エルメニア物語 - 灰色の少女は南の島で恋をする -

小豆こまめ

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第4章

04 ミリオネア(4)

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「ダナー、どうかしたの?」
「いや、レオーナが来てるからさ」
「レオーナ様?」
「うん、船に乗るとは聞いていなかったな」
「船に?」

 結局、ミュールの街では会う事が出来なかったので探していると、彼女の方から話しかけてくれる。

「ダナー、それにカリーナ! 久しぶりだな」
「レオーナ様」

「変わらないな、カリーナ。ダナーに無理を言われていないか?」
「大丈夫です」
「それならいいがな、何かあれば私に言えよ」
「それより姉上、どうしてこんな所にいるのさ」

「ちょっとな」
「そんなに気になってるのか?」
「そうではない、お前が乗ると聞いたからな、それなら同船させて貰おうと思っただけだ」
「彼は?」
「今は交渉中と言う所だな」

「ダナー?」
「あぁ、カリーナ、“精霊使い”はね、僕たちの様な家の者を船に乗せたがらない」
「どうして?」
「ミリオネアの精霊達が嫌がるんだろうね」
「ダナーを?」
「僕は一応、海軍の家の者だしね」

 ダナーがウインクしながら話す。

「船がミリオネアにどれだけ早く着けるかは“精霊使い”の力量による。精霊が嫌う者を“精霊使い”は船に乗せたくないのさ」
「ダナーを嫌う人って見た事ないけど」
「いいね、それ。カリーナが持ってる僕のイメージかな?」
「もう、、、」

「アレスが呼んでいるな、では話してくる。後でな」

 レオーナ様がアレス様と話している様子が見える。
 彼女が嬉しそうにしている所を見ると、一緒に行ける事になったのだろう。

 二人が一緒にいる所は、ミュールの街で見た時のようにとっても綺麗で、大人の人達に見える。

「アレス様と一緒に居たかったのかしら?」
「う~ん、どうかな」
 
「でもとってもお似合いだわ」
「まぁ、上手くは行って欲しいな」

「えっ、お付き合いしているのでしょう?」
「どうして?」

「だって、ミュールの屋敷で一緒に、、、」
「あぁ、あの日は何も無かったみたいだよ。あの後、彼も商隊に戻ったみたいだし」
「そう、、、」

「まぁ、彼には頑張って欲しいかな」
「アレス様に?」
「うん」

「どうして?」
「レオーナもそろそろ21歳になる。イスレイン家の跡継ぎは彼女に決まっているけど、一人でいるより相手がいた方がいい。彼なら周りも納得するだろうからね」

「そうね」
「僕も彼なら姉上を任せられる」

「レオーナ様の事大切に思っているのね」
「そうだな、ティジィスにも姉はいるけど、レオーナは特別だ」
「アレス様なら大丈夫よ」

 彼が優しい事はよく知っている。

 なんだか落ち込んでいると、カリーナの目の前で、水のボールがパチンと割れる。

「きゃ、なあにこれ?」

 すると割れたはずの水が集まって、またボールが作られる。

「ダナーが作っているの?」
「どう? 綺麗だろ?」

 緑の色の水が、一つになったり、幾つかに分かれたりしながらカリーナの周りをふわふわ飛んでみせる。

「えぇ、とっても綺麗。ありがとう、ダナー」
「どういたしまして」

 そして側にいてくれる彼がとても優しい事も良く分かっている。
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