生まれついて

豆餅

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一章 

病を抱える少女〈二〉

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 ねぇ、姫、わがまま言っていいのよ…
その言葉は口にしたかったけど、今の妹には言っちゃいけないようなオーラが漂っていた。
だから、もう少し様子みようと思う。

苺ミルクは早速わたしのお気に入りの飲み物になった。
にぃには、その翌日から毎日イチゴミルクを、持って来てくれる。
だけど1日一個という決まりがあった。
何故かはわからない。
でも、たくさん飲みたいわたしは、そのお約束を破ってしまう。
その約束にはキチンと理由があったことも知らないで、破ってしまう。

苦しい… ヒューヒューという音と共に、咳とも言えない何かが出る。
発作だと気付くのには当時の、幼い脳では、時間がかかった。
バタバタと慌ただしい足音をどこか他人事のようにうっすらとする頭の中で聞いていた。
にぃにと、ねぇねの、泣き顔を見た瞬間
何で泣いているのだろうと思いながらわたしは、ゆっくりとそこで意識を手放した。

 お姉さん、よく聞いてください。
今回発作を起こしたのは、苺ミルクに含まれる、成分の摂取量に原因がありました。
この子の体力で取れる量は…大体イチゴミルクですと、お子様用一本、大人用ですと、ゆっくり飲まして一本が限度です…。生クリームは与えないで下さい。
彼女の体には毒です。
それからお菓子も…

妹は…まだ小さいんです…

ええ…存じております。
ただ、控えてもらわないと寿命が早まります…

えっ…!?それって…

ええ…最悪長くないということです…。

そんな…それって僕たちより早く居なくなるってこと?姉さん、

…分かりました…。

姉さん…?

…ほら、遊星そんな顔してたら…姫に気づかれちゃうでしょ…

でも…ううん、分かった僕も頑張る。

病室
 ねぇ、姫もっとわがまま言っていいのよ?

じゃ、じゃあね、抱っこして、それから、大人用の文庫がいい。

そんなこと、

え…ダメだった?ワガママすぎだよねごめん…

そんなこと良いに決まってるでしょ!
もっとわがまま言いなさいよ。
そんな小さなことでいいなら、幾らでも聞いてあげるよ。

そういって、ねぇねは優しく包む混むようにわたしを抱っこして、たくさんの本をくれた。
その本はとても楽しめた。
分からない読めない漢字は、スマホで調べたりして、物語が進んでいくたびに、ワクワクした。
とても楽しかった。
 ふと漏らした。
ねぇね…にぃにわたし…まだ、しにたくないよぉ

バカね、、、死なせない
わたし達が絶対に死なせないから、
ずっとわたしたちのそばに居なさい。

そういって二人はわたしを優しく抱き寄せてくれた。
目を閉じると、涙が溢れそうになった。
わたしは、きっとこの人たちのおかげで病に勝てる。
それから一年後、わたしはジュニア体操で銅メダル選手になったのだった。
にぃにと一緒に。

              完 

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