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クロの診察
しおりを挟む時間になり診察室に入る頃には、クロはすっかり寝てしまっていた。
「起こした方がいいか?」
「いえ、寝ているなら好都合です。今のうちに出来ることはやっておきましょう。痛みにより暴れる場合がありますので」
予防接種は注射だし、検尿のために管を通したりウイルス検査のために鼻の奥に検査棒を入れたりすると、個体によっては痛みが走るらしく、抗おうと暴れるのだとか。
検査台の上に寝かせ、服を脱がせるとモゾモゾと動き出した。
起きてしまったか?
「んん、りゅ、りゅる・・・ん」
目はあいてないし、寝言か?
服を脱がせた後は医師たちに任せ、近くの椅子に座り、診察台に手を置き頬杖を着いた。
「いやぁ、これだけ触って起きない子は初めてですねぇ」
「そうですね。普通ならもう拘束治具使う所なのですが・・・使わないに越したことはないですからね」
「うんうん、血圧は大丈夫ですね。尿と血液の採取は終了っと、検査棒も問題無いですね。今から予防接種と体温の測定をしますからね」
「起きたら身長と体重、聴力も測って・・・あぁ、寝ている今のうちに心電図をしておかないといけませんね」
ギュウと袖が掴まれるような感覚に襲われ、目をやるとクロと目が合った。
少し眉間に皺を寄せ、不機嫌そうだ。
耳の裏あたりを撫でてやると、また目を閉じた。
口元が少し綻んでいる辺、気持ちがいいのだろうか。
どんどんと作業は進み、大概の事は終わったようだ。
「クロちゃん、起こせますか?」
「既に起きてる」
撫でるのを止めると、クロの目がパチリとあいた。
「あら、いつから起きてたのかしら?」
「注射の前位だな」
「そんな前から?!よく暴れも吠えもしなかったわね」
「かなり大人しい個体ね。驚きだわ」
「ああ、後聞きたい事があって…クロは一日の殆ど寝ているのだが、大丈夫か?」
「大丈夫ですよ。寧ろ気が済むまで寝かせてあげてください。若い個体は食事と睡眠が1番大事ですからね。もちろん運動も必要ですが、見た所この子は筋肉がかなり衰えているようですし、ゆっくり短い距離を歩かせる所から始めましょう。焦らない事が肝ですよ」
なるほど、筋力が無いからあの距離で疲れたのか。
ゆっくり短い距離から、か。
クロの体を起こし、上の服以外を渡す。
寒かったのだろうか、ぴょんと診察台から降りて、いそいそと着だした。
「あらあら、自分で着れるの?本当お利口さんね」
「んー」
下を全て着終わり、上の服を取ろうと診察台の上に手を伸ばすクロを抱き上げ、椅子に座り直す。
「はい、じゃぁちょっと心音聞かせてね。はい、良いよ、服着て。次はあそこに立ってもらおうかな。身長と体重一緒に測っちゃうから」
上の服を着させて言われた場所にクロを立たせる。
「クロ、待てだぞ」
こっちをジッと見るクロは微動だにしない。
「はーい、良いですよ。お疲れ様でした」
クロをもう一度抱き上げ、背中を撫でる。
「そうだ、アレルギー検査の事を聞きたいんだが」
「アレルギー検査ですか?多分結果は来週辺りに届くと思いますよ」
「検査してくれたのか?」
「保護個体や捕獲個体等、野生にて生息していた個体は検査対象なので、保護・捕獲された段階で検査をします。引き取り手に届くのは、2週間位が目安ですね」
「そうか、分かった」
アレルギー、無いといいんだがな。
「じゃぁ、受付で保険証だけ受け取って帰ってね。料金はもう貰ってるから」
「ありがとう」
検査を終え診療室を出ると、クロはまたうつらうつらと船を漕ぎ出した。
食事と睡眠が1番大事か。
好き嫌いや、食べれる量を知らないといけないな。
睡眠、は・・・ホットドールでも買うか?
そうだな、人形をあげるといいとエミュウで言われたし、カット屋の後にでもショッピングセンターで探してみるか。
匂い付きの水石鹸と、雨具、あとは店舗で良い物があったら買おう。
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