エルメニア物語 - 灰色の少女は南の島で恋をする -

小豆こまめ

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第5章

01 その後 -サウストリアside

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「姉上、妻を複数持つ事ができるなら、夫を二人持ってもいいと思わないか?」
「何の話をしている」

 祭りの後、イスレインの家に入り浸っているダナーが訳の分からない事を言いだす。

「カリーナだよ、彼女が夫を二人持ってくれれば、僕が二人目になれるだろう?」
「お前、本気で言っているのか?」

「そりゃあ僕だって、カリーナが僕だけを選んでくれた方がいいけど、、、アイツの方がいいって言うんだから仕方ないだろう?」

 それに躊躇なく夜の海に飛び込んだのも、自分ではなくあの男だった。

「お前なぁ」

「今は敵わないけど、後十年もしたら僕の方が強くなっているかもしれないし、、、僕は今の彼の歳になるだけだけど、彼はもっと歳をとるだろう?」
「気にしている事を言ってやるな」

「関係ないね、カリーナが決める事じゃないか」
「選ばれると思っているのか?」

「それに十年したら、カリーナだって若い僕の方がいいって思ってくれるかもしれない」
「あと十年、待つつもりなのか?」

「今まで八年待ってたんだ、あと十年、待ってみてもいいだろ?」
「お前、ティジィスの家はどうするつもりだ」
「僕には、レオーナと違って二人も姉がいるからね、気にする必要ないよ」

「継ぎたかったのではないのか?」
「カリーナに選んで貰うためにね」

 人が聞けば冗談のように聞こえるかもしれないが、これが本気だからこの弟は恐ろしい。

 ダナーには確かに姉がいるが、ティジィス家を継ぐのは彼以外にありえない。
 その位彼は優秀だし、その努力をして来たのも事実だった。

 十年前、彼を捕まえた少女の為にずっと努力していたのを見て来たので、出来れば応援してやりたいが、、、

「お前、頼むからアレスに殺されるなよ」

「それより、姉上はどうするつもりさ」
「何の話だ」

「誰か分かったんだろう?」
「無理だろうな、流石に父上の様にはできん」

 “風使いのファリス”がラングロア家の者だと聞けば、彼と一緒にいた青年が誰なのか想像するのは難しくない。

「ここに来ることが出来なくても、子どもだけでもいいだろう?」
「それを受け入れるような相手には思えん」

「ふ~ん、残念だね」
「仕方ないな」

「どうするつもりなの?」
「さぁ、どうするかな」

 両親にはレオーナしか子どもがおらず、イスレイン家は彼女が継ぐことになっている。
 家を継ぐのに婚姻関係は必要ないが、このままではレオーナの後を継ぐ者が得られない。

「僕が相手でもいいよ」
「お前、今までカリーナの夫になりたいと言っていなかったか?」

「う~ん、そうなんだけど。カリーナがいなかったら、レオーナを好きになっていたと思うんだよね」
「二番目だと言われて、喜ぶ女がいると思うなよ」

「でもレオーナにとっても僕は二番目だろ?」
「そうかも、、、しれないが」

「大切にするよ? それに僕よりいい男、レオーナの周りにいないだろ?」
「出てくるかもしれないだろう」

「その時は頑張ってみせるさ、僕がどんな性格か知っているだろ?」
「浮気は許さんぞ」

「分かってる。時々彼女の話をするかも知れないけど、、、その代わり、レオーナが彼の話をしても許してあげるよ」

 長椅子に寝転がっていたダナーが、側に近づいて来る。

「なんだ」
「僕さ、気が長い方だと思ってたんだけど、、、そうでもないみたいだ」

 ひょいっと抱き上げられると、寝室の方に運ばれて行く。

「お前、、、」

 いい終わらないうちに唇を塞がれ、いつの間にかドレスが脱がされる。

「これからは剣術しちゃぁダメだよ。レオーナの肌に跡を残すのは僕だけにして貰わないと」

 昨日、他の騎士と手合わせした時に赤くなった跡にふれながら言われると、その後、体中に跡を残され、しばらく寝台から起き上がる事も出来なくなった。
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