12 / 12
おまけ
しおりを挟む
「……でさ、聞いてよ凪。あいつ、俺の誕生日に何持ってきたと思う? 某超高級ブランドの、成金が持つようなクロコダイルの財布だよ。俺、同僚の前でアレ出すの恥ずかしすぎて無理なんだけど!」
「あはは、相変わらずズレてるな~!あの人、高いもの買えば正解だと思ってるとこあるもんね。馬鹿だな~!」
駅前の居酒屋。湊と凪は、もはや「元番」だの「今の恋人」だのという垣根を飛び越え、完全に『七條鷹志被害者の会』と化していた。
「だろ? しかもさ、この前なんて『たまには俺が作る』とか言ってキッチン立ってんの。出てきたのが……あれ、何て言えばいいんだろ。真っ黒な炭の上に、なぜか高級なトリュフが乗ってる物体。マジで意味不明!」
「ひどい! 料理のセンス壊滅的なんだよね。俺の時も、お粥作ろうとして鍋ごと燃やしかけてたもん。あの人は一生キッチンに入っちゃダメな人だよ」
「本当それ! ……まあ、そのあと凹んで犬みたいにシュンとするから、結局俺が作り直して一緒に食ったんだけどさ」
「はいはい、ごちそうさま。文句言いながら、結局湊も甘いんだから」
凪がニヤニヤしながらカシスオレンジのグラスを傾ける。二人のテーブルには、空になったジョッキと、笑いすぎて熱を帯びた空気が満ちていた。
「湊もさ、なんだかんだ幸せそうで良かった」
「……あ、凪の過保護な『彼氏』がお出ましみたい」
軽トラが止まったのが見えた。ガラリと戸が開き、不機嫌そうな、けれど凪の姿を見つけて一瞬で目元を緩めた大和が入ってくる。
「おい、凪。飲みすぎだ。……早坂さんも、ずいぶん出来上がってるな」
「大和!今、あいつの悪口で盛り上がってたのに~」
凪がふにゃふにゃと大和の腕に絡みつく。大和は呆れ顔で凪の頭を撫で、湊に視線を向けた。
「早坂さん、あんたも送ろうか?」
「ううん、大丈夫。あいつ呼ぶから」
「……そうか。じゃあ、その前に俺たちは帰るよ。あいつの顔を見ると、つい殴りたくなるからな」
大和は凪をひょいと抱え上げるようにして、さっさと店を出て行った。「またねー!湊!」と手を振る凪の声が夜風に消えていく。
一人残された湊は、スマホを取り出し、お決まりの番号をタップした。
「……もしもーし。あ、俺。……うん、飲みすぎた。迎えに来てよ」
『どこだ? 今すぐ行く。動かずに待っていろ』
電話越しでもわかる、鷹志の必死なトーン。
「駅前の、いつもの店。……あと、帰りにコンビニでアイス買いたい。チョコのやつ。……え、ハーゲンダッツ? 違うって、もっと安っぽいやつ! あんたは本当、すぐ高い方に逃げるんだから……」
文句を言いながらも、湊の口元は緩みっぱなしだった。 数分後、息を切らして店に飛び込んでくるであろう、スーツ姿の不器用なエリートを想像しながら、湊は残りの酒をぐいっと飲み干した。
「あはは、相変わらずズレてるな~!あの人、高いもの買えば正解だと思ってるとこあるもんね。馬鹿だな~!」
駅前の居酒屋。湊と凪は、もはや「元番」だの「今の恋人」だのという垣根を飛び越え、完全に『七條鷹志被害者の会』と化していた。
「だろ? しかもさ、この前なんて『たまには俺が作る』とか言ってキッチン立ってんの。出てきたのが……あれ、何て言えばいいんだろ。真っ黒な炭の上に、なぜか高級なトリュフが乗ってる物体。マジで意味不明!」
「ひどい! 料理のセンス壊滅的なんだよね。俺の時も、お粥作ろうとして鍋ごと燃やしかけてたもん。あの人は一生キッチンに入っちゃダメな人だよ」
「本当それ! ……まあ、そのあと凹んで犬みたいにシュンとするから、結局俺が作り直して一緒に食ったんだけどさ」
