if物語

アンさん

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人間×人間 将軍×元敵軍人 ⑧

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「だーかーらー、俺はお風呂に行きたいの!」


「ダメだ!それにこんな往来で言うことじゃない!」


「お風呂はいつ入ってもいいじゃねーか!」


「良くない!こんな時間に店はやっていない!」


「やってる!俺はちゃんと開店時間見てきてるんだ!」


「やってても入っちゃダメに決まってるだろうが!」


「何でだよ?!お風呂に年齢制限があるってか?!」


「あるよ!当たり前だろ?!」


「そんなわけあるか!小さい子供だって入ってるんだから!俺の何がダメなんだよ!」


「なっ、それはどこの店だ!取り締まる事になる!」


「何でだよ!タダのお風呂にそんな大袈裟にならなくても良いだろうが!」


「タダ?!騙されている!正気に戻れ!」


「正気も正気だ!喧嘩売ってんのか?!」


「いいか、世の中には良くない人間だって存在するんだ。特にお前は目立つんだから!」


「お風呂に入りたいだけなんだって!何でそんなに止めるんだよ?いいじゃねぇか!」


「頼むから!諦めてくれ!」


「嫌だ!俺は昨日の夜から行くって決めてたんだ!だから早起きまでしたんだぞ!」


「逆になんでそんなに行きたいんだ?」


「おい、リーウェン」


「まぁまぁ、話ぐらい聞いておこうよ。それで?どうして?」


「そりゃぁ一汗流す為だろ?」


「ほら!もう!」


「なんだよー!お湯被ってお湯に浸かる!これだけの何が悪いっていうんだ!」


「「ん?」」


「待て待て、お前、どこに行くつもりだ?」


「お風呂に決まってるだろ!あそこ!もう暖簾出てんじゃねぇか!」


「風呂屋にお風呂は無い!」


「じゃぁアレは何屋なんだよ!」


「風呂屋だよ!」


「一緒じゃねぇか!」


「一緒じゃねぇよ!」


「待て待て、ソラウィス?ソラウィスはお風呂に行きたいんじゃないのか?」


「そうだ!朝からお湯に浸かるなんて贅沢だろう?」


「お風呂と風呂は別物だぞ?」


「……うん?」


「お湯に浸かるのが風呂、欲に浸かるのがお風呂だ」


「……うん?何?違うの?」


「そっかー……流暢に言葉喋ってるから忘れてたけど、ソラウィスは外国出身だったね」


「あー、だから通じなかったのか……いいか、ソラウィス。お前が行きたいのは風呂だ。お風呂は違う。今度から気を付けろ」


「え、そうなの?分かった。覚えとく」


「よし……いや全然良くねぇ!ソラウィス!行くぞ!」


「どこに?!俺風呂に」


「面白い所連れてってやるから!今はついてこい!な?」


「面白い、所…風呂に…でも面白い…うぅん、分かった!どこだ?!風呂は後で入ればいいしな!」


「よし!こっちだ」






「成程な」


「なぁ!面白い所ってどこだ?!ここいつもの場所じゃねぇか!」


「もうちょっと待ってくれ。なので、連れて来た次第なのですが…」


「相分かった。ソラ」


「なんだよー?」


「風呂へ行きたいのだろう?今から向かおう」


「え、面白い所は?遊ばねぇの?どこ?どこ行くんだよ?」


「軍上層部しか入れない風呂へ案内しよう。蒸し風呂や泡の出る風呂、滝行やつぼ湯もあるぞ」


「え、何それ?俺入っていいの?行って大丈夫?」


「俺が居るのに入れないとでも?」


「あっは、さすが将軍!よっしゃ、行くぞ!面白そうだ!……それで、他の面白い「行ってらっしゃい」おう」






「あはは、何だこの風呂ちっちぇ!」


「つぼ湯は一人用の風呂だ」


「【サウナ】だ!【サウナ】があるぞ!」


「そこは蒸し風呂だ」


「おおおお、強い!強いぞ!俺も頑丈な体が欲しい!筋肉が欲しい!」


「滝行は煩悩を消す為のものだぞ」


「ああああああああぁぁぁ!あははは、流れさてしまうのがいいな!よしもう一度!」


「そうやって遊ぶものでは無いのだが…」


「うぉおお、露天だ!露天風呂だ!俺もあそこ入りたい!」


「ダメだ。露天風呂は今…改装中だ」


「おお!もっと使いやすくなるのか!ああー、いつか俺も露天風呂に入りたい。野外の温泉とは違うのだろう?」


「いつか入れてやる。そうだな、野外の…野外?おいまさか天然温泉に入ったのか?」


「おうよ!水風呂も嫌いじゃねぇけど、やっぱあったけぇ風呂が一番だ!」


「なんということだ…野外で裸になるなど…」


「大丈夫!流石に丸腰じゃねぇし!」


「そういうことではない!」






「なぁ、花にも意味あんのか?」


「急にどうしました?」


「いやー、ほら。風呂とお風呂は意味が違うんだろう?花とお花でも意味が違うのかなーって」


「そうですね。かなり異なりますね」


「そっかー」


「何だ?誰かに何か言われたのか?」


「ん?ああ。お前はお花売らねぇのか?って前に誘われてよ。いや、そんな道端に咲いてる花売ってどうすんだ?二束三文だろ?って思って、高く買ってくれんの?って聞いたらどっか行っちまったんだよな。なーんか引っかかっててさー…成程、意味が違ったのかー。で?何が違うんだ?」


