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16・ハズレの合コンと壊れた冷蔵庫
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今日俺は合コンに誘われていた。
ちょうどバイトも休みだったし自分だってそろそろ彼女でも作って大学生活を楽しみたい。マッチングアプリもいいけど、あれは何となく味気ない気がする。今日はかわいい子がいたら積極的に誘ってみよう。
だが俺の思惑は外れた。俺だけでなく今日の男性陣は全員そう思っていただろう。
「なんだよあれぇ。今日セッティングしたの鈴木だっけ?」
「悪ぃ。ほんとはかわいい子が二人来るはずだったんだけどさ、一人が都合悪くなったらもう一人も辞めとくって言いだしてさぁ」
「てか、かわいい子たった二人だけ? しかもそれ以外のレベル、低すぎない?」
「一人なんかひたすら食ってたよな。自己紹介以外ずっと食ってたって」
こちらの面子も人の事は言えないが・・今日は確かにハズレだった。そんな事もあり俺の帰宅時間は早まった。
「ただいま~」帰宅した時、見た事のない靴が玄関にあるのに俺は気付いた。
あれ、キング靴買ったのかな。まぁ今じゃ俺よりバイト代稼いでるだろうから、靴の一つや二つ買えるもんな。
この時点で直巳はキングの『おかえり』が無かった事に気づいていなかった。その理由はリビングのドアを開けて判明した。
キングの・・宏樹の口は塞がれていたのだ。早井電機のお兄さんの口によって。
「あ・・」ドアの取っ手を掴んだまま俺は固まった。
そして正確には宏樹の口がお兄さんの口を塞いでいた。二人とも上半身は裸だった。
「あっ」早井電機の小川さんはソファからがばっと起き上がり、その上に覆いかぶさっていた宏樹も振り返った。
「帰ったのか。早かったな」
俺はそのままドアを閉めてしまった。あれは・・あの状況は・・。
「俺、帰るよ。なんか気まずい所を見られちゃったし・・」
「帰らないでくれ。せっかく・・」
リビングから二人の会話が聞こえてきた。俺はドアの外から大きな声で言った。
「あっ、そうだ俺、買い物があったの忘れてた。ちょっとスーパーとドラッグストア行ってくる。えーと、腹も減ったからラーメンでも食ってくるかなぁ」(棒読み)
まだ自分の温もりが残っている靴にまた足を入れて俺は外に出た。あーあ、ここは俺んちなんだけどな。俺ってお人好し過ぎない?
たいして用事もないのにドラッグストアを隅々まで見て回り駅の方まで戻って夜遅くまでやっているラーメン屋に入って行った。
たっぷり2時間は時間を潰して俺は自分の家に戻ってきた。
「ただいまぁ」
「おかえり!」宏樹の溌剌とした声が返ってきた。玄関には小川さんの靴は無かった。
「小川さん、帰ったのか?」
「ああ。ついさっきな」
「てか宏樹って・・どっちもOKなの?」ソファで寛ぎながら水を飲んでいる宏樹に向かって俺は呆れた様に質問した。
「家に女を連れ込むなって言ったのはお前だろう」
「はぁ?! だから男なのか? マジか・・いやいや男ならいいとか、そういう話じゃないから!」
「お前がこんなに早く帰って来るとは思わなかっただけだ。そう怒るな」さも可笑しそうに笑いながら宏樹は俺を余裕であしらっている。
「それともあれか、嫉妬というやつか? ならそう言えば・・」
「ちがぁぁぁぁう! 俺は異性愛者だからな! 興味があるのは女の子だから!」
「なら良かった。我にも好みってものがあるからな」
「な、な、な!!」
もう俺は何も言い返せなかった。嫉妬なんて気持ちは全くないが、好みじゃないと言われると何だか自分を否定されているようで悔しい。
「結論としては、お前がいない時ならいいのだな?」
「・・仕方ないな」
「我はいる時でも構わないからな」
「!」
目が点になっている俺を見て、宏樹はお腹を抱えて笑っていた。
____________
今日のバイトは宏樹と俺がコンビだった。
「おーい直巳、この冷凍庫の温度これで大丈夫なのか?」
温度点検をしていた宏樹に呼ばれた直巳が冷凍庫の温度計を見るとマイナス3℃だった。通常はマイナス25℃前後でないといけない。