「はいはい、ごちそうさま。文句言いながら、結局湊も甘いんだから」
凪がニヤニヤしながらカシスオレンジのグラスを傾ける。二人のテーブルには、空になったジョッキと、笑いすぎて熱を帯びた空気が満ちていた。
「湊もさ、なんだかんだ幸せそうで良かった」
「……あ、凪の過保護な『彼氏』がお出ましみたい」
軽トラが止まったのが見えた。ガラリと戸が開き、不機嫌そうな、けれど凪の姿を見つけて一瞬で目元を緩めた大和が入ってくる。
「おい、凪。飲みすぎだ。……早坂さんも、ずいぶん出来上がってるな」
「大和!今、あいつの悪口で盛り上がってたのに~」
凪がふにゃふにゃと大和の腕に絡みつく。大和は呆れ顔で凪の頭を撫で、湊に視線を向けた。
「早坂さん、あんたも送ろうか?」
「ううん、大丈夫。あいつ呼ぶから」
「……そうか。じゃあ、その前に俺たちは帰るよ。あいつの顔を見ると、つい殴りたくなるからな」
大和は凪をひょいと抱え上げるようにして、さっさと店を出て行った。「またねー!湊!」と手を振る凪の声が夜風に消えていく。
一人残された湊は、スマホを取り出し、お決まりの番号をタップした。
「……もしもーし。あ、俺。……うん、飲みすぎた。迎えに来てよ」
『どこだ? 今すぐ行く。動かずに待っていろ』
電話越しでもわかる、鷹志の必死なトーン。
「駅前の、いつもの店。……あと、帰りにコンビニでアイス買いたい。チョコのやつ。……え、ハーゲンダッツ? 違うって、もっと安っぽいやつ! あんたは本当、すぐ高い方に逃げるんだから……」
文句を言いながらも、湊の口元は緩みっぱなしだった。 数分後、息を切らして店に飛び込んでくるであろう、スーツ姿の不器用なエリートを想像しながら、湊は残りの酒をぐいっと飲み干した。
46
この作品は感想を受け付けておりません。
あなたにおすすめの小説
繋ぎの婚約を契約通り解消しようとしたら、王宮に溺愛軟禁されました
こたま
BL
エレンは子爵家のオメガ令息として産まれた。年上のアルファの王子殿下と年齢が釣り合うオメガ令息が少なく、他国との縁組も纏まらないため家格は低いが繋ぎとして一応婚約をしている。王子のことは兄のように慕っており、初恋の人ではあるけれど、契約終了時期か王子に想い人が現れた時には解消されるものと考えていた。ところが婚約解消時期の直前に王子宮に軟禁された。結婚を承諾するまでここから出さないと王子から溢れるほどの愛を与えられる。ハッピーエンドオメガバースBLです。毎日18時50分公開予定です
αからΩになった俺が幸せを掴むまで
なの
BL
柴田海、本名大嶋海里、21歳、今はオメガ、職業……オメガの出張風俗店勤務。
10年前、父が亡くなって新しいお義父さんと義兄貴ができた。
義兄貴は俺に優しくて、俺は大好きだった。
アルファと言われていた俺だったがある日熱を出してしまった。
義兄貴に看病されるうちにヒートのような症状が…
義兄貴と一線を超えてしまって逃げ出した。そんな海里は生きていくためにオメガの出張風俗店で働くようになった。
そんな海里が本当の幸せを掴むまで…
αとβじゃ番えない
庄野 一吹
BL
社交界を牽引する3つの家。2つの家の跡取り達は美しいαだが、残る1つの家の長男は悲しいほどに平凡だった。第二の性で分類されるこの世界で、平凡とはβであることを示す。
愛を囁く二人のαと、やめてほしい平凡の話。
『2度目の世界で、あなたと……』 ― 魔法と番が支配する世界で、二度目の人生を ―
なの
BL
Ωとして生まれたリオナは、政略結婚の駒として生き、信じていた結婚相手に裏切られ、孤独の中で命を落とした。
