エルメニア物語 - 灰色の少女は南の島で恋をする -

小豆こまめ

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第1章

06 閑話 -ガルスside

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「お嬢、面白い知らせが来てるっすよ」
「あら、なぁに?」

 ジャルドがお父様からの手紙を持って来てくれる。
 父からの手紙の封が切っているはずも無く、面白いって、一体どこから情報を得ているのかしら?

「まぁ、カリーナがミリオネアに行くみたいね。
  詳しい事は書いて無いけど、、、どうやって商隊に潜り込んだの?」

「お嬢が、教えたやり方っすね」
「教えた?」
「使用人に紛れたっすよ」
「あら」

「そんなお話をなさったのですか?」
「私は、隠れるなら紛れる方が見つかりにくいって話をしただけよ」
「まぁ、お嬢様」

 ロニが呆れた様な顔をする。
 妹のように可愛がっている少女が、どうやら行きたい場所を見つけたみたい。

「ソーヤが側にいるのよね?」

 彼はガルスに来るまで、ジャルドの下で私を守ってくれた一人だ。

「それともう一人っすね」
「もう一人?」

「今度の商隊には、新しい騎士も同行してるっすよ」
「風使いの先生?」

 そうだと言うようにジャルドが頷く。

「お父様って何を考えているのかしら?」
「旦那様のお考えは分かりませんが、お嬢様が刺激されてはいけまよ」

「言っておきますけど、カリーナを育てたのはお父様ですからね」
「まぁ、そおっすね」

「それに母親譲りの性格ね、家を捨てて恋を選んだ人だもの、よく似ているわ」
「お会い出来なくて残念でしたね」

「そうなのよねぇ、それどころでは無かったものね、、、でもミリオネアに来るなら、向こうで会えないかしら?」
「あちらでお会いになるのですか?」
「えぇ、カリーナがミリオネアにいるなら、、、」

「何の話をしている」

 ロニとジャルドがサッといなくなる。
 裏切り者!

「ザィード」
「やっと食事が出来るようになったばかりで、出掛けるなど絶対に許さないからな」

「ザィード、これは病気では無いのよ?」
「食べることも出来なくなっていたと言うのに!」

 食事を受け付けなくなる事が、彼の鬼門だとは思っても見なかった。

「もう少ししたら、貴方がびっくりするくらい食べるようになるわ」
「リディア、心配させないでくれ」

 強く抱きしめられると膝の上に座らされ、そっと髪を撫ぜられる。

 困ったものだわ、四年前に逆戻りだ。

 これが普通の事なのだと何度話しても彼には受け入れられず、三か月前はパニックの様な状態だった。
 おまけにちょうど一年前の二人は、私とは真逆のタイプで、全く平気だったため、それが彼を余計に不安にさせた。

 結局、父に願って緑樹院から数名の薬師と癒しの使い手にガルスまで来てもらい、どうにか彼も落ち着いたが、今度は私が部屋から出られなくなっている。
 そろそろ退屈だし、本当に動かないとその方が問題だわ。

「ザィード」
「ダメだぞ、リディア」
「知っています」

 それでも彼の唇にそっと指でふれると、唸る様な声と一緒に唇が重なる。

 彼の腕の中にいるのは心地がいいが、数ヶ月先の事を考えると、何か対策を立てないと。

 ちょうどエルメニアにいる時で、ザィードは知らないが、二人の夫でさえ部屋の中を歩き続ける熊の様になっていたらしいから、彼がどうなるか考えたくも無い。
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