5分で読める短編小説集 風刺編

あーく

文字の大きさ
5 / 23

路肩の道化師

しおりを挟む
ジョンは学校の成績が悪く、下から数えたほうが早いほどだった。

運動も苦手で、大好きなサッカーも、チームの中で一番下手だった。

ジョンは呟いた。

「どうせ俺は落ちこぼれだ。天才にはかなわない。」


この世は不公平だ。

才能は生まれつき決まっている。

お金持ちはお金持ちになる運命で、

プロのスポーツ選手は勝ち続ける運命なのだ。

凡人には何もできやしない。


ジョンが家でテレビを観ていると、マジックをやっていた。

手品師が意気揚々と、客席に向かって話しかけている。

「さぁさぁ、ここに見えますのは、1枚のカーテン。そして、テーブルの上にサッカーボールがあります。これを消してご覧にいれましょう。」

そう言うと手品師は、カーテンでサッカーボールを隠した。

次の瞬間、手品師がカーテンを外すと、テーブルの上のサッカーボールが消えていた。

ジョンは思わず声が出た。

「すげぇ…。どうなってるんだ?」


手品師が一通りパフォーマンスを終えると、檀上に一人、ピエロの面を被った男が檀上に上がってきた。

手品師は驚いた表情で尋ねた。

「君は誰だい?迷子かな?」

アクシデントだろうか?それともそういう演出だろうか?

ピエロは手品師からカーテンとサッカーボールを奪い、手品師と全く同じことをして見せた。

「素晴らしい!彼に盛大な拍手を!」

ピエロは大きな拍手の中、会場を去っていった。

ジョンは不審に思っていた。

「これはきっと演出だろう。みんな騙されてるんだ。」


次の日、ジョンはお遣いを頼まれていた。

途中、広場に人だかりができていたので、見てみると、なんと昨日のピエロがリフティングをしていた。

プロほどではないが、常人とは思えないほどのボールさばきだった。

パフォーマンスが終わると、歓声とともに次々とチップが投げ込まれていった。

ジョンは興奮しながら駆け寄った。

「あなた!昨日テレビで出ていた方ですよね!どうしてこんなことができるんですか!?」

ピエロは答えた。

「僕は”モノマネ”が好きでね、プロの技を真似をしていくうちに色んな技が身に付いたんだ。もちろん最初はできなかったけど、だんだんと近づくのが嬉しくてね。時々、『自分は才能ないから』といって諦めてしまう人がいるけど、それは違う。だって凡人の僕でもできるんだよ?僕はただ、やり方を調べて、練習を続けたからできるようになったんだ。」


ジョンは家に帰ると、サッカーボールを抱えて外に飛び出した。

驚いた母は尋ねた。

「こんな時間にどこ行くの?」

ジョンは恥ずかしそうに答えた。

「ちょっと公園で練習してくる。」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ビキニに恋した男

廣瀬純七
SF
ビキニを着たい男がビキニが似合う女性の体になる話

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

処理中です...