ペットになった

アンさん

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クロは利口

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さて、病院は終わったし、次はカット屋だが・・・その前に腹拵えだな。


カット屋の最寄り駅付近は大きなショッピングセンターあって、その近くにヒトと入れる店が何店舗かあったな。


クロの好き嫌いが分からない以上、俺が食いたいものの店に行くか。


そうと決まれば、早速電車に乗るか。


大人1人とヒト1人の切符を買い、通常車両に乗り込む。


「ん、ぐ」


電車の発車音で起きてしまったようだ。


何度か背中を撫でてももう寝る様子はない。


仕方ないか。


キョロキョロと周りを見渡し、俺の顔をジッと見るクロ。


頭を傾げて、また周りを見渡す。


・・・そんなに物珍しいだろうか。


いや、まぁ、初めて乗るし、興味を示すのは当たり前か。


他の乗客と絶対目が合っているだろうに全く唸らないな。


後ろ側にあるヒト専用車両からこちらを睨むヒトに目をやって見つめ合うが、やっぱり吠えたりしない。


これは・・・いい傾向なのか?


医者に聞いておけばよかったか。


一通り見て飽きたのか、また寝る体勢に入ったクロは欠伸をひとつして目を閉じた。


「ね、ねぇ、お兄さん。その子ヒトよね?」


「あぁ、そうだが」


「やだ、やっぱり。目が合っても唸らないから、子供かと思っちゃったわ。ねぇ、少しでいいの、撫でさせてくれないかしら」


「構わねぇが」


キラキラと目を輝かせて、クロの頬をムニムニと摘んだり、頭を撫でる兎人。


「ヒトのほっぺをつついたり、髪を梳くのが夢だったのよ。ほら、ヒトって気に入らないと暴れるし噛み付くから、直には触れなくてねー・・・はぁー、可愛い」


そうか・・・普通のヒトならそうなんだよな。


今の所ヒトらしいのは・・・見た目だけか。


「あらあら、やっぱり目が合っても唸らないわぁ。それに噛み付こうともしないし。あー、私夢が叶っちゃったわー。ありがとうね、お兄さんと、クロちゃん」


・・・クロだと、言った覚えはないが・・・まぁ、髪色で言ったんだろうな。


「クロも嫌がらなかったし、気にしなくていい」


「あ!そうだわ。これあげる」


そう言って兎人がカバンから取り出したのは飴だった。


「ヒトの幼体ってミルクが好きじゃない?だから、クロちゃんも好きじゃないかなって思うの」


「ミルクキャンディか」


確かにクロは水よりもミルクの方が好きっぽかったし、食うかもしれないな。


「やってみるか?口元に持っていけば食うぞ」


「え、それ大丈夫なの?ま、まぁ、これだけ大人しいし・・・大丈夫よね?」


「手に噛み付くことは無いな。寧ろ手を口の中に入れられるの嫌がるから」


「あら、そうなの?はいクロちゃん、あーん」


袋から取り出し、ミルクキャンディを口元に持っていくと、クロは少し頭を後ろに下げ、ミルクキャンディを視認し口を開けた。


「あらぁ、モゴモゴしてて可愛いわぁ」


・・・噛めないんだろうな。


まだ旧歯きゅうしだから。


中歯ちゅうし新歯にいばなら噛み砕けたかもしれないがな。


兎人は、美味しそうに頬を弛め目を細めるクロの写真を2~3枚撮って電車を降りていった。


・・・ヒトとしては珍しく、クロは知能が高いのかもしれない。


    
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