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第4章
12 ミリオネア(12) -ファリスside
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「だって私の事を選んでくれたのよ、だからこれは私が貰っていいはずだわ!」
カリーナとアレス様が濡れた服を変えるために船室に戻った後、ダナーに取り押さえられた娘が船上で喚いていた。
「ファリス、お前の魔道具だろう? 彼女に渡したのか?」
「そんな訳ないだろう? ろくに話した覚えもないんだ」
「私に笑ってくれたわ、いつも『ありがとう』って」
「って言ってるぞ」
「商隊で食事を運んで貰っていたんだ、礼くらい言うだろう!」
「お前、面倒なのに気にいられたなぁ」
「、、、どうすれば良かったと言うんだ」
「諦めろ」
ダナー殿が言い捨てる。
簡単に言ってくれる。
彼女が牢にでも入ってくれるならこのまま捨てておけるが、彼女をエルメニアで拘束し続けるのは難しいだろう。
今回の事が起こったのはミリオネアの海域で起こった事だし、ミリオネアに連れて行っても彼女はおそらく国に返される。
そうなるとミリオネアで起こった事をエルメニアで裁くのは難しい。
カリーナ本人に怪我があった訳でもなく、今回の事を警備に申し立ててもそれ程重い罪にはならないだろう。
「悪いけど、僕の魔道具を返して貰えないかな」
「どうして?」
「これが無いと困るんだ」
「分かったわ」
良く知らない娘にうっとりと見つめられても、感じるのは困惑と嫌悪だけだ。
ダナー殿が彼女を連れて行くのを目で追い溜息をつく。
「まいったな」
知らなかったとは言え、カリーナを危険な目に合わせてしまっている。
一人甲板に残され落ち込んでいると、声をかけられる。
「大丈夫ですか?」
「エマさん、ありがとうございます。 あの、カリーナは?」
「大丈夫ですよ、混乱しているようなのでイレーネ様がお側にいて下さいます」
「よかった」
「それでラナの方は?」
「食糧庫の話をしたら、ダナー殿がそこにでも入っていて貰おうって」
「そうですか、、、すみません、私の目が届かず」
「いえ、そう言う事でもなかったみたいで」
ラナと言う娘が、ファリスの恋人だと勘違いしていた事や、どうやら空想と現実の区別が出来ていない話をするが、それを聞いていたエマさんまで難しい顔をする。
「困りましたね」
「やっぱり、そう思いますよね」
「カリーナ様が今回の事を警備に申し立てると思えませんし、、、アレス様が申し立てても難しいでしょうね」
「彼女が自由な立場になれば、ノア商会で彼女を雇う事がなくても、僕がいると迷惑をかける可能性がある」
「何が出来るとも思えませんが」
「こちらの想像を超える場合があるし、彼女にそんな事をして欲しくない」
「まぁ、ファリス様」
「間違えないで下さいね、優しさで言っている訳ではないんです。
以前、知人の感情に従って大変な思いをした事があってね、僕は他人の感情に巻き込まれたくないだけです」
「どうされるのですか?」
「少し考えます」
一番いいのは、王都を離れる事だ。
養護院で育った子どもは、王都の籍を持っているが他の領地に行く事は出来ない。
ウエストリアに帰ってしまえば、もう彼女に悩ませられる事はない。
カリーナとアレス様が濡れた服を変えるために船室に戻った後、ダナーに取り押さえられた娘が船上で喚いていた。
「ファリス、お前の魔道具だろう? 彼女に渡したのか?」
「そんな訳ないだろう? ろくに話した覚えもないんだ」
「私に笑ってくれたわ、いつも『ありがとう』って」
「って言ってるぞ」
「商隊で食事を運んで貰っていたんだ、礼くらい言うだろう!」
「お前、面倒なのに気にいられたなぁ」
「、、、どうすれば良かったと言うんだ」
「諦めろ」
ダナー殿が言い捨てる。
簡単に言ってくれる。
彼女が牢にでも入ってくれるならこのまま捨てておけるが、彼女をエルメニアで拘束し続けるのは難しいだろう。
今回の事が起こったのはミリオネアの海域で起こった事だし、ミリオネアに連れて行っても彼女はおそらく国に返される。
そうなるとミリオネアで起こった事をエルメニアで裁くのは難しい。
カリーナ本人に怪我があった訳でもなく、今回の事を警備に申し立ててもそれ程重い罪にはならないだろう。
「悪いけど、僕の魔道具を返して貰えないかな」
「どうして?」
「これが無いと困るんだ」
「分かったわ」
良く知らない娘にうっとりと見つめられても、感じるのは困惑と嫌悪だけだ。
ダナー殿が彼女を連れて行くのを目で追い溜息をつく。
「まいったな」
知らなかったとは言え、カリーナを危険な目に合わせてしまっている。
一人甲板に残され落ち込んでいると、声をかけられる。
「大丈夫ですか?」
「エマさん、ありがとうございます。 あの、カリーナは?」
「大丈夫ですよ、混乱しているようなのでイレーネ様がお側にいて下さいます」
「よかった」
「それでラナの方は?」
「食糧庫の話をしたら、ダナー殿がそこにでも入っていて貰おうって」
「そうですか、、、すみません、私の目が届かず」
「いえ、そう言う事でもなかったみたいで」
ラナと言う娘が、ファリスの恋人だと勘違いしていた事や、どうやら空想と現実の区別が出来ていない話をするが、それを聞いていたエマさんまで難しい顔をする。
「困りましたね」
「やっぱり、そう思いますよね」
「カリーナ様が今回の事を警備に申し立てると思えませんし、、、アレス様が申し立てても難しいでしょうね」
「彼女が自由な立場になれば、ノア商会で彼女を雇う事がなくても、僕がいると迷惑をかける可能性がある」
「何が出来るとも思えませんが」
「こちらの想像を超える場合があるし、彼女にそんな事をして欲しくない」
「まぁ、ファリス様」
「間違えないで下さいね、優しさで言っている訳ではないんです。
以前、知人の感情に従って大変な思いをした事があってね、僕は他人の感情に巻き込まれたくないだけです」
「どうされるのですか?」
「少し考えます」
一番いいのは、王都を離れる事だ。
養護院で育った子どもは、王都の籍を持っているが他の領地に行く事は出来ない。
ウエストリアに帰ってしまえば、もう彼女に悩ませられる事はない。
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