灯火

水無月 かんな

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1話「考えはまたもすれ違い」

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意識が浮上したのは恐らく昼下がりの頃だ。太陽が昇っていて暑い。左目だけを閉じる。すると何も見えなくなる。あぁ、右目は抉り取られたんだとようやく、理解した。

「うっ…」

右目がない。頬辺りには乾いた赤黒い血が、背中の傷も開いてしまったのか、激しい痛みが襲う。

ーーーーーーリュー

「リオ!彼女がいないんだ。ユキが、」
「ほぅ……やはり敵か。」

リオは特に驚くこともなくリューの話を受け止める。

「リオ、彼女が敵とは決まってないよ!?」
「だが、居なくなっただろう?」
「さ、拐われたのかも………ねぇ、追跡装置で確認しよう。」

焦りが生まれる。もし、彼女が敵だとして俺はどうしたら?
いや、まず敵かは考えるべきじゃないだろ!?今はユキの身を考えるべきだ。

「リュー…………あいつに何をされたんだ?」
「なにもされてないよ。リオは彼女を信じてあげないの?」
「信じたいが事実と証明する物が何もないだろ。」

リオは冷静で決めたことは曲げないタイプだ。1度疑ったらずっと疑い続けるタイプなのだ。

「リオ様報告です!クルリラ・ヴァーズ氏の下僕である者がここ辺りで見たものが数名。また、マントの中に何か抱えていたとのこと。また、追跡した所、以前から目をつけていた人身売買の店へつきました。」

目の前が暗くなるような感覚に落ちる。彼女が俺を騙した?なんのために?……逃れるため?俺はただリオを見ることしかできなかった。

「よし。全員に通達しよう、皆を武装し広場に集まるよう伝えてくれ。」

ーーーーーー

「今から、アウルと言う店に向かう。目的は子の保護、または奪還。またそこにいた大人は皆残らず捕らえよ。」
「「はっ!」」

考えれば考える程分からなくなる。何故彼女が嘘をついたんだ?背中の傷が酷いのに逃げれるのか?何故わざわざ捕まって拷問されたんだ?

「リュー。あの娘は殺しても良い。もしくは情報を吐かせろ。」
「えっ……う、うん。分かった。」

日は既に落ち闇が深く濃くなる。それに比例するように俺の考えも深くなった。

ーーーーーー

馬を走らせて15分、目的地にたどり着いた。
店の奥に入ると様々な貴婦人共が仮面をつけて踊っていた。その姿はなんともぎこちなく滑稽に見える。

「全てをくまなく探せー!!!」

リオがそう言うと、部下達は一気に遠慮なく探し始める。
檻にかかっている布を取ると底には数人の少女や男子がいた。歳は5~16辺りだろうか。

「居ました!」「こっちに8名」「5名重症です」

たちまち子供たちが見つかる。子供は皆どこか死にそうな表情で、俺たちを瞳に映していなかった。

人身売買の罪で貴婦人共を皆拘束し、その後子供から話を聞く係に回された。

「ねぇ、君は黒髪の子見なかった?」
「…………み…た。あの子……きっと、死ぬ。」

13歳辺りの青年は傷だらけのボロボロでガリガリだ。ずっと前からここにいたのだろうか。

「その黒髪の子は悪い奴?」
「それは……違う。彼女……右目抉られてた。背中からも血が……沢山、痛がってた。それでも彼女……僕らに優しく笑った見せたんだ。……口パクで何か言ってた。何を言ったか分からないけど……何故か安心した。もう大丈夫だって安心出来た。……彼女若いのに……そうだ。彼女アイツに!アイツに買われちゃったんだ。」
「お兄さん!あの子を助けてあげてよ!あの子まるで貴方達がここに来るの知ってるような感じだったもん!じゃなきゃあんな穏やかな顔…………。」

少年少女の話しを聞けば聞くほど、彼女の考えが分からなくなる。彼女は一体何をしようとしてるんだ?

「あの子、痛そう。右目抉られて気を失ったし、背中からも血が沢山溢れてたし。可哀想……」
「アイツに実験材料にされちまうのかな?」

リオが凄い形相でこっちに近付き、ぽっりと呟いた青年に肩を掴み聞く。

「っ……!おい誰に買われたんだ!?」
「兄さん、痛てぇよ。確か、俺たちを騙したくそじぃさんだよ。」
「うふふ。黒髪の子を買ったのはクルリラ様よ。毒ガスが聞いてないことに食いついていましたよ。実験をするのでしょうね。どの毒ガスが1番効くのかってね。」

「ぐっ……」

もし、俺たちのせいでこの世界が嫌いになったから、世界を滅ぼそうとしてる奴と手を組むつもりだとしたら?……でも、この惨事は予想外だったろうな。
 
「ねぇお兄さん達は、あの子を見つけ出したらなにするつもりなの?」
「それは…………」
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