「うわっこれやばい。アイス溶けちゃうわ。くっそ今日に限ってまた壊れたのかよぉ」
この冷凍庫、排水パイプの角度が悪くてよく故障していたのだ。
「修理の人に電話するから、その間にストック場の冷凍庫に商品全部入れ直さないと」
大量のアイスクリームや冷凍食品をカゴにいっぱいに入れて、店頭と事務所を何往復もしないといけない。
「冷気を入れておけばいいのだろう。マイナス25℃位まで下げてそれを維持しておいてやる」
「お、そんな事も出来るのか?」
「そろそろ夕刻だから術が使えるようになるだろう」
たまたま今日は二人とも夕勤で17時から22時までの勤務だったのだ。宏樹はさらに22時から2時までのロングシフトだ。
冷凍庫の修理は1時間半くらいで来てくれることになった。
宏樹は冷凍庫の一番上に片手を差し入れた。宏樹の指先からわずかに可視できる冷気が放出され、冷凍庫全体に広がっていく。冷凍庫の温度計はみるみる下がっていった。
「よし、25まで下がった。サンキュー宏樹。慌てないでゆっくり移動できるよ」
夕勤はレジが混むから冷凍品の移動だけにかまけていられない。だが宏樹の冷気のおかげで解けるのを気にせず、レジ業務の合間にゆっくり運ぶことが出来た。
22時。俺はあがりで宏樹は休憩時間だった。事務所に行くと李さんが椅子に座っていた。
「こんばんは。うふふ」
「こ、こんばんは。李さん、どうしたの忘れ物?」今日は李の出勤日ではない。俺はいぶかし気に李に声を掛けた。
「ううん、ちょっとね。なんか来てみたよ」
休日にわざわざ職場に来るなんて物好きな・・。
「俺、あがりなんでお先に失礼します。宏樹また後でな」
「ああ、おつかれ」
宏樹は事務所の椅子に座って休憩を取り始めた。目の前に李が居るのでチラッと鏡に目をやり、コンタクトがずれていないか確認する。
宏樹が飲み物を飲んでいる間、李はずっと黙ってこちらを見ていた。
「李さん、コンビニは長いんですか?」
宏樹は仕方なく話しかけることにした。
ちょうどバイトも休みだったし自分だってそろそろ彼女でも作って大学生活を楽しみたい。マッチングアプリもいいけど、あれは何となく味気ない気がする。今日はかわいい子がいたら積極的に誘ってみよう。
だが俺の思惑は外れた。俺だけでなく今日の男性陣は全員そう思っていただろう。
「なんだよあれぇ。今日セッティングしたの鈴木だっけ?」
「悪ぃ。ほんとはかわいい子が二人来るはずだったんだけどさ、一人が都合悪くなったらもう一人も辞めとくって言いだしてさぁ」
「てか、かわいい子たった二人だけ? しかもそれ以外のレベル、低すぎない?」
「一人なんかひたすら食ってたよな。自己紹介以外ずっと食ってたって」
こちらの面子も人の事は言えないが・・今日は確かにハズレだった。そんな事もあり俺の帰宅時間は早まった。
「ただいま~」帰宅した時、見た事のない靴が玄関にあるのに俺は気付いた。
あれ、キング靴買ったのかな。まぁ今じゃ俺よりバイト代稼いでるだろうから、靴の一つや二つ買えるもんな。
この時点で直巳はキングの『おかえり』が無かった事に気づいていなかった。その理由はリビングのドアを開けて判明した。
キングの・・宏樹の口は塞がれていたのだ。早井電機のお兄さんの口によって。
「あ・・」ドアの取っ手を掴んだまま俺は固まった。
そして正確には宏樹の口がお兄さんの口を塞いでいた。二人とも上半身は裸だった。
「あっ」早井電機の小川さんはソファからがばっと起き上がり、その上に覆いかぶさっていた宏樹も振り返った。
「帰ったのか。早かったな」
俺はそのままドアを閉めてしまった。あれは・・あの状況は・・。
「俺、帰るよ。なんか気まずい所を見られちゃったし・・」
「帰らないでくれ。せっかく・・」
リビングから二人の会話が聞こえてきた。俺はドアの外から大きな声で言った。
「あっ、そうだ俺、買い物があったの忘れてた。ちょっとスーパーとドラッグストア行ってくる。えーと、腹も減ったからラーメンでも食ってくるかなぁ」(棒読み)
まだ自分の温もりが残っている靴にまた足を入れて俺は外に出た。あーあ、ここは俺んちなんだけどな。俺ってお人好し過ぎない?
