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アリス目線3
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普段は誰も来ないと言うのに、今日は突然第二皇子殿下であるリヒト様がジークフリート様を連れて現れた。王子様らしい物言いに思わず私の口から出てきた言葉は、ゲームの中で主人公が言っていた台詞だった。これがゲームの強制力なのかと思いつつも、こんな恥ずかしいセリフを口にできるメンタル、さすがは主人公だしこんなこと思えるのってやはり日本人ならではだと思う。
もちろん、リヒト様は攻略対象者だからこうやって好感度を上げていくのだけれど、私は例え第二王子とは言えど、王子様と恋愛なんてしたくはないし、まして攻略なんて以ての外だ。そんなわけで咄嗟に背後で空気としていたジークフリート様に話を振った。もちろん、こんなことはシナリオ上ない話だ。一応ジークフリート様も攻略対象者ではあるけれど、リヒト様を攻略中にジークフリート様を攻略できない仕様になっていたのだ。やはり腐女子にとっては主従大事だからである。
それはもちろん、主従の間で揺れ動く私。なんてシュチュエーションも美味しいのだけれど、ジークフリート様には婚約者であるセレスティン様がいらっしゃるため、同時攻略を進めてしまうとシナリオ的に難しい事が起きるのだろう。運営都合かもしれないが、とにかく同時攻略が出来ないことを逆手にとって、私は一か八かの勝負に出たのだ。ちゃんとジークフリート様は反応してくれたし、リヒト様は何やら勝手に納得してくれた。
そうしてようやく私は教室を抜け出すことに成功してのだった。片手には雑巾を持ったままだけど。
「薔薇、薔薇の花はどうなっているかしら?」
たどり着いた小さな温室はひっそりとしていた。ゲームの仕様で訪れる人が誰もいない寂しい温室となっているからだ。私がこうして朝に温室で薔薇のチェックをするようになったのにはわけがある。受け様筆頭のセレスティン様が昼休みに来るようになったからだ。セレスティン様より早く状況を把握しておく必要があるのだ。前世が日本人のおじさんらしいセレスティン様は、このゲームの世界について何もご存知では無い。だから、教えて差し上げるしかないのだ。
「……うそ……うそでしょ」
私は目の前の光景を受け入れられなくて、ガッカリと膝から崩れ落ちた。昨日まで何も無かった緑の葉の中に、赤いつぼみがふっくらとその存在を誇示しているのだ。まったくもって信じられない。いや、その前にあの程度で好感度が上がるとか、王子のくせしてちょろすぎる。まぁ、だからこそお気に入りカプを成立させることに心血を注いだのだけれどね。
などと遠い目をしてしまったけれど、これは困った状況になってしまった。私はあくまでも推しのリバカプを成立させてこの目で見たいのてすよ。そう、デヴィット様とモリル様の攻め様によるリバカプだ。セレスティン様には申し訳ないけれど、ぶっちゃけセレスティン様がジークフリート様と婚約破棄出来なくても私的にはなんら問題ない。なぜならセレスティン様は受け様筆頭であるから、例えジークフリート様との婚約を解消したとしても女の子と結婚なんて出来ないのだ。
そう、私は知っている。
セレスティン様がジークフリート様との婚約を破棄する時、それはリヒト様と結婚する時である。そう、公爵家から王族へとランクアップするだけなのだ。リヒト様は第二王子であるから、無益な後継争いの火種を無くすべく、王族でありながら同性婚を選ばれるのだ。そうなったが最後、セレスティン様は魔道具を使わない限り妊娠することがないため、それはそれは素晴らしいスチルを量産する結末を迎えられるのだ。と、言うことは決してセレスティン様のお耳に入れるわけにはいかない。だからこそのこうして毎朝の温室チェックに来ているのだけれど、不覚。
「せめてこの赤いつぼみが青いつぼみ寄りにあれば良かったのに」
私は手を伸ばし、そっとまだ固い赤いつぼみに触れた。もちろん、青いつぼみも緑のつぼみもまだ固い。当然、私の色であるピンクのつぼみもまだ咲きそうにはない。
「はぁ、リバップルのつぼみは何処にもないと言うのに」
私は深いため息をついた。まだ中等部が始まって日は浅い。これからのセレスティン様の行動によって、回りのキャラたちの動きが変わるのだ。セレスティン様に的確な助言をしつつ、私は何とかしてリヒト様から逃れなくてはならない。
「セレスティン様を上手い事誘導しなくちゃ」
私は小声で呟いた。こんなこと誰かに聞かれたら大変な事だから。ここはひとつ、リヒト様とご一緒にランチなんぞを召し上がって頂く流れを作ればいい。そうすればリヒト様の興味がアルト様にいくはずだ。リヒト様はいつもジークフリート様と特別室でランチを食べているから、食堂のメニューに興味を持って頂くしかない。そうすれば自然とリヒト様が学園の生徒たちと交流をもてるというものだ。
「私から興味を無くしてもらおう」
別に今日すぐでなくてもいい、リヒト様が食堂でランチを食べるようにさえなれば、このバラのつぼみの状態が変わるはずなのだから。私は決意を新たに立ち上がり教室へと向かうのだった。
もちろん、リヒト様は攻略対象者だからこうやって好感度を上げていくのだけれど、私は例え第二王子とは言えど、王子様と恋愛なんてしたくはないし、まして攻略なんて以ての外だ。そんなわけで咄嗟に背後で空気としていたジークフリート様に話を振った。もちろん、こんなことはシナリオ上ない話だ。一応ジークフリート様も攻略対象者ではあるけれど、リヒト様を攻略中にジークフリート様を攻略できない仕様になっていたのだ。やはり腐女子にとっては主従大事だからである。
それはもちろん、主従の間で揺れ動く私。なんてシュチュエーションも美味しいのだけれど、ジークフリート様には婚約者であるセレスティン様がいらっしゃるため、同時攻略を進めてしまうとシナリオ的に難しい事が起きるのだろう。運営都合かもしれないが、とにかく同時攻略が出来ないことを逆手にとって、私は一か八かの勝負に出たのだ。ちゃんとジークフリート様は反応してくれたし、リヒト様は何やら勝手に納得してくれた。
そうしてようやく私は教室を抜け出すことに成功してのだった。片手には雑巾を持ったままだけど。
「薔薇、薔薇の花はどうなっているかしら?」
たどり着いた小さな温室はひっそりとしていた。ゲームの仕様で訪れる人が誰もいない寂しい温室となっているからだ。私がこうして朝に温室で薔薇のチェックをするようになったのにはわけがある。受け様筆頭のセレスティン様が昼休みに来るようになったからだ。セレスティン様より早く状況を把握しておく必要があるのだ。前世が日本人のおじさんらしいセレスティン様は、このゲームの世界について何もご存知では無い。だから、教えて差し上げるしかないのだ。
「……うそ……うそでしょ」
私は目の前の光景を受け入れられなくて、ガッカリと膝から崩れ落ちた。昨日まで何も無かった緑の葉の中に、赤いつぼみがふっくらとその存在を誇示しているのだ。まったくもって信じられない。いや、その前にあの程度で好感度が上がるとか、王子のくせしてちょろすぎる。まぁ、だからこそお気に入りカプを成立させることに心血を注いだのだけれどね。
などと遠い目をしてしまったけれど、これは困った状況になってしまった。私はあくまでも推しのリバカプを成立させてこの目で見たいのてすよ。そう、デヴィット様とモリル様の攻め様によるリバカプだ。セレスティン様には申し訳ないけれど、ぶっちゃけセレスティン様がジークフリート様と婚約破棄出来なくても私的にはなんら問題ない。なぜならセレスティン様は受け様筆頭であるから、例えジークフリート様との婚約を解消したとしても女の子と結婚なんて出来ないのだ。
そう、私は知っている。
セレスティン様がジークフリート様との婚約を破棄する時、それはリヒト様と結婚する時である。そう、公爵家から王族へとランクアップするだけなのだ。リヒト様は第二王子であるから、無益な後継争いの火種を無くすべく、王族でありながら同性婚を選ばれるのだ。そうなったが最後、セレスティン様は魔道具を使わない限り妊娠することがないため、それはそれは素晴らしいスチルを量産する結末を迎えられるのだ。と、言うことは決してセレスティン様のお耳に入れるわけにはいかない。だからこそのこうして毎朝の温室チェックに来ているのだけれど、不覚。
「せめてこの赤いつぼみが青いつぼみ寄りにあれば良かったのに」
私は手を伸ばし、そっとまだ固い赤いつぼみに触れた。もちろん、青いつぼみも緑のつぼみもまだ固い。当然、私の色であるピンクのつぼみもまだ咲きそうにはない。
「はぁ、リバップルのつぼみは何処にもないと言うのに」
私は深いため息をついた。まだ中等部が始まって日は浅い。これからのセレスティン様の行動によって、回りのキャラたちの動きが変わるのだ。セレスティン様に的確な助言をしつつ、私は何とかしてリヒト様から逃れなくてはならない。
「セレスティン様を上手い事誘導しなくちゃ」
私は小声で呟いた。こんなこと誰かに聞かれたら大変な事だから。ここはひとつ、リヒト様とご一緒にランチなんぞを召し上がって頂く流れを作ればいい。そうすればリヒト様の興味がアルト様にいくはずだ。リヒト様はいつもジークフリート様と特別室でランチを食べているから、食堂のメニューに興味を持って頂くしかない。そうすれば自然とリヒト様が学園の生徒たちと交流をもてるというものだ。
「私から興味を無くしてもらおう」
別に今日すぐでなくてもいい、リヒト様が食堂でランチを食べるようにさえなれば、このバラのつぼみの状態が変わるはずなのだから。私は決意を新たに立ち上がり教室へと向かうのだった。
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