【完結】知っていたら悪役令息なんて辞めていた

久乃り

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第59話 続々・悪役令息のやんごとなき事情

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 マイセルがロイの腹を撫でて確認していると、ようやくソファーから立ち上がった人物が、大股で近づいてきた。

「気絶してるのか?」

 ベッドの縁に腰掛けて、ロイの髪を撫でながらマイセルに聞いてきた。

「とんじゃったから、寝てる感じ?」

 マイセルの返事を聞いて、ロイの鼻の辺りに指先をあててロイの呼吸を確認した。そして、規則正しく上下する腹を見た。

「少し膨らんでる?ってとこだな。私とお前の分がさらに入るということか…」

「あまり間をおかないでください」

 二人がロイの腹を撫でていると、テオドールが口を開いた。懐中時計を確認して、二人の顔を見る。一応、王子たちであるから、それなりの態度ではあるけれど、普段よりもだいぶ厳しい顔をしているのは確かだ。

「レイヴァーン様、結合が難しくなりますので、少しでも魔力を注いでください」

 マイセルの侍従までも、口を開いてきた。
 レイヴァーンにだけ注意を促してくるので、マイセルは苦笑するしかない。マイセルは、お礼と称してロイに口付けをしていたから、多少の地盤ができている。けれど、レイヴァーンは未だにロイとは触れ合っていない。テオドールがふざけて提供しようとした時に、断ったからだ。

「わかったよ」

 レイヴァーンはロイと唇を重ねると、力なく閉じているそこをゆるりと割り入った。
 歯列をなぞるように舌を動かし、ゆっくりと粘膜を擦るようにして魔力を注いでいく。だいぶ少量ではあるが、ロイの胎内に魔力を注ぐことで、結合の合図を送るのだ。

「う、ん。誰?」

 舌を絡めようとした時、ロイの目がぱっちりと開いて、レイヴァーンの肩を押した。
 そうして口を開けば、これだ。

「誰だと、思ったんだ?」

 さっきまでアレックスに、抱かれていたのに、同じ顔のレイヴァーンを見て何者か問うという事は、確実に区別を付けられている。

「え……っと、レイ?レイヴァーン?だっけ」

 ロイが記憶として前世から持ってきた王子の名前は、レイヴァーンだ。双子だったことを知って驚いたけれど、ロイには区別がついてしまうのだ。なにしろ、魔力の質が違うから。

「分かるのか」

「うん、ちょっとまったりしてるよね」

 そう言って、ロイは唇を舐めた。ピンク色をした舌が、チラリと顔をのぞかせてそんな仕草をして見せれば、この状態だから乗ってみる。

「誰と比べて?」

 ずっとそうだったから、主語がなくても相手はわかっている。けれど、場所を考えればそれが悪手だと言うことを、ロイは知らない。

「えっ…と、アレックス?」

 ロイがそう答えると、レイヴァーンが笑った。魔力の質だけで区別をつけられたのは初めてだ。アレックスから聞いただけだけど、双子なのに一番二番と番号を付けられていることが、理解できないらしい。
 隣国の王子であるマイセルは、第一王子だから婚約者になったと言うのに。

「私たちの名前を覚えていないのか?」

「だって、この間知ったばっかだもん」

 敬意も何もないような言い方をされて、レイヴァーンは怒るよりも笑ってしまった。

「アレックスが心惹かれるわけだ」

 レイヴァーンはそう言って、ロイに唇を重ねた。横から婚約者であるマイセルが見ているけれど、別段気にもならない。マイセルだって、自国では王位継承権が低いから、他国に嫁ぐことになったのだ。
 だからこそ、確実に子を設けねばならない。

「ねぇ、早くしてよ。俺ずっと見てるだけなんだよね」

 双子王子の後にされたせいで、マイセルはずっと待たされている。嫁入りの体だから、自分が最初でも良かったと思ったのに、アレックスがロイの最初を欲しがった。そうしたら、いつも一番だから、二番をしてみたいとレイヴァーンが言い出したのだ。一番でなければ三番でもいいじゃないかと思うのに、「アレックスの気持ちを味わってみたい」とか、もうどうでもよかった。
 マイセルだって、さっさと出したい。男なのだ。あんなのを二回も見てからなんて、結構シンドい。まぁ、見てるだけで一晩過ごすあの二人よりはいくらかマシだけれど。

「浄化はいらない、と」

 急かされて、ようやくレイヴァーンがロイの中に指を入れてきた。さっきまでアレックスがいたから、大丈夫だとは思うけれど、潤滑要素は必要だろう。
 指先から内部に塗りつけるように魔力を広めると、まだ慣れていないロイの内部が収縮した。

「ひゃああ」

 腰を大きく跳ね上げで、ロイが驚いた声を上げた。

「そんなに驚くな」

 腰をはね上げた反動で、ロイは足に力を入れてしまったようで、収縮したついでにそのままレイヴァーンの指を締め付けてきた。
 レイヴァーンは指を抜きたいところなのだけど、ロイが力を入れたままなので、抜かないで待っている。このまま強引に抜けば、傷はつかないけれど、ロイにはかなりの刺激になるだろう。

「え、えと…まって」

 こんな体勢で、見つめあってしまったから、ロイの脳内は軽くパニックを起こしていた。指を抜いてもらいたい。けれど、何故か自分が締め付けている。当然抜けるわけが無い。いや、抜けるかもしれない。でも、抜かれたらどうなる?とにかく力をぬこう。抜かなくては、そう考えると何故か余計に力が入る。

「さらに締め付けてどうするんだ?それとも、抜いて欲しくない?」

 レイヴァーンの顔が、近づいてきた。キスはできない距離だけど、互いの呼吸は確認できる距離だ。

「ち、からを、抜いて、抜く、から」

 ロイは自身を落ち着かせるために唾を飲み込んだ。息を吐くようにすると、弛緩すると聞いたことがあるような、ないような。ゆっくりと口から息を吐き出そうとした時、横からイタズラな手が伸びてきた。

「ぃつ、やぁぁん」

 ロイの胸を指で摘んで引っ張られた。しかも両方だ。

「もう、俺ずっと待ちぼうけ」

 レイヴァーンがなかなか動かかないから、マイセルが退屈しすぎてしまった。あいている、と言うか、目の前で放置されているのが気になって、思わず手が出てしまった。
 けれど、そのおかげでロイの意識は下半身から一気にそれた。レイヴァーンは指を抜いて、ロイの両膝の下に手を回した。

「へぁ、ん、んんんんっ」

 油断したすきに、レイヴァーンは一気にロイの中へと侵入を果たしてしまった。しかも、ロイの腰はだいぶ上にあげられてしまって、レイヴァーンが上から見下ろしている。マイセルは手持ちぶたさなのか、ロイの胸から手を離そうとはしない。両手がリズムをつけて擦ったり引っ張ったりを繰り返している。

「ねぇ、どうなの?同じなの?」

 ロイの視界に逆さまになったマイセルの顔がきた。どうやらマイセルは、ロイの頭の上に座っているらしい。そうして、両手をロイの脇から回して、手持ちぶさたを解消している。

「え?な、なにが、同じ?」

 質問の意味が分からなくて、ロイは困った顔をした。こんな体勢なのに、レイヴァーンを無視できるのだからたいしたものだ。

「それは、形とか、大きさとか」

「え?形?って、なんの……」

 ロイは何度も瞬きを繰り返して、マイセルの顔を見つめた。質問の意味が全くロイには伝わらない。

「やだなぁ、この状況で。レイとアレックスの、比べてどう?やっぱりそこまで同じなの?それとも違う?」

 楽しそうに聞かれて、ロイはようやく理解した。今、ロイの中にはレイヴァーンが挿入されていて、意識をすれば大きさや形が思い描ける。それに、ロイの胎内の何処まで届いているかで、長さだって……

「え、えええっとぉ」

 急に意識をしてしまい、自分の胎内にしっかりと入り込んでいるらしいレイヴァーンを感じてしまった。お腹の中に入り込んでいるのだと思うと、さっきのアレックスとのことを思い出してしまう。

「…くぅ、意識なんてさせるから、中が急に動いたぞ」

 レイヴァーンが恨み言を言うように、マイセルを見た。マイセルからしたら、単なる好奇心でしかない。並べて見比べてはいないけど、自分ではほとんど変わらないように見えた。けれど、実際の形や大きさ、それに、硬さは実際に咥えこんだ本人にしか分からないだろう。相性というものもあることだし。

「あ、えっと、体勢がちがうからわかんない」

 ロイはとても当たり前のことを口にした。
 なにしろ、初めてだった。アレックスは後ろから抱き抱えるようにして、自分の膝に座らせるような体勢だったけど、レイヴァーンは正面を向いて向かい合う形で、しかもロイは寝ている。よく分からないけれど、一応違う人なのだから、同じ体勢にしてくれないと比べられない。

「全く、私はロマンチストなんだがな」

 言いながら、レイヴァーンはロイを抱き起こして膝の上に座らせた。

「アレックスは、片足をベッドから下ろしてたよ。ね?」

 マイセルがソファーでくつろいでいるアレックスに、確認をとった。

「ああ、左足だ」

 答えるアレックスは、テオドールの方を見ていた。立会人をしているのだから、確認はそちらが専門だろう。

「嘘っ、まだいたの…」

 テオドールがまだ部屋にいた事を知って、ロイは両目を大きく開いた。素知らぬ顔をされているけれど、テオドールはしっかりとロイを見ている。

「そりゃ、立会人だからね。ずっと見てるよ」

 マイセルが面白そうに言うから、ロイは口を開けたり閉じたりとして、何かを言いたいけれど言葉にならない。

「そっ、え?じゃあ……ずっと、ぃてた…」

 ロイ顔が一気に赤くなった。もちろん耳も赤い。首や胸の辺りまで赤くなった。出せないように施されたけれど、それでもしっかりと主張をしているモノは、レイヴァーンの傍でゆらゆらとしている。

「もちろん。最後まで見てるのが彼らの仕事だ。明日になったら報告書を書くんだよ」

 そんな恐ろしいことを口にして、レイヴァーンはロイの髪に唇を落とす。言われたことと、やられていることがロイの中で合致しなさすぎて、顔色が悪くなる。

「報告書……って、何を、書くの…」

「順番とか?ここに浮かんだ魔法陣の種類とか」

 レイヴァーンがそう言ってロイの腹を撫でた。ほんの少し膨らんでいるから、触り方が優しい。

「魔法陣?」

「そ、私たちの、魔力が結合した時に魔法陣が現れる。主に色を確認する」

 レイヴァーンはそう言うと、ロイの身体を持ち上げて、ゆっくりと沈めていった。話をしていた最中だから、ロイは油断していて、気づいた時には納められていた。

「あっ、あ、ん。そこ…さっき、さっきダメって」

 自分の腹の中を押されて、中で動くのが目に見えてしまい、ロイはその膨らみを凝視した。自分のお腹の中に行き止まりがあるみたいで、そこを押されている感覚がある。そもそもお腹の中は真っ直ぐでは無いはずだから、何故入るのかが不思議でならない。

「さっき?私は今初めてロイの胎内にはいったよ?」

「あっ、あっ、だ、だからぁ、さっきと同じトコに当たってるのぉ」

 つまりロイが言いたいことは、さっきと同じ。
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