たいして用事もないのにドラッグストアを隅々まで見て回り駅の方まで戻って夜遅くまでやっているラーメン屋に入って行った。
たっぷり2時間は時間を潰して俺は自分の家に戻ってきた。
「ただいまぁ」
「おかえり!」宏樹の溌剌とした声が返ってきた。玄関には小川さんの靴は無かった。
「小川さん、帰ったのか?」
「ああ。ついさっきな」
「てか宏樹って・・どっちもOKなの?」ソファで寛ぎながら水を飲んでいる宏樹に向かって俺は呆れた様に質問した。
「家に女を連れ込むなって言ったのはお前だろう」
「はぁ?! だから男なのか? マジか・・いやいや男ならいいとか、そういう話じゃないから!」
「お前がこんなに早く帰って来るとは思わなかっただけだ。そう怒るな」さも可笑しそうに笑いながら宏樹は俺を余裕であしらっている。
「それともあれか、嫉妬というやつか? ならそう言えば・・」
「ちがぁぁぁぁう! 俺は異性愛者だからな! 興味があるのは女の子だから!」
「なら良かった。我にも好みってものがあるからな」
「な、な、な!!」
もう俺は何も言い返せなかった。嫉妬なんて気持ちは全くないが、好みじゃないと言われると何だか自分を否定されているようで悔しい。
「結論としては、お前がいない時ならいいのだな?」
「・・仕方ないな」
「我はいる時でも構わないからな」
「!」
目が点になっている俺を見て、宏樹はお腹を抱えて笑っていた。
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今日のバイトは宏樹と俺がコンビだった。
「おーい直巳、この冷凍庫の温度これで大丈夫なのか?」
温度点検をしていた宏樹に呼ばれた直巳が冷凍庫の温度計を見るとマイナス3℃だった。通常はマイナス25℃前後でないといけない。
「うわっこれやばい。アイス溶けちゃうわ。くっそ今日に限ってまた壊れたのかよぉ」
この冷凍庫、排水パイプの角度が悪くてよく故障していたのだ。
「修理の人に電話するから、その間にストック場の冷凍庫に商品全部入れ直さないと」
大量のアイスクリームや冷凍食品をカゴにいっぱいに入れて、店頭と事務所を何往復もしないといけない。
「冷気を入れておけばいいのだろう。マイナス25℃位まで下げてそれを維持しておいてやる」
「お、そんな事も出来るのか?」
「そろそろ夕刻だから術が使えるようになるだろう」
たまたま今日は二人とも夕勤で17時から22時までの勤務だったのだ。宏樹はさらに22時から2時までのロングシフトだ。
冷凍庫の修理は1時間半くらいで来てくれることになった。
宏樹は冷凍庫の一番上に片手を差し入れた。宏樹の指先からわずかに可視できる冷気が放出され、冷凍庫全体に広がっていく。冷凍庫の温度計はみるみる下がっていった。
「よし、25まで下がった。サンキュー宏樹。慌てないでゆっくり移動できるよ」
夕勤はレジが混むから冷凍品の移動だけにかまけていられない。だが宏樹の冷気のおかげで解けるのを気にせず、レジ業務の合間にゆっくり運ぶことが出来た。
22時。俺はあがりで宏樹は休憩時間だった。事務所に行くと李さんが椅子に座っていた。
「こんばんは。うふふ」
「こ、こんばんは。李さん、どうしたの忘れ物?」今日は李の出勤日ではない。俺はいぶかし気に李に声を掛けた。
「ううん、ちょっとね。なんか来てみたよ」
休日にわざわざ職場に来るなんて物好きな・・。
「俺、あがりなんでお先に失礼します。宏樹また後でな」
「ああ、おつかれ」
宏樹は事務所の椅子に座って休憩を取り始めた。目の前に李が居るのでチラッと鏡に目をやり、コンタクトがずれていないか確認する。
宏樹が飲み物を飲んでいる間、李はずっと黙ってこちらを見ていた。
「李さん、コンビニは長いんですか?」
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