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第2部 第2章 ケース オブ ショップ店員・橋姫『恋するあやかし』
一 聞いてはならぬ会話
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一
「元カノが子供を産んだんだ」
その言葉に、芽依は思わず飲みかけのカフェラテを吹き出しそうになる。
(ちょ……、は? え?)
博物館見学を終え、天童たちと解散した芽依は、軽く夕食を済ませてしまおうと、東京駅中にあるチェーン展開をするカフェに入り軽めの夕食をとっていた。
店は東京駅構内にあることもあり、ガラス張りであることから、席はわりと丸見えである。
芽依の座る席は、向かい合う様にして座る2人掛けのテーブル席。
その隣には、芽依が席につく前からひとりの女性が座っていた。
キャラメル色の毛先をゆるく巻いて鎖骨あたりで揺れる髪は、幸せそうなオーラが漂っている。
お一人様かと思われたが、芽依が席につき、注文したジェノベーゼのパスタを食べ終えたところで、彼氏と思われる男性が彼女の元へと現れた。
おそらく待ち合わせをしていたのだろう。「遅くなってごめん」と謝る彼氏に対し、彼女は「全然平気」とにこやかに答えていた。
彼氏のほうはスーツ姿であり、時間帯からして仕事帰りといったところだろうか。
まず上着を脱ぐと椅子にかけ、持っていたビジネスバッグを床に置き、彼女と向かい合う様にして椅子に座った。
だが彼女から「飲み物くらい頼んできたら?」と言われ、彼氏は慌てた様子でドリンクを注文しに行く。そしてアイスコーヒーを持って再び席に着くと、彼氏はごくごくと飲み干して向き直した。
「急に話があるなんてびっくりしたよ。何かあったの?」
そう彼女がそう尋ねると、彼氏は「いや、……うん」とどこか煮え切らない様子の答え方で彼女を見つめた。
「実は話さなきゃいけないことがあって——」
そう切り出した言葉に緊張感が漂っている。
そして彼氏は言った。
「元カノが子供を産んだんだ」
「元カノが子供を産んだんだ」
その言葉に、芽依は思わず飲みかけのカフェラテを吹き出しそうになる。
(ちょ……、は? え?)
博物館見学を終え、天童たちと解散した芽依は、軽く夕食を済ませてしまおうと、東京駅中にあるチェーン展開をするカフェに入り軽めの夕食をとっていた。
店は東京駅構内にあることもあり、ガラス張りであることから、席はわりと丸見えである。
芽依の座る席は、向かい合う様にして座る2人掛けのテーブル席。
その隣には、芽依が席につく前からひとりの女性が座っていた。
キャラメル色の毛先をゆるく巻いて鎖骨あたりで揺れる髪は、幸せそうなオーラが漂っている。
お一人様かと思われたが、芽依が席につき、注文したジェノベーゼのパスタを食べ終えたところで、彼氏と思われる男性が彼女の元へと現れた。
おそらく待ち合わせをしていたのだろう。「遅くなってごめん」と謝る彼氏に対し、彼女は「全然平気」とにこやかに答えていた。
彼氏のほうはスーツ姿であり、時間帯からして仕事帰りといったところだろうか。
まず上着を脱ぐと椅子にかけ、持っていたビジネスバッグを床に置き、彼女と向かい合う様にして椅子に座った。
だが彼女から「飲み物くらい頼んできたら?」と言われ、彼氏は慌てた様子でドリンクを注文しに行く。そしてアイスコーヒーを持って再び席に着くと、彼氏はごくごくと飲み干して向き直した。
「急に話があるなんてびっくりしたよ。何かあったの?」
そう彼女がそう尋ねると、彼氏は「いや、……うん」とどこか煮え切らない様子の答え方で彼女を見つめた。
「実は話さなきゃいけないことがあって——」
そう切り出した言葉に緊張感が漂っている。
そして彼氏は言った。
「元カノが子供を産んだんだ」
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