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30 悲しい神様
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アンジュが神で、この世界を整え、今この状況を創り上げた。
私は目まぐるしい情報の流入量に目眩がしてきたが、アンジュの話を聞き漏らすまいと彼女をじっと見つめた。
「アンジュ……」
「私は神として生まれ、沢山の人の願いを見てきた。
利己的、利他的、刹那のものから永久を願うもの、美しいと思う感情から醜いもの、
ありとあらゆるものをね。
人は醜い、理解できないと思うこともあったが、
そういった強い感情はいつだって私を引きつけてやまなかった」
アンジュが私の頬を撫でる。
「君にも、その感情が見えた。
でも、君の感情の向かう先はこの世に存在しないものだった。
君は理解など求めてなかった。
ただ否定しないでほしいと願っていた。
それが不思議だった。
存在しないものにここまで執着できるのは何故なのか、と。
私は、そのシルヴィと言う存在が、羨ましかったのかもしれないな」
アンジュが穏やかに語る。
私はその顔をじっと見ながら思う。
もしかしたら、アンジュは寂しかったのかもしれない。
永い時、在り続け、祀られはしていても、誰にも認知してもらえない、悲しい神様。
シルヴィと言う架空の存在にさえ、
意味不明な程に情熱的な愛を垂れ流す人間がいるのに、
と思ったのかもしれない。
感情が久しぶりに動いたというのは、そういう訳もあったのかも。
私はアンジュにそっと抱きついた。
「私、最初は完全にシルヴィたんになってた。
自分がやっていたゲームのことも、
自分が大好きだったキャラになってることも気づいてなかった。
でも、前世を思い出す前も、思い出してからも、
アンジュのことは、アンジュとして、ずっと大好きだったよ。
聖女だからとかじゃなくて、不思議で面白いアンジュが好きなの」
「シルヴィ……」
「アンジュが神様だってわかっても、気持ちは変わらない。
アンジュと過ごせてとても楽しかった。
シルヴィを…私を信じてくれてとても嬉しかった。
出来事はゲームのシナリオだったかもしれないけど、この気持ちは本心です」
アンジュが、目を細めて呟く。
「本当の気持ち、真心というのは、温かいのだな……。
確かに、感じる」
「うん……」
私はアンジュをもっと強く抱き締めた。
永い時を経て今、こうして心を通わせられた事を、
少しでもわかってもらいたかった。
永い永い間、感情が麻痺するほどの寂しさを、
少しでも癒せれば嬉しい。
どれくらいそうしていたかはわからないが、遠慮がちに聞こえた声で現実に戻される。
「アンジュ? シルヴィ嬢?」
あ、クローヴィスだ。
存在がないものになっていたわ。
そういえば、クローヴィスたちはゲームの登場人物だけど、
どうなってるんだろう。
ちらりとアンジュを見ると、訳知り顔で頷く。
「彼らなら、私が手を加えているが、げぇむが終わったからただの人だよ。
元々この世界に存在する」
「アンジュが好きなのはゲームだからなの?」
「多少はね」
「……エレオノーラ様は?」
「ああ、損な役回りだったから気になる?
あれは私が作った存在だ。
あの偽物より格段に性能が良い。
ついでにジャンヌ嬢もね。
流石に、嫌がらせをタイミングよくさせるのは難しいからな」
「えっと?」
「げぇむのセリフを話すことで筋書き通りに動くようになっていたのだよ。
あとは色々な制限を設けたり、うまく誘導すればだいたい上手く行っただろう?」
「アンジュ、どうなるかは知らないって……」
「げぇむの全ては1度頭に入れたけど、わかっていたら面白くないだろう?
