【完結】知っていたら悪役令息なんて辞めていた

久乃り

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第60話 続・王子様のやんごとなき事情

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 レイヴァーンは、分かっていない振りをしていたけれど、本当はしっかりと見ていたのだろう。
 アレックスと同じように、ロイの足を持ち上げて、深いところまで入り込めるように角度を変えた。腹筋が強いのか、空いた片手でロイの腹を撫で回している。

「魔法陣出てきたね」

 マイセルが楽しそうにロイの腹を眺めてきた。

「漏れてんの?」

 笑いながらそんなことを言うから、レイヴァーンは軽く睨みつけた。

「お前は少し黙れ」

「だって、ずっと待たされて退屈なんだよ。お預けが長いんだもん」

 マイセルはイタズラな目をして、レイヴァーンに言うけれど、そんなのに絆されるレイヴァーンではなかった。そもそも、レイヴァーンに抱かれる気がないと宣言してきたような王子だ。庇護欲もなにもかきたてられないというものだ。

「そこ、ダメ、ダメだってばぁ」

 レイヴァーンはマイセルに気が向いてしまっていた。そのせいでロイの様子を確認せずに突き上げ続けてしまったから、ロイは奥の奥をつつかれすぎて耐えられない状態にされていた。何とか掴まる場所はレイヴァーンの腕なのだけど、足が宙に浮いてしまっているから、不安定で仕方がなかった。
 どこかに力を入れたいロイは、また首を捻って唇が当たった皮膚を噛んだ。

「いたっ…まったく噛みグセがあるのか」

 レイヴァーンは仕方がないという顔をしながらも、ロイを一度持ち上げて、自分の方を向かせた。向かい合う形でロイを座らせると、ロイを抱き抱えてゆっくりとロイの中に入り直した。

「あっ、あっ、あぁぁ……っん」

 レイヴァーンの体に、巻きついているロイの足に力が入った。ロイの手が回る範囲でしがみついたから、爪を立てるようになって、しかも今度はレイヴァーンの首筋に歯を立ててきた。

「こら、噛みグセをやめろ」

 レイヴァーンはそう言って、ロイの頭を掴んで上を向かせた。上手く声が出せないロイは、今度はレイヴァーンの顎に噛みつきそうだ。

「私はロマンチストなんだよ」

 レイヴァーンは顎を目掛けて口を動かしたロイの軌道を修正する。そうすることで、唇を合わせたのだけど、ロイは噛みたいのかレイヴァーンの下唇をかんできた。甘噛みだけど、食むのと吸うのを同時におこなってくるから、ロマンチックではない。

「少し落ち着け」

「んぁ、だって、お腹……熱いの、にっ」

 魔力を放出しないように、根元を止められているせいで、ロイはずっと熱が溜まっている。そのどうにもならない熱を何とかしたくてもがいているのだ。

「魔力の結合が始まれば落ち着くはずだ」

「じゃあ早くしてよ!」

 ロイがそんな訴えをしたものだから、マイセルが喜んだ。

「え、いいの?俺嬉しいな」

 マイセルはそう言うと、ロイの体に手を回した。強引にレイヴァーンごとベッドの上を移動させようとした。

「おいっ」

 片手で二人分を支えていたレイヴァーンは、マイセルを睨みつけた。

「だって、この子の希望を叶えてあげたいじゃん」

 笑い方が王子らしくない。そんな下卑た笑がよくできるものだと関心してしまったけれど、マイセルの言っている事は無茶苦茶だ。

「もっと、奥に来て」

 ロイの腰に手を当てながら、レイヴァーンごとベッドの中央に引きずった。そうして、ロイの背中をシーツに押し付ける。

「ひゃっ」

 倒された衝撃で、中のものがロイの腹の裏にぶつかった。その刺激でまた、ロイの胎内がヒクヒクと動く。

「ちょ、っと、待て」

 奥歯を噛み締めるように耐えると、レイヴァーンはマイセルを睨みつける。レイヴァーンに睨まれても、マイセルは全く動じなかった。

「ほら、俺は婚約者だよ?仲良く分け合おうよ」

 そんなことを言って、レイヴァーンに微笑むけれど、分け合う内容は全く可愛くもないし、微笑ましくもない。どちらかと言えば、分け合うことではない。

「ほら、ロイ」

 仰向けになっているロイの頭に手を添えて、横を向かせた。角度を合わせて、ロイの負担にならないようにすれば、さらに肩まで動かして、上半身だけ横を向かせているような体勢になった。
 ロイの顎に手を添えて、緩く口を開かせれば、そのまま自身のモノを咥えこませた。本人がずっと我慢していたと言うだけに、先端からは雫が垂れ始めていた。
 その雫が口内にこぼれ落ちれば、ロイの味覚が刺激された。上質の魔力を伴っているから、本来の味とは掛け離れた味になる。もちろん、そんな風に感じ取れるのは、ロイぐらいなものだろう。普通なら、腹に中に入ってから、自分の魔力に吸収するタイミングで魔力の質が確認できるのだ。それなのに、ロイは匂いや味で質が分かってしまう。そんな職業はないけれど、魔力のソムリエのようなものだ。

「っん……っあん……」

 ロイが味わおうと大きく口を開けたところで、奥まで一気に咥えこませた。ロイの小さな口に、自分のモノが入ったことで、マイセルの気分は向上した。やはり、どうしたって王子として育ってきたために、征服欲は捨てられないと言うことだ。

「すっげぇ」

 王子らしくない言い方をして、唇を舌で舐める様子は、欲に満ちたゲスな男の顔でしかなかった。侍従は黙ってそのようすを確認して、少し離れたところに立つテオドールに合図を送る。
 テオドールは数歩歩み寄って、ロイの腹を確認した。結合を示す魔法陣がその数を増してきている。

「お二人共、一気に注いでください。結合が進んでいます」

 テオドールは、いつの間にかに小さな本を手にしていた。それとロイの腹をチラチラと見比べているようだ。

「全く、情緒がないな」

 呆れた顔をしつつも、レイヴァーンは腰の動きを早めた。繋がっているから、それに合わせてロイの体が揺れる。

「ロマンや情緒は、別の日にするものです。一対三ですよ。人数がおかしいと思わないのですか」

 テオドールが呆れたように言うと、マイセルが笑った。

「俺はこう言うの結構好きだけど?この子時々甘噛みすっけど、それがまたいい刺激。おまけに婚約者様は色っぽい顔するし」

 マイセルはそう言いながら、手を伸ばしてレイヴァーンの頭を掴んだ。そのまま後頭部を押さえて、引き寄せる。

「なっ、なにを…」

 ロイの腰を掴んでいたから、レイヴァーンはマイセルのこの行動に対処できない。そのまま顔が近づいて、唇を合わせる羽目になった。閉じる暇がなかったから、レイヴァーンの口のなかには、遠慮なくマイセルの舌が入り込んできた。驚いたままのレイヴァーンの口内は、そのままマイセルの侵入を許して、しかも逃げ場のない舌をすぐにとらえる。

「………ふっ…ん……ん」

 舌を絡め取られて強く吸われると、自分の口の中に、飲み込めない唾液が溜まる。それさえもマイセルは吸い取って喉を鳴らして飲み込んだ。

「なっ」

 あまりのことにレイヴァーンが言葉をなくしていると、マイセルが舌舐めずりをして笑ってみせた。

「魔力を混ぜ合わせた方がいいんだろ」

「………っく」

「それに、俺たち婚約者じゃん」

 そう言って、マイセルはレイヴァーンの唇を舐めた。
 そんなことをしていても、マイセルの手はロイの髪を撫でていて、小刻みに腰を動かしていたから、刺激はじゅうぶんだった。なにより、ロイがマイセルの魔力を欲しがって、吸い付いていたのだ。

「エロくていいね、この子」

 そう言いながら、腰を大きく動かした。ロイの喉奥の柔らかいところに先端を擦り付け、頭を押さえた。

「お腹いっぱい味わうんだよ」

 それをみながら、レイヴァーンも終わりに近い動きをした。喉奥に出されて苦しかったのか、ロイの胎内の収縮が一段と増したのだ。他のことに気を取られてしまい、レイヴァーンも堪らずロイの胎内で解放した。

「レイヴァーン様、もう少し奥が良かったですね」

 無表情にテオドールが言えば、こんなことになった原因のマイセルが笑った。

「えっ、やっぱり早漏?」

「ふざけるな。誰のせいだと…」

 レイヴァーンが文句を言おうとしたとき、間にアレックスが入ってきた。

「結合が急速に進んでいる」

 アレックスが見つめるロイの腹には、小さな魔法陣が結合を示しては消えていく。マイセルは慌てて編み上げたゆりかごを取り出した。それをテオドールが確認する。

「よく編めていますね。意外です」

「マイセル様は、こう見えて器用なんです」

「こう見えてとはなんだ」

 マイセルはムッとしながらも、ゆりかごをロイの横に置いた。

「魔法陣が出なくなりましたね。結合が完了したようです」

 テオドールがそう言うと、レイヴァーンとアレックスが目線だけでやり取りをした。そうして、アレックスがロイの腹に手を伸ばした。
 ロイの薄い腹は、先ほどまでとは違った形に膨らんでいた。その膨らみにアレックスの指先が触れると、その手には虹色に輝く核が握られていた。

「ここに」

 マイセルがゆりかごの蓋を開けると、アレックスは核をそっと中に入れた。蓋を閉じると、ベッドにずっと張り付いていた魔用紙をレイヴァーンが剥がして、ゆりかごの蓋に貼り付けた。
 すると、魔用紙が光を放ち魔法陣が印を結び消えていった。

「約束は無事履行されました」

 テオドールはそう言うと、メガネを外した。

「え?それなんだったの?」

 マイセルが驚いていると、テオドールは真面目くさった顔で答えた。

「もちろん、あなた方の行為をしっかりと見届けるためです。ゲスな意味ではありませんよ。ログを取るための魔道具です」

 そう言うと、ポケットから封筒を取り出してそこにメガネを入れた。

「記録はすぐに確認されます。明日には王都からのむかえと共に、城に戻ります。マイセル様はゆりかごとともに、離宮にはいることになりますね」

「わかっている」

 マイセルはそう言うと、胡座をかいてゆりかごを膝に乗せた。そうして抱きかかえるように胸をのせた。

「では、おやすみなさいませ」

 テオドールがそう言うと、ようやく部屋の灯りが消えた。
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