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第1章
09 古都で(2)
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「あら、こんな所でお会いするとは思いませんでしたわ」
色とりどりのリボンが並ぶお店で声を掛けられる。
「こんにちは、ロクサーヌ様」
嫌な人に会ったなぁ、そう思うが顔には出さず答える。
ロクサーヌ・ファルコーネは、カシム王子の婚約者候補の一人だ。
園遊会でも何かと突っかかってくるので、逃げた先でフェイに会った。
「まだ王都におられるとは思いませんでしたわ、辺境の方はそちらの方がお似合いだと聞きますし、何が欲しくてこちらに残っていらっしゃるのかしら」
「私は、父の言葉に従っているだけです」
「15歳にもなって、、、父親の言いなりだなんて情けないですわね。
さすが辺境の地で育った方は違うわね。王都には合ってないのではないかしら?」
ロクサーヌ嬢の嫌味が続く。
彼女が自分を嫌う理由は理解できるが、言われっぱなしも腹が立つ。
とは言え、こんな街中で噂を広げるような事もしたくない。
上手く切り抜ける方法が無いかと考えていると、近くにいたジャルドが先に切れる。
「失礼ですが、今のお言葉は、お嬢様がウエストリア伯の娘と承知した上での発言ですか?
主人が大切にされている方への言葉であるなら、聞き捨てなりません」
「失礼な。私はファルコーネ家の者ですよ。従者ごときが、、、」
ロクサーヌ嬢が反論しようとするが、ジャルドが引く様子も見せず、周りに人も集まって来たのでそのまま振り返って離れていく。
店での買い物を諦めて、通りを歩きながらジャルドと話す。
「めずらしいわね」
「お嬢が何も言わないからっすよ、そっちの方がめずらしいっしょ」
「色々あるのよ」
「あれ? 俺まずいことしたっすか?」
ジャルドがちょっと心配そうな顔をする。
「大丈夫。それより大切な方ねぇ、いいこと聞いたわね」
「いや、違うっすよ。だんな様が大切にしている方って言ったんすよ」
「あら? そうだったかしら?」
「ロニには内緒よ」
一応念を押しておくと、ジャルドが当たり前だと返してくる。
「俺だってロニさんに怒られたく無いっすね」
人混みに酔って馬車で休んでいたロニの所に戻り、今日は帰る事にする。
「嫌だわ、王都に来てから私を嫌う人ばかり増えている気がするわ」
「他にもいるんすか?」
「本人よ」
「カシム王子っすか? 何したんすか、嫌われる程会ってないっすよね?」
「何もしていないわよ、、、たぶん」
この前の庭園での事は、関係ないと思いたい。
「王子様に嫌われているなんて、お嬢様の気のせいではないのですか?」
「私が園遊会で挨拶した時の顔を見せてあげたいわ」
「まぁ確かに、ロクサーヌ嬢が王子の好みなら、お嬢はちょっと違ってすね」
ジャルドが、体のラインが違う事を表す。
「殴るわよ」
「そういう乱暴な言葉も使わないっすよ」
そう言って馬車の扉を閉め、自分は御者台の方に座る。
「ロクサーヌ嬢にも、お会いになったのですか?」
「ええ、ちょっとね。確か、カシム王子とロクサーヌ様は、幼馴染みでもあるのよね」
「そう聞いております。幼い頃から仲が良かったため、婚約者候補になられたと」
「私も聞いたわ。だったらひょっこり出て来た辺境の娘など、気にすること無いと思うのだけど」
「だからではありませんか?」
「なぁに?」
「ずっと自分だけの人だったのに、他の人と共有する事になって、受け入れられないのでは無いですか?」
「王子の婚約者なのに? 私が婚約者にならなくても必ず三人の相手が選ばれるわ、カシム王子だけ一人の后妃になる事などないと思うけど」
「分かっていてもどうしようもないのでしょう。恋とはそういうものですよ、理屈で解決できるものではありません。お嬢様も人を好きになれば分かりますよ」
「そうかしら?」
「そうですよ。少なくとも王子様との婚約話を、お仕事の一つのように話したりする事は出来ないと思いますよ」
「恋をするほど彼の事を知らないもの」
