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閑話 女神の懺悔
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ルルシアという神は魔術を司る神の後継として存在する女神だ。しかし彼女の持つ躯は金髪金眼。魔術の研究にとことん向かない躯であった。
創造神に後継として指名を受けその座に就いてすぐに言い渡された「人間の使う召喚術を無効化してこい」という命令は当時のルルシアにとって不可能な命令であった。先代が堕天して魔王になり勇者に倒された。それでも先代は先代、ルルシアはルルシアで意識や知識が独立している。そもそもの話、召喚術は創造神のみが扱える禁術扱いで、その存在すら創造神に言われるまでルルシアは知らなかったのだ。勿論、研究していた神など先代しかおらず資料が残っているはずもない。途方に暮れるルルシアであったが、とあることを思いつく。召喚術やってる王国の人間なら召喚術について詳しいだろうし研究しやすくね?と。出来ることなら黒髪黒目の魔術向きの身体で王国に対して不信感のある人間がいい。そうしてルルシアが見つけた身体がザイン・ヴィリアーズという元宮廷魔術師の男。22歳。貴族のような名だが、縁は切れているようだ。独身で一人山暮らし……魔術からは離れた生活だが、日常で使う癖は抜けていない。詠唱魔法特有の粗も見えない。決めた、この男にしよう。そうしてザインに近付いたルルシアだったが、結局すぐに身体を奪ってしまうのではなく、ザイン本人に研究をさせることにしたのだった。そのほうが自分でやるよりも効率がいい。そう気付いたのだ。ザインに自らの力の一部を分け与え、数十年が経つ。ルルシアの提案ではあったが、そこそこに使えそうな異世界人の弟子もついた。今回こそ、召喚術の無効化に成功できるかもしれない。そんな気持ちで心が浮足立つ。けれど、ルルシアの心情はそれだけではない。
(はぁ……自分のことながらこんなことを考えてしまう自分が憎いわね……)
ザインと長く共にいて、情が湧いた。もう彼の身体を乗っ取りたいなんて、そんな気持ちはルルシアには微塵も残っていない。ザインとルナが幸せな生活を送れるようになって、そこに自分がちょっとばかし茶々を挟むような、そんな生活が出来たらどんなにいいか、とルルシアは想像する。しかしそれを邪魔するのが自分の本能だ。
(ザインはザインのまま生きていたほうが幸せなのに、時間が掛かりすぎたのよ……私の力があの子を侵食してる)
力には代償が伴う。ルルシアがザインに与えた不老不死の力もその一つだ。生と死があるという人間の原則を変えてしまう大きな力は、長い時間をかけて彼を人間という形から遠ざけていった。
(これじゃあ私も、先代とやってることは変わりないじゃない……人を人ならざるものに変えちゃうなんて)
ルルシアはザインを眺めながら深い溜息をつく。事が片付いてから彼に向き合って真実を伝えなければならない。彼に失望されるかもしれない。そんな日が来てほしくはないと思いながらも、ルルシアは一人考えるのだった。
創造神に後継として指名を受けその座に就いてすぐに言い渡された「人間の使う召喚術を無効化してこい」という命令は当時のルルシアにとって不可能な命令であった。先代が堕天して魔王になり勇者に倒された。それでも先代は先代、ルルシアはルルシアで意識や知識が独立している。そもそもの話、召喚術は創造神のみが扱える禁術扱いで、その存在すら創造神に言われるまでルルシアは知らなかったのだ。勿論、研究していた神など先代しかおらず資料が残っているはずもない。途方に暮れるルルシアであったが、とあることを思いつく。召喚術やってる王国の人間なら召喚術について詳しいだろうし研究しやすくね?と。出来ることなら黒髪黒目の魔術向きの身体で王国に対して不信感のある人間がいい。そうしてルルシアが見つけた身体がザイン・ヴィリアーズという元宮廷魔術師の男。22歳。貴族のような名だが、縁は切れているようだ。独身で一人山暮らし……魔術からは離れた生活だが、日常で使う癖は抜けていない。詠唱魔法特有の粗も見えない。決めた、この男にしよう。そうしてザインに近付いたルルシアだったが、結局すぐに身体を奪ってしまうのではなく、ザイン本人に研究をさせることにしたのだった。そのほうが自分でやるよりも効率がいい。そう気付いたのだ。ザインに自らの力の一部を分け与え、数十年が経つ。ルルシアの提案ではあったが、そこそこに使えそうな異世界人の弟子もついた。今回こそ、召喚術の無効化に成功できるかもしれない。そんな気持ちで心が浮足立つ。けれど、ルルシアの心情はそれだけではない。
(はぁ……自分のことながらこんなことを考えてしまう自分が憎いわね……)
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(これじゃあ私も、先代とやってることは変わりないじゃない……人を人ならざるものに変えちゃうなんて)
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