設定したあとは記憶を封印していた。
だから展開は知らないけど、すぐ先で何をすべきかは解ってたよ。
何をしたらげぇむの通りに動くのかってことだから、
君ほど未来が読めてた訳ではないけどね」
「むむ……」
「まぁ、細かいところは気にするな。とりあえず全部私の仕業だし」
ニカッと笑うアンジュに、私も諦めた。
「まあ、アンジュだもんね……」
私は目まぐるしい情報の流入量に目眩がしてきたが、アンジュの話を聞き漏らすまいと彼女をじっと見つめた。
「アンジュ……」
「私は神として生まれ、沢山の人の願いを見てきた。
利己的、利他的、刹那のものから永久を願うもの、美しいと思う感情から醜いもの、
ありとあらゆるものをね。
人は醜い、理解できないと思うこともあったが、
そういった強い感情はいつだって私を引きつけてやまなかった」
アンジュが私の頬を撫でる。
「君にも、その感情が見えた。
でも、君の感情の向かう先はこの世に存在しないものだった。
君は理解など求めてなかった。
ただ否定しないでほしいと願っていた。
それが不思議だった。
存在しないものにここまで執着できるのは何故なのか、と。
私は、そのシルヴィと言う存在が、羨ましかったのかもしれないな」
アンジュが穏やかに語る。
私はその顔をじっと見ながら思う。
もしかしたら、アンジュは寂しかったのかもしれない。
永い時、在り続け、祀られはしていても、誰にも認知してもらえない、悲しい神様。
シルヴィと言う架空の存在にさえ、
意味不明な程に情熱的な愛を垂れ流す人間がいるのに、
と思ったのかもしれない。
感情が久しぶりに動いたというのは、そういう訳もあったのかも。
私はアンジュにそっと抱きついた。
「私、最初は完全にシルヴィたんになってた。
自分がやっていたゲームのことも、
自分が大好きだったキャラになってることも気づいてなかった。
でも、前世を思い出す前も、思い出してからも、
アンジュのことは、アンジュとして、ずっと大好きだったよ。
聖女だからとかじゃなくて、不思議で面白いアンジュが好きなの」
「シルヴィ……」
「アンジュが神様だってわかっても、気持ちは変わらない。
アンジュと過ごせてとても楽しかった。
シルヴィを…私を信じてくれてとても嬉しかった。
出来事はゲームのシナリオだったかもしれないけど、この気持ちは本心です」
アンジュが、目を細めて呟く。
「本当の気持ち、真心というのは、温かいのだな……。
確かに、感じる」
「うん……」
私はアンジュをもっと強く抱き締めた。
永い時を経て今、こうして心を通わせられた事を、
少しでもわかってもらいたかった。
永い永い間、感情が麻痺するほどの寂しさを、
少しでも癒せれば嬉しい。
どれくらいそうしていたかはわからないが、遠慮がちに聞こえた声で現実に戻される。
「アンジュ? シルヴィ嬢?」
あ、クローヴィスだ。
存在がないものになっていたわ。
そういえば、クローヴィスたちはゲームの登場人物だけど、
どうなってるんだろう。
ちらりとアンジュを見ると、訳知り顔で頷く。
「彼らなら、私が手を加えているが、げぇむが終わったからただの人だよ。
元々この世界に存在する」
「アンジュが好きなのはゲームだからなの?」
「多少はね」
「……エレオノーラ様は?」
「ああ、損な役回りだったから気になる?
あれは私が作った存在だ。
あの偽物より格段に性能が良い。
ついでにジャンヌ嬢もね。
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「えっと?」
「げぇむのセリフを話すことで筋書き通りに動くようになっていたのだよ。
あとは色々な制限を設けたり、うまく誘導すればだいたい上手く行っただろう?」
「アンジュ、どうなるかは知らないって……」
「げぇむの全ては1度頭に入れたけど、わかっていたら面白くないだろう?
設定したあとは記憶を封印していた。
だから展開は知らないけど、すぐ先で何をすべきかは解ってたよ。
何をしたらげぇむの通りに動くのかってことだから、
君ほど未来が読めてた訳ではないけどね」
「むむ……」
「まぁ、細かいところは気にするな。とりあえず全部私の仕業だし」
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