「王宮に行って、これから知る事は出来ますよ」
「止めておくわ、すでに決定事項だもの。せっかく王都を自由に動けるのだから、今の間に色々行っておきたいわ」
色とりどりのリボンが並ぶお店で声を掛けられる。
「こんにちは、ロクサーヌ様」
嫌な人に会ったなぁ、そう思うが顔には出さず答える。
ロクサーヌ・ファルコーネは、カシム王子の婚約者候補の一人だ。
園遊会でも何かと突っかかってくるので、逃げた先でフェイに会った。
「まだ王都におられるとは思いませんでしたわ、辺境の方はそちらの方がお似合いだと聞きますし、何が欲しくてこちらに残っていらっしゃるのかしら」
「私は、父の言葉に従っているだけです」
「15歳にもなって、、、父親の言いなりだなんて情けないですわね。
さすが辺境の地で育った方は違うわね。王都には合ってないのではないかしら?」
ロクサーヌ嬢の嫌味が続く。
彼女が自分を嫌う理由は理解できるが、言われっぱなしも腹が立つ。
とは言え、こんな街中で噂を広げるような事もしたくない。
上手く切り抜ける方法が無いかと考えていると、近くにいたジャルドが先に切れる。
「失礼ですが、今のお言葉は、お嬢様がウエストリア伯の娘と承知した上での発言ですか?
主人が大切にされている方への言葉であるなら、聞き捨てなりません」
「失礼な。私はファルコーネ家の者ですよ。従者ごときが、、、」
ロクサーヌ嬢が反論しようとするが、ジャルドが引く様子も見せず、周りに人も集まって来たのでそのまま振り返って離れていく。
店での買い物を諦めて、通りを歩きながらジャルドと話す。
「めずらしいわね」
「お嬢が何も言わないからっすよ、そっちの方がめずらしいっしょ」
「色々あるのよ」
「あれ? 俺まずいことしたっすか?」
ジャルドがちょっと心配そうな顔をする。
「大丈夫。それより大切な方ねぇ、いいこと聞いたわね」
「いや、違うっすよ。だんな様が大切にしている方って言ったんすよ」
「あら? そうだったかしら?」
「ロニには内緒よ」
一応念を押しておくと、ジャルドが当たり前だと返してくる。
「俺だってロニさんに怒られたく無いっすね」
人混みに酔って馬車で休んでいたロニの所に戻り、今日は帰る事にする。
「嫌だわ、王都に来てから私を嫌う人ばかり増えている気がするわ」
「他にもいるんすか?」
「本人よ」
「カシム王子っすか? 何したんすか、嫌われる程会ってないっすよね?」
「何もしていないわよ、、、たぶん」
この前の庭園での事は、関係ないと思いたい。
「王子様に嫌われているなんて、お嬢様の気のせいではないのですか?」
「私が園遊会で挨拶した時の顔を見せてあげたいわ」
「まぁ確かに、ロクサーヌ嬢が王子の好みなら、お嬢はちょっと違ってすね」
ジャルドが、体のラインが違う事を表す。
「殴るわよ」
「そういう乱暴な言葉も使わないっすよ」
そう言って馬車の扉を閉め、自分は御者台の方に座る。
「ロクサーヌ嬢にも、お会いになったのですか?」
「ええ、ちょっとね。確か、カシム王子とロクサーヌ様は、幼馴染みでもあるのよね」
「そう聞いております。幼い頃から仲が良かったため、婚約者候補になられたと」
「私も聞いたわ。だったらひょっこり出て来た辺境の娘など、気にすること無いと思うのだけど」
「だからではありませんか?」
「なぁに?」
「ずっと自分だけの人だったのに、他の人と共有する事になって、受け入れられないのでは無いですか?」
「王子の婚約者なのに? 私が婚約者にならなくても必ず三人の相手が選ばれるわ、カシム王子だけ一人の后妃になる事などないと思うけど」
「分かっていてもどうしようもないのでしょう。恋とはそういうものですよ、理屈で解決できるものではありません。お嬢様も人を好きになれば分かりますよ」
「そうかしら?」
「そうですよ。少なくとも王子様との婚約話を、お仕事の一つのように話したりする事は出来ないと思いますよ」
「恋をするほど彼の事を知らないもの」
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