
思っていた食事の場所と真反対の場所へ着いてしまって統は思わず「俺こんな高いところ払えるかな…」とこぼしたのが聞こえたのか、遼は。
「今日は俺が払うから大丈夫。ここは予約が取りにくいんだ。今日は、思い切り楽しもうな」
遼は上機嫌で微笑む。そんな遼の様子に「ん?」となりながらも周囲の目を気にしなくていいからか、統はこのプライベート空間を久しぶりに心から楽しんだ。窓からは穏やかな海が見え、統の緊張を和ませる。食事中、遼は統が普段メディアでは見せない、音楽に対する真剣な考えや、幼い頃の夢について熱心に聞いてきた。それは、ただの遊びではなく、統という人間全体を受け入れようとする真摯な態度だった。
食事を終えた後、遼は統を助手席に乗せ、海岸線を走る。空に浮かぶ丸い月が波打ち際に広がるたびに、統の心臓は締め付けられるようにドキドキした。遼が今日見せてくれた配慮とその優しさにもう遊びや義務感のレベルではないと、いつからか気づき始めていた。
(これはきっと、友達同士の遊びなんかじゃない…。でも遼が俺に対してそんなことあり得るのか…?)
高鳴る胸と共に思考を巡らせて落ち着かせているとやがて車は鎌倉と江ノ島が見渡せる七里ヶ浜の静かな高台の展望スペースに停車した。
あたりは既に闇に包まれ、遠くに灯る漁火と、海岸線を走る車のライトが宝石のように輝いていた。潮の香りが、二人の間の張り詰めた空気を揺らす。
遼は車を降り統の側へ回った。海を背にした遼の金色の瞳が、夜景よりも強く統を捉える。
「統」
その声は、以前の時のような冷たさは既になく、むしろ緊張してるのか、熱く震えていた。遼は、誓約書に縛られた関係を打ち破るように、統の手を強く握りしめた。
「まずは今日は俺と遊んでくれてありがとう。」
そう言って深く空気を吸う遼。
そして意を決したようにこちらへ一歩踏み出す。
「俺は、この『契約』が始まった時からお前に対して申し訳ない気持ちでいっぱいだった。統の今後のキャリアを揺るがせるような行為をしていると思っていたからだ。でも、お前とこんなにも親密な関係を続けている内にこの関係を、もう『契約』で終わらせたくない自分に気づいたんだ。」
遼の金色の瞳がこちらを捉える。運命の番であるαが出すその瞳に俺は、この歪な関係になった原因を察した。潮風が吹いて冷たい筈の空気も今は涼やかな風となっていた。
俺たちの間にはきっといろんな障壁があったと思う。それがキャリアだったり、バースだったり。
でも目の前の人間を見るとどうだろうか、これが「運命の番」に振り回されてる者の行動何だろうか?心の中の自分に問い続ける。あの言葉をまだ聞ける準備はまだ出来てない。
だけどそんな俺を置いて遼は切り出す。
「俺は、自分の知らないうちに統のことを一人の男として、ずっとずっと好きだった。そのきっかけが「運命の番」による引き寄せではあるかもしれない。でも俺は俺の全てを統に懸けたい。この先、統の前に阻むものが現れたときに隣で支えるのが俺となり、統が愛す者が俺であり続けるように統のことを死ぬまでたった一人の番として愛してる。どうか、俺の本当の恋人になってほしい」
遼は統が遼のことを義務感で付き合っていると錯覚していることに気づいていた。だから今回のデートを設けた。誰にも渡されぬよう、そして意に反する番の被害に会わぬように。
そしてその告白を着ていた統の頭は真っ白になった。愛されたい。こんなにも真剣な愛を拒絶できるはずがない。だが、脳裏には過去にαに裏切られた記憶が蘇る。
(もう一度信じてみてもいいのだろうか…。)
統は遼の愛を信じたいが、長年のαへの不信感から、その場ではすぐ返事はせず、震える声で言った。
「…考えさせてくれ。今すぐは、答えられない」
遼は悲しげに目を伏せたが、すぐに目を開けふんわりと微笑む。統の決断を尊重し、今何かを言うことは特になかった。帰りの車内では、お互い言葉を発することはなかったが決してその時間は今まで経験した重苦しい空気ではなかった。
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