エルメニア物語 - 灰色の少女は南の島で恋をする -

小豆こまめ

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第3章

05 サウストリア(5) -ファリスside

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 一年以上たってもダラダラとイルネラの街にいた頃、クラウス様にそろそろ街を出ていけと追い出された。

 ノエルとリオンは自分の道が決まっていたが、アルフレッドは家に戻りたがらず結局、イルネラの街で知り合ったエイダンに手を貸すことになった。

 それからの数か月は、正直、思い出したくない。
 エイダンと別れ国に戻って来た時、スーの海軍の手伝いをしたのは後始末のような物だ。

 アルフレッドも自分も気分的に荒れていた時だったし、魔物狩りはそれまでよりずっと楽な仕事だったので、海軍にいる頃は結構無茶もやった。

 海が落ちついたので海軍を抜けて、ミリオネアでアルフレッドは懐かしい人に会い。
 やっとウエストリアに戻り、自分も家に帰ることになった。

 “風使いのファリス” は海軍にいた頃の呼び名で、無茶をやった時のあまり思い出したくない記憶だ。
 面倒な事を聞かれるのも、思い出すのも嫌なので、商隊に帰ろうと馬車に戻ると会いたくない男が待っていた。

「やぁ、帰るのかい?」
「私は送り届けに来ただけですから」

「良かった」
「良かった?」

「うん、迎えに来なくていいからね、君の主人にも伝えておいてよ」
「それは彼女の望みではありませんよ」

「ミリオネアに行きたいんだろう?」
「そう聞いています」
「心配しなくていいよ、僕が連れて行くから」
「それは、、、」

「彼女が納得していればいいんだろう?」

 彼が自分では無く、カリーナを守っている者に向けて話すと、カリーナの護衛が答える。

「彼女の望むように、と言われています」
「分かった。無理強いするような事はしない、約束するよ」

 それで護衛との話は終わったと言うように、こちらを向くと相変わらず笑いながら話し続ける。

「君は逃げて手を引くんだろう? だったらキッパリ手を引いて欲しいな」
「手を引く?」

「そうカリーナから」
「別に僕は」

「違うならいいよ、僕はやっと帰ってきた彼女を手に入れたいからね、敵は少ない方がいい」
「彼女の事を知らないでしょう?」

「彼女が変わっていない事は会えば分かるよ、それに思っていた以上に可愛いし、これからもっと綺麗になる」
「私には」
「関係ない?」

 くそっ、誘導されているようで腹が立つが、ここで引けるものか。

「残ります」
「なんだ、残念。じゃぁ、客室を用意してあるみたいだから、しばらくゆっくりするといいよ」

 そう言うと彼の方が馬に乗って屋敷を出て行きながら、最後に嫌な言葉を残して行く。

「夕食は正式な物だからね、ちゃんと正装してくれよ。僕だけ服装を整えたら、何だか僕が意地悪しているみたいに見えるだろう?」

 何だか嵌められたような気分になる。

 第一正装なんて、ここ何年も着た覚えがない。

 おまけに最後に着たのは友人の結婚披露の場で、初めて口にしたアルコールで前後不覚になり、新婦に庭の池に放り込まれた嫌な記憶しか残ってない。
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