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宗教勧誘の恐るべき手口
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あなたは駅前で聖書を配っている人を見たことがあるだろうか。
あるいは、聖書を片手に「あなたは幸せですか?」などと訪問してくる人でもいい。
これらの人を見ると「ああ、宗教の人だな」ということが一目でわかる。
しかし、もっとたちの悪い宗教勧誘を経験したのでここに記そうと思う。
ある昼のこと、駅前の道路を歩いていると若い二人の男性に声をかけられた。
「すみません。僕たち友達を待つのに暇をつぶせる場所を探しているんですけど――」
僕は答える。
「ちょっと遠いところに公園がありますし、ここからすぐ近くにはカラオケがありますけど――」
しかし、友人はすぐ来るので時間がかかるものは避けたいという。
「だったら僕も暇ですし、話でもします?」
僕も暇だったので、友達を待つ間に雑談することにした。
人と話す練習も兼ねて。
二人は新卒の世代で、一人はダンサーの経験があり、もう一人はこれから先生になるという。
今後、この二人を便宜上「ダンサー」と「新米教師」と呼ぶことにする。
しばらく雑談を交わした後、後日ダンサーとファミレスで会う約束をした。
新米教師は来ないらしい。
自分は友達が少ない方だが、人脈はあって損はないと思っている。
害もなさそうだったので、知らない人と出会うことに特に躊躇はなかった。
この二人から人脈が広がるかも、などと考えているうちに、どうやら二人の友人が来たようなのでその日は解散となった。
しかしこの時、あのような騒動を招くとは思わなかった。
約束の時間になると、ファミレスに到着した。
ファミレスには僕と、二人の男性が来ていた。
一人だけは先日と雑談していたダンサーの方だが、もう一人は先日いなかった人だった。
実は新米教師の代わりに別の人が来るということは事前に聞いていた。
僕たち三人はファミレスに入り、食事をしながら雑談を交わした。
話は弾み、一時間は経過したと思う、二人の様子がおかしくなってきた。
明らかにこちらが話すタイミングがなく、ずっと話のペースを握られている。
そして、先日会った男性の方が、富士山の絵が描かれている広告をカバンから取り出した。
(特定されるのでは?と心配されるかもしれないが、知ったこっちゃない。僕は同じような被害者を増やしたくない。)
「『南妙法蓮華経』というのを聞いたことがありますか?」
どうやら『南妙法蓮華経』と唱えると夢が叶うらしく、実際、この『何妙法蓮華経』のお陰でいい出来事が起こった人たちが身の回りにもいるらしかった。
ダンサーとその友人もその一人だった。
例えばダンサーは、「ダンサーになりたい」「TVに出たい」「俳優になりたい」という夢があったが、実際にバックダンサーになったり、TVに出たり、主役になったことがあったらしい。
僕は「夢が叶ったんならなんで今ここで僕と話してるの?ダンサーで忙しいんじゃないの?」という言葉が出そうになったが、かわいそうなので飲み込んだ。
ダンサーの家に、この宗派の人たちが信仰している仏が書いた掛け軸があるというので、ついて行くことにした。
宗教関係というと危ないイメージがあるが、僕は危険よりも「この宗派の人たちはどのような生き方をしているのだろうか?」ということに興味があった。
もちろん、入信する気は微塵もない。
いつかこの好奇心が身を滅ぼさないか心配する限りである。
ダンサーの家に着き、試しに『南妙法蓮華経』と唱えた。
この時「彼女が欲しい」と願ったが、半年経った今でも叶えていない。
当然だ。彼女を得るための行動をしていないのだから。
願いを叶えるには、ただ願うだけではなく、行動も必要なのだ。
お試しが終わり、運よく宗教の本を借りることに成功した。
これでこの宗派の人の考え方、宗教にハマる人の心理がわかる。
早速、本の内容と聞いた話の内容を照らし合わせてみた。
確かに、その考え方自体に矛盾はなかった。
しかし、現実と比べると矛盾だらけだった。
例えば、ゲームで「この雷魔法は勇者だけが使える」という設定があるとしよう。
ゲーム内では、確かに勇者だけが使える魔法であり、矛盾はなく、設定どおりである。
しかし、現実世界には勇者なんていないし、ゲームのような魔法が存在するかと言われると怪しい。
もしかしたら、これから現実世界でも魔法が出せるようになるかもしれないので、ないとも言い切れない。
そういった、現実世界でも通用するかどうかわからないような架空世界の設定集と同じように思えた。
話や考え方としては面白いが、現実世界では到底適用できそうにないマユツバものだ。
そもそも僕は既に科学という宗教に入っている。
この宗教に入信するということは、科学の教えに背くことになる。
こうして、宗教の勉強を終えた僕は本を返しに行った。
待ち合わせ場所は以前とは別のファミレスだ。
僕はダンサーと友人とで本で読んだ内容を照らし合わせ、科学的な見解を述べた。
論破タイムの始まりである。
僕は根拠を挙げつつ、一つずつ矛盾点を挙げていった。
二人は納得してくれるだろう。そう思っていた。
ダンサーの方は好奇心があり、寛容で、科学的な考え方をよく聞いてくれた。
しかし、友人はあくまでも自分の信じていることは曲げない様子だった。
「僕は自分の目の前で起こったことしか信じないので」
じゃあ空気は見えないから空気は存在しないことになるよね。
「ほら、最近のニュースでも若者の自殺とか増えているじゃないですか」
そもそもニュースの情報自体がネガティブに偏ってるからな。CMの商品を売るための不安商法というやつだ。
自分の信じているものを信じればいいと思って止めはしなかったが、一つだけ頭にきた発言があった。
それは、科学を冒涜するような発言だった。
例えば、あなたが普段使っているPCやスマホは、科学の結晶だ。
人類が火や石器などの道具を使い始めてからここまで発展したのは科学のお陰だ。
それを、全部分かった気になって「科学は無意味」「この仏の考えは真実。今の科学ではまだ説明できないだけ」など言って嘲笑していたので頭にきた。
全人類が積み重ねた努力をけなしていいわけがない。
話にならない。
この日を境に二人との連絡を取ることをやめた。
僕はここで三つのことを学んだ。
一つは、この宗派の考え方。
二つは、人は自分が信じたいものを信じ、それを覆すのは難しいこと。
三つは、論理的にものを考えられない人もいるということ。
しかし、悲劇はここで終わらなかった。
あれから半年が経った。
僕が買い物をしていると、一人の男性が話しかけてきた。
その男性はゲームやアニメが好きで、僕とも気が合いそうだった。
僕はやはり人脈が広がればいいなと思い、SNSのアカウント情報も交換した。
翌日ファミレスで会う約束もした。
ファミレスに入り、食事をしながら雑談していると、もう一人の男が入ってきた。
その男は男性の知人のようだった。
男性は話を続けた。
知人はずっと黙っていて、腕を組んだり、あごに手を突いたりしている。
僕は退屈そうにしている知人に話を振ろうと思っても、男性の話が長く、切り出すタイミングがつかめない。
長い。
話が長い。
終わらない。
すると突然、あのキーワードをここで再び聞くことになった。
「『南妙法蓮華経』というのを聞いたことがありますか?」
もういいよ!その話は!
僕はただ固まっていることしかできなかった。
どうやってここから逃げようかと、そればかり考えていた。
男は固まっている僕を不思議に感じながらも、例の富士山の広告を出してきた。
「どうしました?もしかして聞いたことあります?」
うん!聞いたことあるもなにも、本まで読んで勉強したからな!
知人が口を開いた。
「あなたはこの話を聞きに来たんですよ?」
「聞きに来たんですよ?」じゃねーよ!
んなこと言ってねーし!聞いてねーし!
僕はふつふつと込み上げてくる怒りを抑えながら立ち上がり、千円札をテーブルの上に叩きつけた。
「お代多く払うんで、帰らせていただきます」
そして僕は店を出たのだった。
帰り道、僕は妙な苛立ちを覚え、地団太を踏んだ。
「くそ!ふざけんな!」
これは、自分が不幸な人間と見られているという悔しさからだろうか。
それとも、せっかく友達になれそうな人に裏切られた感覚からだろうか。
確かに友達は少ないが、親友と呼べる人はちゃんといるので、現在の交友関係に不満はない。
友達が少ないからってバカにすんな。
一番の驚きは、宗派も手口も全く一緒ということだった。
突然話しかけ、打ち解けてきたら近い日に具体的な話をする。
話をするときは必ず二人で来る。
一人がだらだらと話し、こちらに会話のボールを持たせない。
いざ本題に入り、断ろうとすると相方が強気な態度をとって断れない空気を作る。
家庭科の教科書でしか見たことがないシチュエーションだ。
しかし、実在した。
宗教の人は、ここで「断れない」人を狙ってくると思う。
僕も「断れない」人のように見られているのだろうか。
あいにくだが、僕は何の躊躇もなく「断れる」部類だ。
ここで負けて入信してしまうと、大事な人と過ごす時間が奪われ、時にお金を搾取されることもある。
唯一のメリットと言えば、今後ずっと使える話のネタができるくらいだ。
今の僕のように。
ここまで読んでくださったあなたも注意してほしい。
特に、埼玉県朝霞市に仏が書いたとされる掛け軸があるので、東武東上線、副都心線近辺で声をかけられた時は注意されたし。
あるいは、聖書を片手に「あなたは幸せですか?」などと訪問してくる人でもいい。
これらの人を見ると「ああ、宗教の人だな」ということが一目でわかる。
しかし、もっとたちの悪い宗教勧誘を経験したのでここに記そうと思う。
ある昼のこと、駅前の道路を歩いていると若い二人の男性に声をかけられた。
「すみません。僕たち友達を待つのに暇をつぶせる場所を探しているんですけど――」
僕は答える。
「ちょっと遠いところに公園がありますし、ここからすぐ近くにはカラオケがありますけど――」
しかし、友人はすぐ来るので時間がかかるものは避けたいという。
「だったら僕も暇ですし、話でもします?」
僕も暇だったので、友達を待つ間に雑談することにした。
人と話す練習も兼ねて。
二人は新卒の世代で、一人はダンサーの経験があり、もう一人はこれから先生になるという。
今後、この二人を便宜上「ダンサー」と「新米教師」と呼ぶことにする。
しばらく雑談を交わした後、後日ダンサーとファミレスで会う約束をした。
新米教師は来ないらしい。
自分は友達が少ない方だが、人脈はあって損はないと思っている。
害もなさそうだったので、知らない人と出会うことに特に躊躇はなかった。
この二人から人脈が広がるかも、などと考えているうちに、どうやら二人の友人が来たようなのでその日は解散となった。
しかしこの時、あのような騒動を招くとは思わなかった。
約束の時間になると、ファミレスに到着した。
ファミレスには僕と、二人の男性が来ていた。
一人だけは先日と雑談していたダンサーの方だが、もう一人は先日いなかった人だった。
実は新米教師の代わりに別の人が来るということは事前に聞いていた。
僕たち三人はファミレスに入り、食事をしながら雑談を交わした。
話は弾み、一時間は経過したと思う、二人の様子がおかしくなってきた。
明らかにこちらが話すタイミングがなく、ずっと話のペースを握られている。
そして、先日会った男性の方が、富士山の絵が描かれている広告をカバンから取り出した。
(特定されるのでは?と心配されるかもしれないが、知ったこっちゃない。僕は同じような被害者を増やしたくない。)
「『南妙法蓮華経』というのを聞いたことがありますか?」
どうやら『南妙法蓮華経』と唱えると夢が叶うらしく、実際、この『何妙法蓮華経』のお陰でいい出来事が起こった人たちが身の回りにもいるらしかった。
ダンサーとその友人もその一人だった。
例えばダンサーは、「ダンサーになりたい」「TVに出たい」「俳優になりたい」という夢があったが、実際にバックダンサーになったり、TVに出たり、主役になったことがあったらしい。
僕は「夢が叶ったんならなんで今ここで僕と話してるの?ダンサーで忙しいんじゃないの?」という言葉が出そうになったが、かわいそうなので飲み込んだ。
ダンサーの家に、この宗派の人たちが信仰している仏が書いた掛け軸があるというので、ついて行くことにした。
宗教関係というと危ないイメージがあるが、僕は危険よりも「この宗派の人たちはどのような生き方をしているのだろうか?」ということに興味があった。
もちろん、入信する気は微塵もない。
いつかこの好奇心が身を滅ぼさないか心配する限りである。
ダンサーの家に着き、試しに『南妙法蓮華経』と唱えた。
この時「彼女が欲しい」と願ったが、半年経った今でも叶えていない。
当然だ。彼女を得るための行動をしていないのだから。
願いを叶えるには、ただ願うだけではなく、行動も必要なのだ。
お試しが終わり、運よく宗教の本を借りることに成功した。
これでこの宗派の人の考え方、宗教にハマる人の心理がわかる。
早速、本の内容と聞いた話の内容を照らし合わせてみた。
確かに、その考え方自体に矛盾はなかった。
しかし、現実と比べると矛盾だらけだった。
例えば、ゲームで「この雷魔法は勇者だけが使える」という設定があるとしよう。
ゲーム内では、確かに勇者だけが使える魔法であり、矛盾はなく、設定どおりである。
しかし、現実世界には勇者なんていないし、ゲームのような魔法が存在するかと言われると怪しい。
もしかしたら、これから現実世界でも魔法が出せるようになるかもしれないので、ないとも言い切れない。
そういった、現実世界でも通用するかどうかわからないような架空世界の設定集と同じように思えた。
話や考え方としては面白いが、現実世界では到底適用できそうにないマユツバものだ。
そもそも僕は既に科学という宗教に入っている。
この宗教に入信するということは、科学の教えに背くことになる。
こうして、宗教の勉強を終えた僕は本を返しに行った。
待ち合わせ場所は以前とは別のファミレスだ。
僕はダンサーと友人とで本で読んだ内容を照らし合わせ、科学的な見解を述べた。
論破タイムの始まりである。
僕は根拠を挙げつつ、一つずつ矛盾点を挙げていった。
二人は納得してくれるだろう。そう思っていた。
ダンサーの方は好奇心があり、寛容で、科学的な考え方をよく聞いてくれた。
しかし、友人はあくまでも自分の信じていることは曲げない様子だった。
「僕は自分の目の前で起こったことしか信じないので」
じゃあ空気は見えないから空気は存在しないことになるよね。
「ほら、最近のニュースでも若者の自殺とか増えているじゃないですか」
そもそもニュースの情報自体がネガティブに偏ってるからな。CMの商品を売るための不安商法というやつだ。
自分の信じているものを信じればいいと思って止めはしなかったが、一つだけ頭にきた発言があった。
それは、科学を冒涜するような発言だった。
例えば、あなたが普段使っているPCやスマホは、科学の結晶だ。
人類が火や石器などの道具を使い始めてからここまで発展したのは科学のお陰だ。
それを、全部分かった気になって「科学は無意味」「この仏の考えは真実。今の科学ではまだ説明できないだけ」など言って嘲笑していたので頭にきた。
全人類が積み重ねた努力をけなしていいわけがない。
話にならない。
この日を境に二人との連絡を取ることをやめた。
僕はここで三つのことを学んだ。
一つは、この宗派の考え方。
二つは、人は自分が信じたいものを信じ、それを覆すのは難しいこと。
三つは、論理的にものを考えられない人もいるということ。
しかし、悲劇はここで終わらなかった。
あれから半年が経った。
僕が買い物をしていると、一人の男性が話しかけてきた。
その男性はゲームやアニメが好きで、僕とも気が合いそうだった。
僕はやはり人脈が広がればいいなと思い、SNSのアカウント情報も交換した。
翌日ファミレスで会う約束もした。
ファミレスに入り、食事をしながら雑談していると、もう一人の男が入ってきた。
その男は男性の知人のようだった。
男性は話を続けた。
知人はずっと黙っていて、腕を組んだり、あごに手を突いたりしている。
僕は退屈そうにしている知人に話を振ろうと思っても、男性の話が長く、切り出すタイミングがつかめない。
長い。
話が長い。
終わらない。
すると突然、あのキーワードをここで再び聞くことになった。
「『南妙法蓮華経』というのを聞いたことがありますか?」
もういいよ!その話は!
僕はただ固まっていることしかできなかった。
どうやってここから逃げようかと、そればかり考えていた。
男は固まっている僕を不思議に感じながらも、例の富士山の広告を出してきた。
「どうしました?もしかして聞いたことあります?」
うん!聞いたことあるもなにも、本まで読んで勉強したからな!
知人が口を開いた。
「あなたはこの話を聞きに来たんですよ?」
「聞きに来たんですよ?」じゃねーよ!
んなこと言ってねーし!聞いてねーし!
僕はふつふつと込み上げてくる怒りを抑えながら立ち上がり、千円札をテーブルの上に叩きつけた。
「お代多く払うんで、帰らせていただきます」
そして僕は店を出たのだった。
帰り道、僕は妙な苛立ちを覚え、地団太を踏んだ。
「くそ!ふざけんな!」
これは、自分が不幸な人間と見られているという悔しさからだろうか。
それとも、せっかく友達になれそうな人に裏切られた感覚からだろうか。
確かに友達は少ないが、親友と呼べる人はちゃんといるので、現在の交友関係に不満はない。
友達が少ないからってバカにすんな。
一番の驚きは、宗派も手口も全く一緒ということだった。
突然話しかけ、打ち解けてきたら近い日に具体的な話をする。
話をするときは必ず二人で来る。
一人がだらだらと話し、こちらに会話のボールを持たせない。
いざ本題に入り、断ろうとすると相方が強気な態度をとって断れない空気を作る。
家庭科の教科書でしか見たことがないシチュエーションだ。
しかし、実在した。
宗教の人は、ここで「断れない」人を狙ってくると思う。
僕も「断れない」人のように見られているのだろうか。
あいにくだが、僕は何の躊躇もなく「断れる」部類だ。
ここで負けて入信してしまうと、大事な人と過ごす時間が奪われ、時にお金を搾取されることもある。
唯一のメリットと言えば、今後ずっと使える話のネタができるくらいだ。
今の僕のように。
ここまで読んでくださったあなたも注意してほしい。
特に、埼玉県朝霞市に仏が書いたとされる掛け軸があるので、東武東上線、副都心線近辺で声をかけられた時は注意されたし。
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