6 / 13
06 温室にて(2)
しおりを挟む
「ごめんなさい、怖かった? 傷の手当てをありがとう」
「大丈夫です。もう怖くありませんわ」
「本当に?」
怖がらせてしまったのは事実なので誤ると、彼女が笑って許してくれる。
彼女の茜色の瞳が柔らかい色になって、自分を見つめてくれるのは気分がいい。
ザイードの番と話をしている時も、恥ずかしそうにしたり、嬉しそうに笑っているので、隣に座って彼女を見ていると、席を立つので腕をそっと前に出す。
女性と一緒に歩くときにこうして手を貸すのに、彼女が少し戸惑っている。
「まだ怖い?」
そんなに怖がらせてしまったのかと思っていると、そっと手を添えてくれる。
そのまま彼女の隣を歩いく。
温室の中は色々な匂いがするが、街の中でする匂いとは違って嫌なものではない。
「これはなに?」
「オブの実ですよ」
木に付いた緑色の実を指差して聞く。
この綺麗な茜色の瞳を持った女性は、植物の話をすると楽しそうになるし、こっちを見てよく笑う。
「これは燃やさ無いの?」
「燃やしてしまう?」
「うん」
「なぜ燃やしてしまうのですか?」
「これは良く燃えるボブの実と同じ匂いがする。そのままにしておくと森が燃えるから、ガルスでは見つけるとすぐに取ってしまうんだ」
「オブの実は燃やしませんよ、料理に使います」
「食べるの?」
「このまま食べる訳ではありませんが、、、ガルスにも同じ様な実があるのですか?」
「うん、少し匂いが違うけど。良く燃える実があるよ」
「これも同じ匂いがする。ホバは食べるよ、美味しい」
「食べるのですか? ノゼルと呼ばれているのですが、、、食べられるのですか?」
茜色の瞳が、じっとホバの葉を見ていたかと思うと、そっと葉に手を伸ばすので、その手を捕まえる。
「ホバはちょっと辛い、トルテ入れて食べるけど、そのままはダメ」
「まぁ」
まだ残念そうにホバの葉を見ているので、食べさせたくなる。
彼女にトルテを食べさせたらどんな感じがするだろう? 考え始めると又興奮しそうになるので自分を抑える。
ザィードの番と違って、彼女は魔力に気付いて逃げてしまうので、彼女を先に捕まえて、逃げなくなってからトルテは食べさせてあげよう。
それからこの街にいる間は、この箱の中にいる様になった。
街の中は色んな匂いがして、サイラスは苦手だったし、彼女の側にいられるのは温室の中だけだった。
それにこの中で彼女の仕事を手伝っていると、彼女がとっても嬉しそうにするので、街の方に行きたいとは全く思わない。
「リオン」
彼女が知らない男の名前を呼ぶ。
よく知っている人なのか、サイラスを呼ぶ時とは違って、声色が優しくなっているし、彼も彼女のことを『ティナ』と呼んでいる。
嫌な相手だった。
強い魔力を持っているし、空色の瞳を持つものは水の魔力を得意とするものが多い。
獣人に魔力を使った攻撃は意味がないが、大量の水を扱われるのは苦手だ。
彼女を狙っている雄を近づけたくないのに、イグルスは押さえろと横で煩いし、なにより彼女がそいつの持ってきた物を見て嬉しそうにするので、何も出来なくなる。
「イグルス様、サイラス様、今日は、フレの工房にザイード様を案内すると聞いています。少しそちらに行ってみませんか?」
緋色の瞳を持った弟が、リオンと呼ばれた男を追い出してくれたと思っていたら、サイラス達まで追い出そうとする。
こいつもあんまり敵にしたくない。
ザイードの番が大切にしているし、さっきの水色の瞳よりもっと面倒な相手になる。
「僕も、ティナって呼んでもいい? ダメ?」
「呼んでもいいわ。だから少し街も見て来てね」
仕方ないのでその言葉に従う。
ティナがそれを望んでいるのだから、少しだけ街を見て来よう。
「大丈夫です。もう怖くありませんわ」
「本当に?」