「あー…花はそのまま花だが…お花っていうのは…なぁ…」


「何だよ?お風呂と一緒か?お風呂でお花売ってんのか?」


「っぐ……まぁ、そうだ。お花っていうのは、体っていう意味だ」


「はぁーん、体を売る、ねぇ。案外一番稼げるかもなぁ…」


「おい」


「何だよ?肉体労働だろ?力がありゃ、稼げそうじゃねぇか」


「そっちじゃない…体を売るっていうのは…そう、あの、あれだ。色欲の方だ」


「…成程。春を芽吹かせる方か。難しいなー、言葉ってのは」


「アチラでは春を芽吹かせる方と言うのですか?」


「春を芽吹かせる、って言うんだ。子供ができる行為だからな」


「子供ができるから、ですか」


「孤児の殆どが春生まれになるっていうのが元だな。正確な誕生日は知らねぇからな、孤児ってのは。だから纏めて春生まれ、春に芽吹いたとか…そんな意味合いだった筈だ」


「そう、ですか」


「男同士だと時時雨ときしぐれ、女同士だと時想ときおもいって言うらしい。よく分からねぇが、語呂が良いから覚えてただけで、理由は知らねぇぞ」


「同性同士の文化があるのですか?」


「まぁ…ほら。戦争中は気分が高揚して男同士で慰め合うのはよくある話だろ?そんで、戦士を家で待つ女達も欲を持て余して…って…聞いた気がする。俺は常に前線で戦ってたからそんな余裕ねぇし、寧ろそんな余裕があんなら予備戦力とかじゃなくて本戦に出しゃ良かったのにな…何してたんだか。ナニしてたんだろうなぁ」


「ソラ、今はどうしてるんだ?」


「んえ?俺?ってか、ガーディもこういう話するんだ?意外。そーだなー、俺食欲と好奇心に全振りしてるから、適当に抜いてるな」


「適当に…」


「正直色欲はほぼ無い。自慰も面倒だしな…何なら美味い飯が目の前にあったらすぐ萎える位には興味も無い」


「そうか」


「一生童貞貫けるな。あははは、誰か相手してくれたらラッキー位は思ってるしー?なーんて、あははは」


「まぁ、童貞は悪い事では無いですし、ね」


「あっは、なぁもう一個聞きてぇんだけど。男の処女って何だ?」


「はい?」


「女の処女は分かるぞ。云わばハジメテって事だろう?男の処女ってのは何だ?」


「えっと…男同士の…受け側が迎えるもので…なんというか…」


「ケツ使うんだろ?だったらケツで交尾するのか?交尾したら処女喪失か?」


「また堂々と…少しは恥じらいを持てよ。それに、交尾じゃなくて性交って言え」


「は?セイコウ?まーた難しい言葉じゃねぇか。それに、俺は知らない事を知ろうとしてるだけだろ?何が……あれ?うん?俺、処女喪失済みか?童貞非処女か?」


「「「あ?」」」


「あははは!男としてあるまじき事態だな!これは本格的に相手探さねぇと行き遅れそうだ」


「ソラ…お前…」


「あははは!大変だな!よっし、いっちょ酒場にでも行って、相手見繕うか?そうだな、それがいい!」


「待て!待て!どこに行くつもりだ?!」


「どこって、ハッテン場だろ?」


「なっ?!いいかソラウィス。ソラウィスはまだ若い。焦らなくても大丈夫だ」


「えー?そうか?でもなー、思いたったら吉日だ…って、この国に諺があるだろ?」


「ソラ。急いては事を仕損じる、とも言うんだ。座りなさい」


「あっれえー?うん?言語は難しいな…」


「それで、処女喪失とは?」


「ああ!一回残敵掃討が面倒で捕まって時間稼ぎしようとしたらよ、まさかおっぱじめるとは思わねぇじゃん?いやぁ、あん時はヤバかったなー」


「な、何を…された?」


「えー?服ひん剥かれて、縛られて、目隠しされた?」


「……っ、っ…」


「まぁ、指入れられて気持ち悪かったから皆殺しにしたんだけどな?あはは!あははははは!指一本は処女喪失に入らねぇの?入るよな?あはは!」


「ゆび、いっぽん」


「もう跡形もなく吹っ飛ばしたから、だーれも知らねぇけどな?捕虜になりましたー、なーんて冗談でも言える雰囲気じゃなかったしー」


「ソラウィス、洗浄はしたか?」


「戦場?戦場をする?え、何?分かんねぇ」


「洗ったか、と聞いている」


「は?洗う?ケツを?大丈夫!元々ケツは汚ぇから!」


「ソラ?」


「え、え?何だよ?嫌だぞ浣腸は」


「浣腸を知っていてくれて嬉しいです。アチラへ行きましょうか」


「待て待て、もう数年前だぞ?昨日今日ならいざ知らず…え、本気か?嘘だろ?ま、俺帰る!予定あったから!じゃ!」


「逃げんな」


「あ゙……____……」






「ひぃん、酷い、酷い」


「ソラウィス殿。さぁ、ご飯にしましょう」


「俺今腹痛いの。お前らのせいで」


「ああ、治療魔法をかけますね。今日はソラウィス殿の好きな鹿肉とハニーディールを用意しましたよ。あと、最近有名なアイスも買ってあります」


「!何だよ、それを早く言えよー!早く!早く行こうぜ!飯!鹿肉!酒!アイス!」


「ああ、あと、新鮮な魚も入っていると聞きました」


「魚!塩焼き食べたい!煮付けもいいな!」


「度数の高いお酒も後でお持ちしますね」


「【ワイン】!【ワイン】飲みたい!」


「わいん、とはなんだ?」


「え、無いのか?ウェミールとかライヲルンとか!」


「ガッシュじゃダメなのか?」


「ガッシュ!ガッシュもいいな!【カクテル】もいいぞ!【カクテル】はお酒とお酒を混ぜたお酒だ!」


「酒を混ぜるか…面白い発想だな」


「早く行こうぜ!なぁ!めーし!!」



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