ペットになった

ノーウェザー

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クロと野生のヒト

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「悪い、もう少しかかる。様子は?」


『大方避難は終わってる。警察が対応しているが大型のベイ種相手だ、捕獲までは時間がかかるだろう』


「そうか。一人だけか?」


『今の所は。はぐれなのかは分からない』


「了解」


ライージュから連絡が来て数分。


目的地まではまだかかる。


…大型のヒト…クロが怖がらないといいんだが…。


幾らヒトがヒトの子供に襲いかからないとは言っても、飼われているヒトの話だ。


野生のヒトは自らの子供を産ませるために雄が子供を殺す行為も報告されている。


安全の保証は無い…だが、街中のヒトなど放ってはおけない。


腕の中のクロは萩ノ月に渡された最中を美味しそうに頬張っていて呑気なものだ。


……場合によっては、クロに戦ってもらうことになるだろう。


俺がヒトを怪我させれば、愛護団体が煩いだろうしな。


本当、人の命が掛かっていようが粗探しをして食ってかかってくる奴等は、一度同じ立場になればいいものを…いや、それでも理解しなさそうだ。


「りゅーる」


クロは何かを感じ取ったのか、辺りを見渡している。


「んー、んる」


スッと指をさした先には、物陰に身を潜め手に入れたであろう食べ物を貪り食うヒト。


…大きさ的にクロより三回り程大きいな。


クロは細身だがあのヒトは筋肉質なのだろう、手足が太いし肩幅もある。


ここまで逃げて来たのか?


別個体?


「んうぅぅ」


クロは少し肩を上げて威嚇している。


足を止めクロを下ろすと、グルルルと喉を鳴らした。


………勝てるのか、小柄なクロ一人で。


クロはやる気のようだが、怪我はして欲しくない。


どんな病気を持っているかも分からない相手だ、死なれては困る。


「グゥ、ギャルルアアア!!!!」


顔を上げたヒトが大きく吠える。


「グルルル、ガァァァ」


「ギャルルァァァァ!!」


突進をかますヒトを軽く避け、横っ腹に蹴りを入れたクロは、俺から距離を取らず吹っ飛んだヒトに近付いていかない。


……やはりクロにはセンスがある。


あれだけ体格差があるなら、幾らバランスを崩しても普通飛んでいきはしない。


「クロ」


呼べば直ぐに俺の元へ寄ってくる。


野生のヒトは軽く頭を振ると、クロを睨みつけた。


…戦う意思有り、か。


逃げられても困るが。


「グゥゥゥゥ」


「ギャァァルルルアァ!!!!」


「ガァァァ、キュアア!!」


………………。


クロは本当にセンスがあるな。


襲いかかってくるヒトを軽々しく避け、横っ腹や顎に蹴りを入れている。


ヒトらしい戦い方ではないが、体格差がある相手に遅れを取らず、何ら翻弄する程の勢いだ。


野生のヒトは怒り心頭でクロに噛み付こうと躍起になっている。


「ギャルルアアアア!!!!」


「…フンッ…」


鼻まで鳴らして余裕だな。


…だが、野生のヒトは体力が多い。


気絶させられなければ、ジリ貧だろう。


先程から通りの方で警察が捕獲器を設置しているのが見える。


あの大きさの捕獲器なら、入れるのはそう難しくないだろうが…どう野生のヒトを誘導するかだ。


「グゥゥゥゥ……マ?マァァ」


………?


鳴き方が変わった。


捕獲器の近くに居る母さんに気付いたのか?


母さんが手を振ってから「此処」と言わんばかりに捕獲器に指を指す。


「……あーい」


……伝わったのか?


捕獲器に向かって走り出したクロを野生のヒトは逃がさないと言わんばかりに追いかけていく。


「ギャルルアア!!」


クロが速度を落としあと少しで捕えられる、そうヒトが思ったであろう瞬間にクロは高く飛び跳ねた。


勢いそのまま野生のヒトは捕獲器へと吸い込まれるように入って行き、警察は直ぐ様捕獲器を締め鍵をかけた。


野生のヒトは捕獲器を壊そうと暴れるが、網目の小さい檻には爪も歯もたちはしない。


着地したクロは当然の如く俺の元に駆け寄ってフンフンと鼻息をたてている。


「よくやった」


「きゅぅ」


クロを抱き上げ、母さんの元へ向かう。


「ヤダもう、クロちゃんすごいわねぇ。あーっという間に捕まえちゃったわ」


「母さんの意図に気付いたみたいだ」


「それよそれ。指差しただけで伝わるなんて。天才だわ。クロちゃん、今日のおやつはプリンにしましょうね?」


「ぷい?あーい」


ぷいぷいと喜ぶクロだが、これから警察と話がある上、他に野生のヒトが居た場合を考慮して待機して欲しいと言われているから、当分先だな。


「あのジャンプ力…世界記録に挑戦するか?」


「クロは見世物じゃない」


「だが、目測でも3メートル近かったぞ。ヒトの最高値は2メートル弱だ」


「これ以上目立つ理由もない」


「すごい事なんだがな」


「クロちゃんがすごいのは今に始まった事じゃないでしょ」


「それもそうだが…」


「祭り所では無くなったな」


「そうねぇ。まぁ楽しめたから良いわ」


「クロちゃんの活躍も見れたしな」


「ふふ、そうね」







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