5分で読める短編小説集 風刺編

あーく

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時間を食う悪魔

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はじめまして。

わたしは「時間を食う悪魔」を統べる者。

つまり、悪魔使いです。

今日はあなたに、特別なひと時を過ごしてもらいます。

あなたは「時間を食う悪魔」をご存知でしょうか?

この「時間を食う悪魔」は、一人の人間に一匹ついています。

そして、あなたの大切な時間を食べてしまうのです。

ほら、よく「時間を食う」なんて言うじゃないですか?

あれはこの悪魔が文字通り、時間を食べているのです。

今ご覧に見せましょう。

(パチンッ!!)

ほら、周りを見渡してみてください。

悪魔の姿が見えますか?

例えば、あの学校の隅で悪口を言い合っている女子高生たち。

彼女らの悪魔は少し太っていますね。

おや?よく見ると彼女たちも………。

いえ、失礼しました。

あそこの会社でふんぞりかえっている中年男性。

彼の悪魔もたいそう太っているようです。

悪魔にも中年太りなんてあるのでしょうか?

………冗談はさておき。

このように、人間が無駄な時間を過ごしているほど

悪魔はその時間を食い、太ってしまうのです。

悪魔にとっても肥満は良くないものでして

私の可愛い悪魔たちが太っていくのを見るのは耐えられないのです。

あそこの無駄な残業を強いられている新人君の悪魔も太っていますねぇ。

彼自身は頑張っているのですが、その仕事は必要なのでしょうか?

おや?でもその隣に座っている新人君の悪魔は健康的ですねぇ。

適度にサボってるのでしょうか?

あ、一つ言い忘れていましたが

人間が自分のために時間を使えば、悪魔は太ることがありません。

悪魔に食べられる前に人間が消費してしまうわけです。

ほら、そこの男子高校生。彼の悪魔はすごく健康的だ。

そこの自信に満ち溢れた表情の女性の悪魔もすごく綺麗だ。

悪魔はついている人間と似るのでしょうか?

ちなみに、自分のための時間というのは

例えば、勉強、運動、創作活動、趣味などです。

あと親切もここに入るでしょう。

休憩の時間は、悪魔が食べてしまうのですが、質が高い。

休憩はとり過ぎると時間の質が悪くなりますが

かといってとらなすぎると悪魔が痩せこけてしまいます。

休憩は適度に取ってください。

ここでお願いなのですが、私の可愛い悪魔を守ってくれませんか?

簡単なことです。自分のための時間を増やすだけでいいのです。

もし、人間が死んだときに悪魔が不健康だと………。

いえ、これ以上はよしましょう。

ご清聴ありがとうございました。

あなたに悪魔を見せられるのはここまで。

また会いましょう。

ん?

あなたの悪魔………。

私の話を聞いてる間に少し太っていませんか?
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