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妖怪×妖怪 大天狗×オニ ④
しおりを挟む「何故、と聞いておる」
ポポポ、といくつもの鬼火が現れる。
「落ち着け、アオ」
「アゼツは口を閉じていよ。我は今、我の敵と話しておる故」
アゼツの足の上に小鬼の暁を乗せ、ギリっと歯軋りする。
部屋を充満させるは、オニの妖力。
ズンと重く感じるのは、濃度が濃い故に発生する圧力か、本人が発する殺気か。
「そ、そんな敵だなんて…それに怒らずとも…私達は、ただ話し合いに来ただけでして」
そう汗を滲ませながらガタイのいい雄型の鬼が、視線をさ迷わせながら居を正した。
「話し合い、のぉ。では、聞いておこうではないか、言い訳を」
「何故、その様に決めつけるのでございますか?!」
雄型の鬼の隣に座っていた雌型の鬼が口を開いた瞬間に、辺りを漂っていただけの鬼火が雌型の周りに集まった。
「汝は口を開くでない。我が許可せん者がこの部屋に入りよって…即刻その首はね飛ばされぬかったこと、感謝せよ」
集まった「蒼い鬼火」に、雌型は口を閉ざし顔を青ざめさせる。
オニや鬼は鬼火で相手の強さを測る事が出来るが故に、自分より強者のモノに鬼2人は身を縮こまらせた。
「我の前に居ゆるだけで、腹立たしい。早う訳を話せ」
「手違いと言いますか、気が早ったと言いますか…」
「我の番に「渡鬼」を付けておいて、左様な理由で有れば、我の気も理解出来りうるな?」
「申し訳、ありません」
頭を下げた雄型の鬼と、ただ俯くだけの雌型を交互に見る。
「汝の子は、納得しとらんようだが?」
ボゥ、と鬼火がまた1回り大きくなりユラユラと揺れる。
「知っておるか?渡鬼を付けて良いのは番のみよ。アゼツの番は今我1人。意味が、分かりよるか?」
「だ、って」
「汝がアゼツの番になるのは、条件を満たせば我も文句は言わん」
「…え?」
「は?」
呆気に取られる鬼2人を見て、更に妖力が放たれる。
「天狗族は一夫多妻制故そこは気にせん。我が憤怒しておるのはそこでは無い」
伸びてきたアゼツの手を振り払い、鬼達の前で頭を下げ続ける渡鬼を見てから雌型を見る。
「この様な弱き渡鬼にしか使えん鬼が、アゼツのお子を産める訳が無かろうが。他の雌型はどうしたのだ。何故…何故、この様な弱者しか連れて来ん」
「じゃ、くしゃ」
「少なくとも我の暁から1本取れる鬼を連れて来よ。無理であれば、そこの雌型、強うなれ」
「え、え?」
「そんに弱くては閨には耐えれん。身を鍛えよ」
「ね、ねや…」
「雌型であれば我より弱くとも構わんが、暁に勝つる者しか認めん。雄型であれば我より強うなくてはこの座は譲らん」
立ち上がり、部屋を隔てる襖を開け外へ出る。
「鬼よ、汝の子は弱すぎる。アゼツのお子を宿すにはもっと強くなければならん。さもなくば、汝の子はお産で死ぬぞ」
そう言い残し、いつもの湯殿へと足を向ける。
久々に、里以外の鬼を見たが…やはり、弱い。
最上位種の大天狗の子を宿すのであれば、少なくとも上位種でなくてはな。
ぽてぽてと隣を歩く小鬼の暁達を連れ、兄上を思い出す。
強き者の子を宿し、己より強くなるであろう子を産み未だ床から上がれぬ兄上。
オニは子を宝とする。
だから、知らなかった。
里の外では、「子食い」が行われていることを。
自らの命より、子の命。
他のオニの子も、里内であれば皆の子。
鬼族がどうかは知らない。
だが、強者の子を産むのはやはりそれだけの負担がかかる。
あの雌型では、安定期まで持つかも分からん。
そんな者を番にした所で、番の役目を果たせん。
…あと百年、早く生まれていれば…己が子を孕めたのに。
百年の年月が過ぎる頃には、アゼツには何人番が居るのだろう。
はぁ、と息を吐き出し、曇っている空を見上げた。
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