怖がらせてしまったのは事実なので誤ると、彼女が笑って許してくれる。
彼女の茜色の瞳が柔らかい色になって、自分を見つめてくれるのは気分がいい。
ザイードの番と話をしている時も、恥ずかしそうにしたり、嬉しそうに笑っているので、隣に座って彼女を見ていると、席を立つので腕をそっと前に出す。
女性と一緒に歩くときにこうして手を貸すのに、彼女が少し戸惑っている。
「まだ怖い?」
そんなに怖がらせてしまったのかと思っていると、そっと手を添えてくれる。
そのまま彼女の隣を歩いく。
温室の中は色々な匂いがするが、街の中でする匂いとは違って嫌なものではない。
「これはなに?」
「オブの実ですよ」
木に付いた緑色の実を指差して聞く。
この綺麗な茜色の瞳を持った女性は、植物の話をすると楽しそうになるし、こっちを見てよく笑う。
「これは燃やさ無いの?」
「燃やしてしまう?」
「うん」
「なぜ燃やしてしまうのですか?」
「これは良く燃えるボブの実と同じ匂いがする。そのままにしておくと森が燃えるから、ガルスでは見つけるとすぐに取ってしまうんだ」
「オブの実は燃やしませんよ、料理に使います」
「食べるの?」
「このまま食べる訳ではありませんが、、、ガルスにも同じ様な実があるのですか?」
「うん、少し匂いが違うけど。良く燃える実があるよ」
「これも同じ匂いがする。ホバは食べるよ、美味しい」
「食べるのですか? ノゼルと呼ばれているのですが、、、食べられるのですか?」
茜色の瞳が、じっとホバの葉を見ていたかと思うと、そっと葉に手を伸ばすので、その手を捕まえる。
「ホバはちょっと辛い、トルテ入れて食べるけど、そのままはダメ」
「まぁ」
まだ残念そうにホバの葉を見ているので、食べさせたくなる。
彼女にトルテを食べさせたらどんな感じがするだろう? 考え始めると又興奮しそうになるので自分を抑える。
ザィードの番と違って、彼女は魔力に気付いて逃げてしまうので、彼女を先に捕まえて、逃げなくなってからトルテは食べさせてあげよう。
それからこの街にいる間は、この箱の中にいる様になった。
街の中は色んな匂いがして、サイラスは苦手だったし、彼女の側にいられるのは温室の中だけだった。
それにこの中で彼女の仕事を手伝っていると、彼女がとっても嬉しそうにするので、街の方に行きたいとは全く思わない。
「リオン」
彼女が知らない男の名前を呼ぶ。
よく知っている人なのか、サイラスを呼ぶ時とは違って、声色が優しくなっているし、彼も彼女のことを『ティナ』と呼んでいる。
嫌な相手だった。
強い魔力を持っているし、空色の瞳を持つものは水の魔力を得意とするものが多い。
獣人に魔力を使った攻撃は意味がないが、大量の水を扱われるのは苦手だ。
彼女を狙っている雄を近づけたくないのに、イグルスは押さえろと横で煩いし、なにより彼女がそいつの持ってきた物を見て嬉しそうにするので、何も出来なくなる。
「イグルス様、サイラス様、今日は、フレの工房にザイード様を案内すると聞いています。少しそちらに行ってみませんか?」
緋色の瞳を持った弟が、リオンと呼ばれた男を追い出してくれたと思っていたら、サイラス達まで追い出そうとする。
こいつもあんまり敵にしたくない。
ザイードの番が大切にしているし、さっきの水色の瞳よりもっと面倒な相手になる。
「僕も、ティナって呼んでもいい? ダメ?」
「呼んでもいいわ。だから少し街も見て来てね」
仕方ないのでその言葉に従う。
ティナがそれを望んでいるのだから、少しだけ街を見て来よう。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
26
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる