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第7話 あれ?こっれて騙された?
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しばらくドアの前でシャロンが騒いでいたが、タッセルをひっかけたドアノブが全く動かない事で、俺の本気を悟ったらしい。
ようやく静かになったので、俺は寝ることにした。なんでかって、そりゃ何となくだるい体のまま朝食をとって、その後廊下を全力で走って、ソファーやテーブルを動かしたから疲れてしまったのだ。
まぁ、俺はまだ六歳児だからな。そんなに体力だってあるわけではない。いつもならメイドのマリがお茶でも入れてくれるのだろうけれど、俺はマリのことも締め出してしまったから、どうしようもない。魔力はあるけれど使い方が分からないから、お茶を入れることが出来ないのだ。洗面所があるから、そこで水を飲むことぐらいはできるので、 コップで水を飲んで俺はベッドに潜り込んだ。
朝食を食べに行っている間に、マリが整えてくれたベッドはふかふかで、俺はそのふかふかに包まれて直ぐに眠りについた。
やはり昨日からの疲れを引きずっていたのだろう、俺の眠りはものすごく深いものになったようだ。
「……な」
誰かが耳元で何かを言っているようだ。
だが、ものすごく遠くに聞こえる感じがして、何を言っているのか分からない。ただ、その声はシャロンみたいな高い声ではなく、アランみたいな低すぎる声でもなかった。普段耳にしない感じのする声は、威圧的ではなく、耳通りのいい声だった。ただ、本当に何を言っているのかまるで聞き取れないだけなのだ。
「んっ、ううん」
寝心地は非常にいいのだけれど、何か奇妙な感覚が皮膚にあって、俺は寝返りを打ちながらゆっくりと目を開けた。なぜ、そんなことをしたかって?それは本能からの警告だったのだ。
だって、寝返りを打ちながらゆっくり目を開けると、人の気配を感じたからだ。しかもそれはマリではなかった。もちろんシャロンでもアランでもない。見知らぬ誰かの気配だった。
背中に感じる視線について考えてみる。この部屋の扉は俺が塞いだはずだ。シャロンが鍵を持ってきたけれど、タッセルも使ったから扉はビクともしないはずだ。だから、それを無理やり開ければ相当な音がしたはずで、寝ていた俺にも聞こえたはずなのだ。
なのに、なんの音もしていなくて、俺はぐっすり眠っていて、いま誰かの気配で目が覚めたところだ。いったい誰が俺の背後にいるのだろう?多分だけど、背後にいる人物は俺が起きていることに気がついている気がする。
「んっ」
俺は意を決して反対側へと寝返りをうった。念のため布団を抱きしめた体勢をキープする。布団で顔を隠しながら相手を伺ってみた。が、焦げ茶色の髪をした男の姿が見えた。アランの髪が茶色だが、ここまで濃くはない。それに、アランより小さい。
「だ、誰?」
俺は驚いて飛び起きた。そのままの勢いで後ろに下がって距離をとる。部屋を見れば俺の作ったバリケードはそのままだった。
「え?は?どこ、から?」
俺が思ったままの言葉を口にすると、焦げ茶色の髪をした男は笑いながら答えた。
「窓だよ。鍵が開いていた」
そう言って示された窓は、俺がタッセルを取ってしまったから、カーテンが風になびいていた。確かに、窓の鍵は確認してはいなかったけれど……
「いや、ここ二階」
俺の部屋は二階にあって、バルコニーがついてはいるが…隣の部屋と繋がっている訳ではない。各部屋ごとに独立したバルコニーであって……鍵が開いていたからと言って入れる訳では、ないはず……
もちろん、俺の部屋の窓のそばに木などは植えられてなどいない。
「風魔法を使って登ったんだ」
あっさりと、実にあっさりと答えを言われてしまった。
が、魔法ですと?
そもそも、こいつ誰なんだ?色の系統としてはアランに近しいのだが、全く顔の造形が似ていない。魔法が使えるということは学園に通っているということだ。俺よりははるかに大きいけれど、成人しているようには見えない。
「って、誰?」
俺は今更なことを聞いてみた。堂々と庭に面したバルコニーに登り窓から侵入したのだから、アランもシャロンも知っているはずだ。身なりも随分といい。
「ん?」
俺がそんなことを口にしたら、焦げ茶の髪をした男は少し眉根を寄せて、困ったような顔をした。
「そうか……」
なんて、小さく呟くと、俺の方を見て背筋を正した。
「俺はジークフリート・ハスヴェル。昨日は泣かせてしまってすまなかった。お詫びをしにきたら、その、なんだ?取り込み中だったようで、な」
うええええええええ、ジークフリート?
この人が、ジークフリート?いやいや、変わりすぎでしょ昨日は絶対零度の冷気をまとっていて、閻魔大王みたいな顔してたじゃん。
俺が訝しげな目で見たからだろうか、ジークフリートが苦笑した。
「いや、本当に昨日はすまなかった。馴れ馴れしく弟の手を握る奴がいたから説教してやろうと思ったんだ」
ブラコンだ。
ブラコンだったんだ。確かに、アルトがそんなことを言っていたような気がする。まあ確かに、あれだけのゴウジャス美人な弟がいたら警戒はするよな。その結果ブラコンになるのはもはや当たり前のことだろう。
「あ、そ、そう、だった、ん、ですね。それは、失礼しました」
と、とりあえず謝っておくのがいいよな?いやもう、ブラコンのお兄様を怒らせたんじゃあ仕方がないよな。シャロンの思惑どうりになってしまった感が若干あるが、詫びる内容が違うからいいのだ。
「いや、謝るのは俺の方だ。大人気なくも年端のいかない、自分の年齢の半分にも満たない未就学児に冷気を浴びせるだなんて、許されることではない」
おおおおお、頭下げたよ。
こんなのシャロンが見たら俺のこと殴りつけてきただろうな。
「で、お詫びにと思ってケーキを買ってきたんだ。我が公爵家で懇意にしている店でな、母上のおきにいりなんだ」
そう言ってジークフリートが示した先には、可愛らしい箱が鎮座していた。場所はナイトテーブルだ。
「部屋がこんななんで、な」
ジークフリートがなんだ気まずそうに言ってきた。そ、そうですよね、俺の部屋、結構やばいよね?
「ケーキ……」
朝食を中途半端に食べただけの俺は、絶妙に腹が減っていた。時計をチラと見れば昼前ではあったけれど……体を動かしたから、腹減ってんだよな。
「これでは食べられないだろう?」
「か、かたずけ、る。ます」
俺は慌てて返事をすると、ベッドから飛び降り、ローテーブルに手をかけた。すると、ジークフリートが反対側を掴んだ。
「手伝おう」
そう言って、ジークフリートがローテーブルを持ち上げたので、二人でローテーブルをおおよその場所に戻す。一人がけのソファはなんとジークフリートが一人で戻してくれた。
「お茶は俺が入れるから」
そう言ってジークフリートは勝手知ったるな感じでお茶のワゴンを押してきた。貴族の家の部屋なんて、広さの違いぐらいで似たようなもんなのかな?ワゴンから皿やフォークも出して、ローテーブルの上は小さなお茶会になっていた。
「お茶……」
魔法が使えるのってすごいんだなって、思った。空のポットに茶葉を入れて、魔法でお湯を入れたのだ。そうしてカップにお茶が注がれた。毎日マリがお茶を入れてくれるけど、その工程は見ていなかったので、改めて見てみるとすごいもんだ。
「ああ、まだ魔法が使えないんだったな」
そう言いながらジークフリートは皿の上にケーキを乗せた。たくさんのフルーツが乗せられていて、キラキラとしている。多分フルーツタルトだろう。勧められて一口食べてみると、フルーツの下にはカスタードクリームが敷かれていた。
「美味しい」
フルーツの名前はわからないけれど、色鮮やかで味もしっかりしている。それに合わせているカスタードクリームは割とあっさり目でしつこくなかった。
「よかった」
パクパク食べる俺を見て、ジークフリートがそう呟いた。
公爵家のご子息が単身で格下の伯爵家に菓子折りを持って謝りに来るなんて、シャロンじゃないけれど前代未聞だろう。まあ、ちびっ子を泣かせてしまったから、公爵家として後腐れのないように。ってことなんだろうけどな。
「美味しかった」
腹が減っていたのと、あまりの美味しさに、俺はあっという間に食べてしまった。
「もうすぐ昼食になるかと思うが……」
ジークフリートはチラと時計を見て、それから俺を見て、そうしてケーキが入っていた箱を見た。
「伯爵夫妻とご一緒の予定だったので……」
ジークフリートがそんなことを言うので、俺は思わず箱を覗き込んだ。
「ケーキ……」
箱の中には、前世の記憶でいうところのチョコレートケーキが二つ。
「た、食べたいのか?」
ジークフリートに聞かれて、俺は無言で頷いた。
「んっ、た、食べてしまえばなかったも同然だな」
ジークフリートは拳を口に当てて考えるような仕草をして、それから箱の中からケーキを取り出した。そうして空になった箱を丁寧に畳んだ。
「いただきます」
俺はケーキにフォークを突き立てると、小さく一口分を急いで口に入れた。ほろ苦いが上品な甘さが口の中に広がる。ああ、この世界にもチョコレートが存在したんだ。あまりの美味しさに俺は目を閉じて堪能した。そのあとはひたすら食べ続けた。ジークフリートが自分の分をくれようとしたが、流石にそれは申し訳ないので辞退した。
ジークフリートは学園の話を俺に聞かせてくれた。ジークフリートは十三歳なので中等部に所属するのだが、上位貴族の子どもが通う小等部とは敷地が繋がっているそうで、アルトとは一緒に登校する予定なんだそうた。ただ、帰りの時間は合わないため、それだけが心配だと言っていた。
完全にブラコンなんだと思う。
今日こうしてきたのも、アルトから怒られたのが一番大きい理由だそうで、「友だち一日目にして嫌われた」と泣きながら怒鳴られたとかで……ブラコンって大変なんだな。
ケーキを二個も食べたから、昼食は軽めにしてもらい、ジークフリートがもう一つ持ってきた焼き菓子の箱を開けて、アランとシャロンと一緒にお茶にした。シャロンが終始ご機嫌で、俺とアランは半目だったけどな。
ようやく静かになったので、俺は寝ることにした。なんでかって、そりゃ何となくだるい体のまま朝食をとって、その後廊下を全力で走って、ソファーやテーブルを動かしたから疲れてしまったのだ。
まぁ、俺はまだ六歳児だからな。そんなに体力だってあるわけではない。いつもならメイドのマリがお茶でも入れてくれるのだろうけれど、俺はマリのことも締め出してしまったから、どうしようもない。魔力はあるけれど使い方が分からないから、お茶を入れることが出来ないのだ。洗面所があるから、そこで水を飲むことぐらいはできるので、 コップで水を飲んで俺はベッドに潜り込んだ。
朝食を食べに行っている間に、マリが整えてくれたベッドはふかふかで、俺はそのふかふかに包まれて直ぐに眠りについた。
やはり昨日からの疲れを引きずっていたのだろう、俺の眠りはものすごく深いものになったようだ。
「……な」
誰かが耳元で何かを言っているようだ。
だが、ものすごく遠くに聞こえる感じがして、何を言っているのか分からない。ただ、その声はシャロンみたいな高い声ではなく、アランみたいな低すぎる声でもなかった。普段耳にしない感じのする声は、威圧的ではなく、耳通りのいい声だった。ただ、本当に何を言っているのかまるで聞き取れないだけなのだ。
「んっ、ううん」
寝心地は非常にいいのだけれど、何か奇妙な感覚が皮膚にあって、俺は寝返りを打ちながらゆっくりと目を開けた。なぜ、そんなことをしたかって?それは本能からの警告だったのだ。
だって、寝返りを打ちながらゆっくり目を開けると、人の気配を感じたからだ。しかもそれはマリではなかった。もちろんシャロンでもアランでもない。見知らぬ誰かの気配だった。
背中に感じる視線について考えてみる。この部屋の扉は俺が塞いだはずだ。シャロンが鍵を持ってきたけれど、タッセルも使ったから扉はビクともしないはずだ。だから、それを無理やり開ければ相当な音がしたはずで、寝ていた俺にも聞こえたはずなのだ。
なのに、なんの音もしていなくて、俺はぐっすり眠っていて、いま誰かの気配で目が覚めたところだ。いったい誰が俺の背後にいるのだろう?多分だけど、背後にいる人物は俺が起きていることに気がついている気がする。
「んっ」
俺は意を決して反対側へと寝返りをうった。念のため布団を抱きしめた体勢をキープする。布団で顔を隠しながら相手を伺ってみた。が、焦げ茶色の髪をした男の姿が見えた。アランの髪が茶色だが、ここまで濃くはない。それに、アランより小さい。
「だ、誰?」
俺は驚いて飛び起きた。そのままの勢いで後ろに下がって距離をとる。部屋を見れば俺の作ったバリケードはそのままだった。
「え?は?どこ、から?」
俺が思ったままの言葉を口にすると、焦げ茶色の髪をした男は笑いながら答えた。
「窓だよ。鍵が開いていた」
そう言って示された窓は、俺がタッセルを取ってしまったから、カーテンが風になびいていた。確かに、窓の鍵は確認してはいなかったけれど……
「いや、ここ二階」
俺の部屋は二階にあって、バルコニーがついてはいるが…隣の部屋と繋がっている訳ではない。各部屋ごとに独立したバルコニーであって……鍵が開いていたからと言って入れる訳では、ないはず……
もちろん、俺の部屋の窓のそばに木などは植えられてなどいない。
「風魔法を使って登ったんだ」
あっさりと、実にあっさりと答えを言われてしまった。
が、魔法ですと?
そもそも、こいつ誰なんだ?色の系統としてはアランに近しいのだが、全く顔の造形が似ていない。魔法が使えるということは学園に通っているということだ。俺よりははるかに大きいけれど、成人しているようには見えない。
「って、誰?」
俺は今更なことを聞いてみた。堂々と庭に面したバルコニーに登り窓から侵入したのだから、アランもシャロンも知っているはずだ。身なりも随分といい。
「ん?」
俺がそんなことを口にしたら、焦げ茶の髪をした男は少し眉根を寄せて、困ったような顔をした。
「そうか……」
なんて、小さく呟くと、俺の方を見て背筋を正した。
「俺はジークフリート・ハスヴェル。昨日は泣かせてしまってすまなかった。お詫びをしにきたら、その、なんだ?取り込み中だったようで、な」
うええええええええ、ジークフリート?
この人が、ジークフリート?いやいや、変わりすぎでしょ昨日は絶対零度の冷気をまとっていて、閻魔大王みたいな顔してたじゃん。
俺が訝しげな目で見たからだろうか、ジークフリートが苦笑した。
「いや、本当に昨日はすまなかった。馴れ馴れしく弟の手を握る奴がいたから説教してやろうと思ったんだ」
ブラコンだ。
ブラコンだったんだ。確かに、アルトがそんなことを言っていたような気がする。まあ確かに、あれだけのゴウジャス美人な弟がいたら警戒はするよな。その結果ブラコンになるのはもはや当たり前のことだろう。
「あ、そ、そう、だった、ん、ですね。それは、失礼しました」
と、とりあえず謝っておくのがいいよな?いやもう、ブラコンのお兄様を怒らせたんじゃあ仕方がないよな。シャロンの思惑どうりになってしまった感が若干あるが、詫びる内容が違うからいいのだ。
「いや、謝るのは俺の方だ。大人気なくも年端のいかない、自分の年齢の半分にも満たない未就学児に冷気を浴びせるだなんて、許されることではない」
おおおおお、頭下げたよ。
こんなのシャロンが見たら俺のこと殴りつけてきただろうな。
「で、お詫びにと思ってケーキを買ってきたんだ。我が公爵家で懇意にしている店でな、母上のおきにいりなんだ」
そう言ってジークフリートが示した先には、可愛らしい箱が鎮座していた。場所はナイトテーブルだ。
「部屋がこんななんで、な」
ジークフリートがなんだ気まずそうに言ってきた。そ、そうですよね、俺の部屋、結構やばいよね?
「ケーキ……」
朝食を中途半端に食べただけの俺は、絶妙に腹が減っていた。時計をチラと見れば昼前ではあったけれど……体を動かしたから、腹減ってんだよな。
「これでは食べられないだろう?」
「か、かたずけ、る。ます」
俺は慌てて返事をすると、ベッドから飛び降り、ローテーブルに手をかけた。すると、ジークフリートが反対側を掴んだ。
「手伝おう」
そう言って、ジークフリートがローテーブルを持ち上げたので、二人でローテーブルをおおよその場所に戻す。一人がけのソファはなんとジークフリートが一人で戻してくれた。
「お茶は俺が入れるから」
そう言ってジークフリートは勝手知ったるな感じでお茶のワゴンを押してきた。貴族の家の部屋なんて、広さの違いぐらいで似たようなもんなのかな?ワゴンから皿やフォークも出して、ローテーブルの上は小さなお茶会になっていた。
「お茶……」
魔法が使えるのってすごいんだなって、思った。空のポットに茶葉を入れて、魔法でお湯を入れたのだ。そうしてカップにお茶が注がれた。毎日マリがお茶を入れてくれるけど、その工程は見ていなかったので、改めて見てみるとすごいもんだ。
「ああ、まだ魔法が使えないんだったな」
そう言いながらジークフリートは皿の上にケーキを乗せた。たくさんのフルーツが乗せられていて、キラキラとしている。多分フルーツタルトだろう。勧められて一口食べてみると、フルーツの下にはカスタードクリームが敷かれていた。
「美味しい」
フルーツの名前はわからないけれど、色鮮やかで味もしっかりしている。それに合わせているカスタードクリームは割とあっさり目でしつこくなかった。
「よかった」
パクパク食べる俺を見て、ジークフリートがそう呟いた。
公爵家のご子息が単身で格下の伯爵家に菓子折りを持って謝りに来るなんて、シャロンじゃないけれど前代未聞だろう。まあ、ちびっ子を泣かせてしまったから、公爵家として後腐れのないように。ってことなんだろうけどな。
「美味しかった」
腹が減っていたのと、あまりの美味しさに、俺はあっという間に食べてしまった。
「もうすぐ昼食になるかと思うが……」
ジークフリートはチラと時計を見て、それから俺を見て、そうしてケーキが入っていた箱を見た。
「伯爵夫妻とご一緒の予定だったので……」
ジークフリートがそんなことを言うので、俺は思わず箱を覗き込んだ。
「ケーキ……」
箱の中には、前世の記憶でいうところのチョコレートケーキが二つ。
「た、食べたいのか?」
ジークフリートに聞かれて、俺は無言で頷いた。
「んっ、た、食べてしまえばなかったも同然だな」
ジークフリートは拳を口に当てて考えるような仕草をして、それから箱の中からケーキを取り出した。そうして空になった箱を丁寧に畳んだ。
「いただきます」
俺はケーキにフォークを突き立てると、小さく一口分を急いで口に入れた。ほろ苦いが上品な甘さが口の中に広がる。ああ、この世界にもチョコレートが存在したんだ。あまりの美味しさに俺は目を閉じて堪能した。そのあとはひたすら食べ続けた。ジークフリートが自分の分をくれようとしたが、流石にそれは申し訳ないので辞退した。
ジークフリートは学園の話を俺に聞かせてくれた。ジークフリートは十三歳なので中等部に所属するのだが、上位貴族の子どもが通う小等部とは敷地が繋がっているそうで、アルトとは一緒に登校する予定なんだそうた。ただ、帰りの時間は合わないため、それだけが心配だと言っていた。
完全にブラコンなんだと思う。
今日こうしてきたのも、アルトから怒られたのが一番大きい理由だそうで、「友だち一日目にして嫌われた」と泣きながら怒鳴られたとかで……ブラコンって大変なんだな。
ケーキを二個も食べたから、昼食は軽めにしてもらい、ジークフリートがもう一つ持ってきた焼き菓子の箱を開けて、アランとシャロンと一緒にお茶にした。シャロンが終始ご機嫌で、俺とアランは半目だったけどな。
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