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アンさん

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魔王の側近×猫型獣人? ④

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規則正しい寝息が聞こえた後、俺は何の迷いも無くトオルの口へと口付けをした。


傷付けてしまった手を撫で、幼さの残る顔を見てゆっくりと瞬きする。


俺が知りたいのは、俺の前から消えた理由。


種族なんてどうでも良い。


俺の事を分かってくれて、俺の傍に居て、俺と生きてくれるなら、どんな存在でも構わないから。


でも、何があって今の種族へと変わったのかは知りたい。


その思いで、「トオル」が許可した海馬へと魔力を流し記憶を覗き見た。


そこに映されていたのは、「希望」と「絶望」。


人間として生まれ、家族と共に生き、親友と切磋琢磨し笑い合う姿。


全てを失くし、生きる理由と誇りを奪われ、泣きくれた姿。


そして互いに手を握り、自らの全てを諦めた末の一歩の後、あの獣人として生きてきた姿。


…許せない。


この男共は、俺のモノに、何をしている。


何、気安く話し掛け、いたぶっているんだ。


どうして…俺以外のモノを、刻みつけている。


激情に流され感情の操作が上手くいかなかったが故に「トオル」の手に傷を付けてしまった先程より、更に感情と魔力が溢れ出る。


ひゅぅ、と顔色悪く息を吐きシーツを掴んだ「トオル」を見て、無理矢理全てを抑え込む。


そうだ、今の「トオル」では、耐えられないのだった。


失いたくない。


二度と離れてたまるものか。


「トオル」の記憶全てを網羅し、レオルから届いていた「マコト」の記憶を合わせ、今後を考える。


…少なくとも、「トオル」に手を出した5人組は殺すとして…。


後の奴らはどうしてやろうか…。


ドクリと鳴った心臓に、口角が少しだけ上がった。





「は、はぁ、ぅ」


未だ眠り続けるトオルの小さな性器を緩く扱く。


少し頬を紅潮させ、フルフルと体が震えている。


「ん、んぁ、あ」


ぽやぽやと寝惚けているトオルは、どれだけ口付けをしても怒りはしない。


1度ならず2度も死に、ここへと帰ってくる約束を守った人。


ほんの少し魔力を流すだけで怪我をしてしまう程弱くなり、それでも俺の目を見てくれる芯のある人。


嬉しい。


また会えたから。


怒ってる。


何も言わずに俺の目が届かない所へ行ってしまったから。


悲しい。


俺を…頼ってくれなかったから。


ギュウと性器を握り込むと、眉間に皺を寄せたトオルと目が合った。


「おはよう、トオル」


「んぇ、お、おはよ」


膝を擦り合わせ、体をモゾつかせたトオルは、下肢を見て顔を更に赤くした。


「は、え?」


「消毒しようね、トオル」


「え、え?」


逃げようとする腰を抱き寄せ、口付けをしながら性器の先端を引っ掻くと、トオルは目を見開いてビクリと身体を固めた。


「ん、んんん」


自分から触らないと言った通り、手をさ迷わせては握り込み体を捻り逃げようとする姿を見て、更に抱き込む力を込める。


「ダメだよ、トオル」


は、は、と短く息を吐くトオルを見下ろし、結局シーツを掴んだ手を上から握る。


「他の奴の事は、忘れようね」






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