――はずだった。
目を覚ますと、そこは同じ世界、同じ屋敷、同じ朝。
時間だけが巻き戻り、前世の記憶を持つのは自分だけ。
愛を知らないまま死んだ。今度こそ、本物の愛を知り、自ら選び取る人生を生きる。
これは、愛を知らず道具として生きてきたΩが、初めて出会った温もりに触れ、自らの意思で愛を選び直す物語。
「愛を知らず道具として生きてきたΩが転生を機に、
年上αの騎士と本物の愛を掴みます。
全6話+番外編完結済み!サクサク読めます。
キミと2回目の恋をしよう
なの
BL
ある日、誤解から恋人とすれ違ってしまった。
彼は俺がいない間に荷物をまとめて出てってしまっていたが、俺はそれに気づかずにいつも通り家に帰ると彼はもうすでにいなかった。どこに行ったのか連絡をしたが連絡が取れなかった。
彼のお母さんから彼が病院に運ばれたと連絡があった。
「どこかに旅行だったの?」
傷だらけのスーツケースが彼の寝ている病室の隅に置いてあって俺はお母さんにその場しのぎの嘘をついた。
彼との誤解を解こうと思っていたのに目が覚めたら彼は今までの全ての記憶を失っていた。これは神さまがくれたチャンスだと思った。
彼の荷物を元通りにして共同生活を再開させたが…
彼の記憶は戻るのか?2人の共同生活の行方は?
婚約破棄された令息の華麗なる逆転劇 ~偽りの番に捨てられたΩは、氷血公爵に愛される~
なの
BL
希少な治癒能力と、大地に生命を呼び戻す「恵みの魔法」を持つ公爵家のΩ令息、エリアス・フォン・ラティス。
傾きかけた家を救うため、彼は大国アルビオンの第二王子、ジークフリート殿下(α)との「政略的な番契約」を受け入れた。
家のため、領民のため、そして――
少しでも自分を必要としてくれる人がいるのなら、それでいいと信じて。
だが、運命の番だと信じていた相手は、彼の想いを最初から踏みにじっていた。
「Ωの魔力さえ手に入れば、あんな奴はもう要らない」
その冷たい声が、彼の世界を壊した。
すべてを失い、偽りの罪を着せられ追放されたエリアスがたどり着いたのは、隣国ルミナスの地。
そこで出会ったのは、「氷血公爵」と呼ばれる孤高のα、アレクシス・ヴァン・レイヴンだった。
人を寄せつけないほど冷ややかな瞳の奥に、誰よりも深い孤独を抱えた男。
アレクシスは、心に傷を抱えながらも懸命に生きようとするエリアスに惹かれ、次第にその凍てついた心を溶かしていく。
失われた誇りを取り戻すため、そして真実の愛を掴むため。
今、令息の華麗なる逆転劇が始まる。
【完結】この契約に愛なんてないはずだった
なの
BL
劣勢オメガの翔太は、入院中の母を支えるため、昼夜問わず働き詰めの生活を送っていた。
そんなある日、母親の入院費用が払えず、困っていた翔太を救ったのは、冷静沈着で感情を見せない、大企業副社長・鷹城怜司……優勢アルファだった。
数日後、怜司は翔太に「1年間、仮の番になってほしい」と持ちかける。
身体の関係はなし、報酬あり。感情も、未来もいらない。ただの契約。
生活のために翔太はその条件を受け入れるが、理性的で無表情なはずの怜司が、ふとした瞬間に見せる優しさに、次第に心が揺らいでいく。
これはただの契約のはずだった。
愛なんて、最初からあるわけがなかった。
けれど……二人の距離が近づくたびに、仮であるはずの関係は、静かに熱を帯びていく。
ツンデレなオメガと、理性を装うアルファ。
これは、仮のはずだった番契約から始まる、運命以上の恋の物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる