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第6章
一 お祈りメール
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一
全ての世界に希望を与える朝日が街に降り注いでいた。
芽依はマスクの下で大きなあくびをしながら、電車に揺られていた。
(それにしても、昨晩は天童さんとたくさん話したな)
常連客が芽依だけだったこともあり、天童はいやいやながらも話相手になってくれた。
その正体さえ見なければ、バリスタと常連客の日常のようなやりとりだ。
(天童さん、大あやかしって言われてるみたいだけど、その辺にいる男子とそんなにかわらない)
芽依はそんなことを思いながら目を閉じる。
お気に入りの店を見つけ、その店の店主と仲良くなれるなんて、物語の中だけの話かと思っていたが、その新しいつながりが、なんだか嬉しく思えた。
(今度は、鴑羅さんや鞍馬くんも一緒だといいな)
心地よい電車の揺れに、芽依が眠りに落ちるまで、そう時間はかからなかった。
…………
……
そして、運命は訪れた。
阿倍野芽依様
いつも大変お世話になっております。ドリームプロジェクトの林田です。
先日いだだきました修正案の企画書を社内で再検討、協議をいたしました。その結果、やはり修正後の企画では本プロジェクトは成り立たないこと。さらに松井氏からの注文にも答えるべく代案として力が及ばないことなどがあげられ、誠に残念ではありますが、こちらの修正案は見送ることとなりました。
加えて、阿倍野様より東京ファンタジアの執筆を辞退したいという旨を松井氏にも伝えましたところ、これ以上のご迷惑はかけられないと判断し、今後は社内で執筆を進める運びとなりました。
私どもからお声がけをしておきながら、力が及ばず、このような結果になりましたこと誠に申し訳なく思っております。
今回に限ることなく、またご縁がありましたら阿倍野様のご協力のほど賜りたくそんじます。阿倍野様の益々のご活躍をお祈りしております。林田茜
芽依はそのメールを読み終え、ふうっと息を吐いた。
やっぱりだめだったか。
半ば覚悟していたとはいえ、心にくるものがある。だが、仕方ない。
うたかたの夢とはよくいったものだ。
まさにぴったりの言葉が見つかって、芽依は少し微笑んだ。
(これで完全無職になったんだ、わたし………)
芽依の夢は散った。だが不思議な出会いは消えずに残った。その縁は夢を掴むことよりも大きい意味があるように思え、芽依は思ったほど落ち込んではいなかった。
(とりあえず、もう一眠りしよう……)
芽依は、襲いかかる眠気に争うことなく、そのまま静かに目を閉じた。
全ての世界に希望を与える朝日が街に降り注いでいた。
芽依はマスクの下で大きなあくびをしながら、電車に揺られていた。
(それにしても、昨晩は天童さんとたくさん話したな)
常連客が芽依だけだったこともあり、天童はいやいやながらも話相手になってくれた。
その正体さえ見なければ、バリスタと常連客の日常のようなやりとりだ。
(天童さん、大あやかしって言われてるみたいだけど、その辺にいる男子とそんなにかわらない)
芽依はそんなことを思いながら目を閉じる。
お気に入りの店を見つけ、その店の店主と仲良くなれるなんて、物語の中だけの話かと思っていたが、その新しいつながりが、なんだか嬉しく思えた。
(今度は、鴑羅さんや鞍馬くんも一緒だといいな)
心地よい電車の揺れに、芽依が眠りに落ちるまで、そう時間はかからなかった。
…………
……
そして、運命は訪れた。
阿倍野芽依様
いつも大変お世話になっております。ドリームプロジェクトの林田です。
先日いだだきました修正案の企画書を社内で再検討、協議をいたしました。その結果、やはり修正後の企画では本プロジェクトは成り立たないこと。さらに松井氏からの注文にも答えるべく代案として力が及ばないことなどがあげられ、誠に残念ではありますが、こちらの修正案は見送ることとなりました。
加えて、阿倍野様より東京ファンタジアの執筆を辞退したいという旨を松井氏にも伝えましたところ、これ以上のご迷惑はかけられないと判断し、今後は社内で執筆を進める運びとなりました。
私どもからお声がけをしておきながら、力が及ばず、このような結果になりましたこと誠に申し訳なく思っております。
今回に限ることなく、またご縁がありましたら阿倍野様のご協力のほど賜りたくそんじます。阿倍野様の益々のご活躍をお祈りしております。林田茜
芽依はそのメールを読み終え、ふうっと息を吐いた。
やっぱりだめだったか。
半ば覚悟していたとはいえ、心にくるものがある。だが、仕方ない。
うたかたの夢とはよくいったものだ。
まさにぴったりの言葉が見つかって、芽依は少し微笑んだ。
(これで完全無職になったんだ、わたし………)
芽依の夢は散った。だが不思議な出会いは消えずに残った。その縁は夢を掴むことよりも大きい意味があるように思え、芽依は思ったほど落ち込んではいなかった。
(とりあえず、もう一眠りしよう……)
芽依は、襲いかかる眠気に争うことなく、そのまま静かに目を閉じた。
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