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10 温室にて(5)

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 初めて会った時から、夜になるとセレスティナの所に会いに行っていた。
 最初は彼女も驚いていたけれど、今では自分が触れる事を許してくれるので、離れるのは嫌だった。
 
 他の男が側に来るのはもっと困るので、匂いをつけてしまいたいけれど、この国は先に約束が必要だと、ザィードにも言われている。

「ティナ」
「サイラス様」

 彼女を見つけて、抱きしめる。

「ティナ、可愛い」
「どうしたのですか?」

「ザィードがガルスに戻るから、僕も一緒に戻るんだ。しばらくティナに会えない」
「今から?」
「うん。ティナ、寂しい?  僕に会えなくなるの、寂しい?」

「会えなくなるのは、さみしいです」
「良かった、ティナは僕のだからね」

 額や頬に触れ、最後にキスをする。

「ティナ、もう少しだけ、少しここ開けて」

 また唇を重ね、キスが少し深くなると、ティナの中に自分の魔力を流し込む。

 彼女の顔が赤くなって、とっても恥ずかしそうにするし、魔力を入れたので不思議そうな顔をする。

「ティナ、ごめん、怒らないで」
「怒ってないけど、びっくりしたの」
「ティナ、かわいい」

 恥ずかしそうにするけど、離れようとしないので、そのまま腕の中に入れておく。

「これなに?」
「僕の力を少しティナに入れたの。ティナ、気持ち悪い?」
「力?」
「そう、こうすると離れていてもティナの事が判る。ティナがどこに居ても、見つけられるし、何かあればティナを守る」

「サイラス様が獣人だから出来るの?」
「みんなは出来ない、ザィードは、多分出来る。それにこれだとそんなに力を移せないから、少しだけ」

「これ?」
「うん、キス。体を重ねるともっと移せる」
「えっ?」

「ティナ、顔が真っ赤になってる。大丈夫、ザィードが約束するまでダメだって言ってた、だから今はしない」
 
 そう言って、また顔のあちこちに唇で触れる。
 彼女とは離れたくないが、自分の王が待っている所に行かなくてはならない。

「行かないと、タルパスの街でザィードが待ってる」
「戻って来る?」
「うん。ザィードの番がここに居るしね、ザィードが僕の王だから」

「それにこんな事、ティナにしかしない。もう少し力移すから、ティナ、もう一回」    

 彼女と深く唇を重ねる。
 魔力を入れるのと同じように自分の舌も入れて、身体も強く抱きしめる。

 ティナの肌がばら色に染まって、本当に愛おしい。

 彼女はよく『何故、私なの?』と聞いてくるが、『ティナだから』と答えるしかない。
 
 ザイードが自分に足りなかったピースの一つなら、彼女は自分の半身のようなものなのだから、自分の一部と離れたくないのは当たり前だ。

 彼女が可愛いし、愛おしいし、ずっと抱きしめて離したくないと思っていると、同じようにティナが思っているのが感じられる。

「ティナ、離れたくない?」
「どうして?」

「そんな気がした。戻って来たらいっぱい一緒にいる、待ってて」

 暖かくなればまたこの国に来る事が出来る。
 王都に着いたらナジルに話をして、この国の約束事を決めて貰おう。

 ザイードはダメだと言わないだろうし、ティナが側にいたいと思ってくれるなら、彼女は僕のものだ。
 誰かが連れて行ってしまったら、奪い返してしまえばいい。
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